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プロデューサー・キム ヤスヒロが語る! lyrical school Special Interview

プロデューサー・キム ヤスヒロが語る!
lyrical school

Special Interview

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百花繚乱のアイドルシーンで、「ラップ」を武器に異彩を放つリリカルスクールがニューアルバム『SPOT』を完成させた。昨年10月発売の「PRIDE」は、ATCQの名曲引用から始まる力強いセルフボースティング曲で、それまでのゆるふわなイメージを打破。そんなハーコーな曲をチャートのトップテンに送り込んだことも痛快だったが、アルバムリリースに先立ち公開されたALI-KICK(ROMANCREW)作の「I.D.O.L.R.A.P」を聴いたときのさらなる衝撃といったら! ラップの飛躍的なスキルアップはもちろん、アイドルの可愛さと本格派ラップのかっこよさのミラクル合体に心底脱帽した。ライブ動員数も楽曲セールスもラップ力も右肩上がりで成長し続ける彼女たちの進化に迫るべく、今回はリリスクのプロデューサー、キムヤスヒロ氏にインタビュー! tengal6時代まで時計を巻き戻し、現在までの軌跡やこれからの展望、彼の耳で聴いた『SPOT』における6人のハイライト曲など、リリスクの魅力の変遷を裏側から探った。

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——キムさんはグループ立ち上げ時からプロデューサーを務めていますが、tengal 6結成当初はどんなグループ像を描いていたんですか?

もともとは僕が学生のときに友人と作っていた「NEWTRAL」というフリーマガジンのアイドルプロデュース企画から始まったんです。その企画を立ち上げる前から、頭の片隅にラップをする女の子のアイドルグループがいたら面白いんじゃないかっていうアイデアがあって。アイドルを語るときに「ほつれ」が可愛らしさに繋がるとおっしゃる方もいらっしゃいますが、僕は女の子が多少背伸びしてる感じが可愛さに繋がるんじゃないかと思ってたんですね。言い方の違いだとは思いますが。

——そのカギがヒップホップ/ラップにあるんじゃないかと。

そうですね。アイドルラップというジャンルに先人がほとんどいないから手本もないし、ヒップホップというものに触れてない女の子たちがラップをしていくと、ヒップホップのアーティストさんのラップをめざして頑張らなきゃいけない状況になる。そのときにどうしても背伸びしなきゃいけない瞬間が出てくるし、それが魅力になっていくんじゃないかと思って。

——2011年にリリースしたtengal6名義でのファーストシングル「プチャヘンザ!」(tofubeats制作)は、お世辞にもラップが上手いと言えない少女たちが、ラップの基本マナーがちりばめられてる曲をやる背伸び感が面白かったですが、あの曲からどんな手応えを感じていましたか?

グループを始めるときから、絶対、いいタイミングでトーフくん(tofubeats)には楽曲をお願いしようと思ってたんです。そしたら期待以上の最高な曲を持って来てくれたんですよ。正直、「プチャヘンザ!」を聴いて「こんなこともできるんだ」ってトーフくんに教えてもらったところも多いです。短い小節でのマイクリレーもそうだし、今のリリスクにあるパーティー感の源流も「プチャヘンザ!」にあると思います。

——lyrical schoolに改名後、2013年に出した『date course』はどんなものをめざして作ったんですか?

tengal6時代に『CITY』というアルバムを一枚出してるんですが、当時はまだ手探りだったこともあって、「あれもできたな、これもできたな」と思うことがたくさんあって。改名後の最初のシングル「そりゃ夏だ!/おいでよ」を出したあとに、アルバムのコンセプトを固め始めました。どの曲もそれぞれ恋愛にまつわる歌詞の内容にして、それをアルバムの1つの恋愛ストーリーに組み込んで聴いたときに違う聞こえ方がするようになればいいなと。その後の2枚のシングルは、アルバムのストーリーを想定してトーフくんに作ってもらったんです。アルバムの構成としてとにかく完成度が高いものがつくれたらいいなと。

——「アイドル」「ラップ」「ラブソング」という3つの要素はどんなバランスで考えてたんですか? 

当時はまだシリアスなテーマの曲はなるべく避けようと思っていて。あと、単純に僕が当時ずっとラブコメ漫画とか恋愛系の話にハマってたんですよ(笑)。そんなときに偶然、「そりゃ夏だ!」に恋愛の要素が入っていて、「おいでよ」に応援ソングの要素が入っていたので、恋愛で浮き立っていた女の子が、その後フラれて、傷心し切っているときに乗ったタクシーの中から「おいでよ」がかかってくるっていうストーリーが浮かんで、アルバムの構成が見えたんだと思います。

——『date course』の作家陣には、餓鬼レンジャーのポチョムキンやイルリメ、Fragmentなどが参加しています。tengal6時代には韻踏合組合のERONEも歌詞を提供していますが、作家陣の顔ぶれはどんなことを意識してたんですか?

ラップのテイストがバラバラになるように考えたんですよね。

——学校の先生じゃないけど、いろんなラップの講師陣を集めよう、みたいな。

まさにそれです。それでメンバーにも刺激になればって。

——キムさんが『date course』で特に印象深い曲は?

「P.S.」っていう曲があるんですけど、あの曲は完全に失恋ゾーンの歌詞で、雰囲気が相当重いんですね。テーマこそ恋愛を扱った曲とは言え、それこそさっき言ったシリアスめな曲はどうなのかな?って僕が思ってたところに、僕が想像していた以上のラップの表現力で仕上げてきて、この方向は絶対に今後もやっていきたいと思いました。同時に、「P.S.」の歌詞を書いた岩渕と、あのトーンの曲で自分たちのことを歌う、恋愛が絡まない曲をやりたいねって話になって。それが今回のアルバム『SPOT』に繋がってるところがあるんです。

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ナビゲーター

猪又 孝 / TAKASHI INOMATA

1970年生まれ。音楽ライター/エディター。小4のときにビートルズ「HELP」にヤラれ、19歳のときにロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズに心奪われるも、22歳でいきなりサザン・ソウルに開眼した、我ながら雑食家。現在は邦楽のソウル/R&B/ヒップホップを中心に執筆。でも、カワイイ& カッコイイ女の子もダイスキ。オフィシャル取材などで馴染みがあるアーティストは、加藤ミリヤ、Zeebra、SKY-HI、東方神起、三浦大知、RIP SLYME(五十音順)等々。

 
 
 
 
 
 
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