MUSICSHELFトップ > インタビュー・プレイリスト > 特集 > 特集 原田知世

特集 原田知世 歌手と女優の融合で完成したカヴァー

特集 原田知世

歌手と女優の融合で完成したカヴァー

そのアルバムタイトルは『恋愛小説』という。10編の洋楽のラブソングのカヴァーで紡がれた原田知世の新作である。今回インタビューに応えてくれたのは原田知世さん本人と、本サイトでもおなじみのプロデューサーである伊藤ゴローさん(ボサノヴァ・ギタリストの第一人者として、先頃フジテレビ系列『ヨルタモリ』にも出演!)。ヴォーカリスト及び作詞家、ギタリスト及び作編曲家、そしてプロデューサーとして、過去の作品でも長く親交をあたためてきた。そんな2人が今回は、既存の名曲に向き合い、この作品を作るに至った経緯から伺ってみた。

–はじめに本作品を作るきっかけを教えて下さい。

原田 前作の『noon moon』の、レコーディングメンバーと全国ツアーを行った際、ゴローさんたちとまた次も何か制作をしたいと話していたんです。そんなとき、ユニバーサルミュージックのディレクターである斉藤さんから新しいアルバムの提案をいただいたんです。

–洋楽のラブソングのカヴァーですが、選曲はプロデューサーである伊藤ゴローさんと決めたんですか?

原田 いいえ、選曲も含めて斉藤さんからプレゼンテーションしていただきました。

–それは意外でした。原田さんもミュージシャンとしてのキャリアも長いですから、思い入れのある楽曲を自身やゴローさんと一緒に選んだのだとばかり思っていました。歌手として敢えて客観的なスタンスだったんですね。

原田 私はこれまで女優と歌手という両方に取り組んできました。だから、今回はその両面を見せることができたら、と思ったんです。つまり、映画でいうならゴローさんが監督で、斉藤さんが脚本家、私が女優というふうに。他の方が提案してくださることにより、今まで気づかなかったことが見つかったら面白いなって。

–それを歌い手として演じるということなんですね。アルバムにはビートルズから、ノラ・ジョーンズ、レナード・コーエン、マルコス・ヴァーリ、バート・バカラック、それにエルヴィス・プレスリーなど年代も国も異なる様々なアーティストの楽曲が採用されています。

itogoro_a

伊藤ゴロー

ゴロー アレンジは苦心しましたが、統一感を持たせようとは思いませんでした。

–2006年のゴローさんソロ・プロジェクトMOOSE HILLの『desert house』で、原田さんがヴォーカリストとして参加、それ以降、原田さんの『music & me』(2007年)、『eyja』(2009年)、『noon moon』(2014年)でゴローさんがプロデュースを手がけていますが、繰り返すようですが今回はカヴァーアルバムですね。これまでは原田さんによる作詞、ゴローさんによる作曲、編曲というコラボレーションがほとんどでした。ですが、新譜では、作詞家や作曲家などとしてのプレッシャーから解き放たれた感覚はありました?

ゴロー これまでは曲を生み出して育ててゆくような感覚でした。でも、今回は既にこの世に生まれている子供たちをいかに手なずけ、楽しんで聴いていただけるかに徹しました。

原田 今回、私の歌は映画のように作品の一部だと思っていました。レコーディングメンバーも同じように演じ手で、作品の一部なんだと思います。

–さて、ある雑誌でも拝見しましたが、2曲目の「ドント・ノー・ホワイ」(ノラ・ジョーンズ)は、原田さんが旅先でもよく聴かれるという、思い入れの深い1曲なんですね。この名曲を敢えてカヴァーするのは相当な覚悟が必要だったのではないかと。でも、ゴローさんによる、アル・グリーンに代表されるようなハイ・レコードテイストのアレンジが意表をついて、新味が吹き込まれていますね。しかも、作者である、ジェシー・ハリスとのデュエットにもなっています。

原田 やはりノラ・ジョーンズのあの素晴らしい歌声に支配されていたので、そこからどのように離れるか、ひじょうに苦心しました。一応、一人で歌いレコーディングしたんですが何かもの足りなくて…。だけど、最後の最後、ミックスダウンも終了し、いよいよマスタリングが始まるというとき、この曲をデュエットにすればよかったね、とゴローさんが言い出して…。

ゴロー 別件でジェシーと連絡を取っていたし、斉藤さんも以前ジェシーの担当であったことから、デュエットを打診してみたんです。こちらからニューヨークにレコーディングデータを送ったところ、それにすぐヴォーカルを付けてくれて。

原田 まさにミラクルでしたね。ジェシーさんにはまだお会いしたことがないんですが。

–そのジェシーの歌声をミックスして、このアルバムのハイライトのひとつである「ドント・ノー・ホワイ」が完成したと。それからザ・ビートルズのカヴァーの「夢の人」のPVも素敵ですね。CDジャケットとつながるような雰囲気で。

原田 PVはジャケットと同時に撮影しました。ジャケットから動き出すような雰囲気になっていると思います。都内での撮影で、スポーティーな恰好をしていったんです。ところがちょうど当日、付近でマラソン大会が開催されていたようで、ゼッケンを渡されそうになりました(笑)。

–(笑)。さて、一般的にカヴァーアルバムというと、元曲の美味しいメロディーだけをシンプルになぞったような作品が多いような気がしますが、本作はそうではないですね。

ゴロー 歌がメインだから、普通はアウトロはそんなに長くしないんですが、今回は参加ミュージシャンに任せた部分が大きかったと思います。歌が終わってからも演奏が結構長く続く曲もあります。

原田 歌が終わった後、他の役者さんが出てくるような(笑)。前作でライヴを行ったことも大きいと思います。前作と今作では、内容は違いますが、良い流れでつながっているんです。

ゴロー バンド的だともいえますね。

–たしかに、ストリングスやホーンセクションなど、緻密なアレンジがされている一方で、どこかバンドっぽい…。

ゴロー 今回は大きくわけてふたつのチームでレコーディングしました。ひとつは。ジャズ/ボサノヴァチーム、もうひとつはロック/ソウルチーム。前者はピアニストの坪口昌恭さんが支えている、たとえば「ベイビー・アイム・ア・フール」「ナイト・アンド・デイ」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」など。後者は「ドント・ノー・ホワイ」など。この曲では、堀江博久君がオルガンやクラヴィネットで活躍し、かなりかっこいいフレーズを弾いてくれています。ジャズ的なアレンジもありますが、ただ単に4ビートのジャズで演奏するというものにはしたくなかったんです。そこにジャズであることの必然性があるかどうかを考えていましたね。

原田 ジャズと向き合う、と考えたとき映画『リプリー』を思い出しました。そこで主役のマット・デイモンが「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を歌うんですが、それがものすごく素敵で。ジャズヴォーカリストではないけれど、彼にしか出せない雰囲気がそこにあったんです。それが今回大きなヒントになりました。女優であり、歌手でもあることをひとつの個性として捉えようと強く思いました。

–では、今回のアルバムは原田さんのキャリアの中では、どのような位置づけにあると考えていますか?

原田 私は、幸運なことに女優として、そして歌も歌わせていただいてデビューしました。だけど、今のように自分から音楽を発信したいと思ったのは20代の半ばのことです。女優さんが歌うアルバムというだけでなく、音楽からも好きになっていただけるようなアルバムを創りたいと思ってきました。ただ、女優の顔と、歌手の顔を離さなきゃと思っていたことも事実です。ところが、ここ数年、ゴローさんとの出会いもり、そのふたつを、なんとなく融合していけるかなと思えるようになったんです。それがこのアルバムに表れていると思います。


 

(C)Takehiro Goto

(C)Takehiro Goto

原田 知世(はらだ ともよ)

出身地: 長崎市 生年月日: 1967年 11月28日 血液型: A型
1983年、オーディションで5万7千人の中から選ばれ、映画『時をかける少女』で主演デビュー。近作は映画『サヨナラCOLOR』『紙屋悦子の青春』『しあわせのパン』、NHK連続テレビ小説『おひさま』、NHKドラマ10『紙の月』、NHK特集ドラマ『途中下車』など数々の話題作に出演。
歌手としてもデビュー当時からコンスタントにアルバムを発表。1990年以降は、鈴木慶一、トーレ・ヨハンソンを迎えてのアルバム制作、それに伴うオール・スウェディッシュ・メンバーとの国内ツアーなどで、新たなリスナーを獲得。2007年、プロデューサーに伊藤ゴローを迎え、アルバム『music & me』、2009年『eyja』、2014年『noon moon』を発表。現在は高橋幸宏らと結成したバンドpupa(ピューパ)としても活動中。
そのほか、ドキュメンタリー番組のナレーションを担当するなど幅広く活動している。

オフィシャルサイト
http://haradatomoyo.com/
ユニバーサル ミュージック
http://www.universal-music.co.jp/harada-tomoyo/


《オフィシャルリリース》
『恋愛小説』発売記念プレミアム・ミニライヴ

原田知世が、「大人のラヴ・ソング」をテーマに、ロックやジャズなど様々なジャンルの洋楽のラヴ・ソングをカヴァーしたニュー・アルバム『恋愛小説』の発売(3月18日)を記念してプレミアム・ミニライヴを行った。会場となったのは、ブルーノートジャパンがプロデュースするカフェ&エピスリー「cafe104.5(カフェイチマルヨンゴー)」。 70席限定で予約開始後すぐに完売し、超プレミアム・イベントとなった。満員の観客を前に、新作のプロデュースも務めたギタリストの伊藤ゴローと共に登場。「今日はリラックスしていただいて、新作“恋愛小説”の発売を一緒に祝ってもらえたら嬉しいです」と挨拶。食事しながらライヴを楽しむイベントで、料理には“本日のスペシャル”として原田が最近お気に入りというメニューが特別に加えられた。「私はひよこ豆が大好きで、今日のお料理にひよこ豆のフムスをリクエストして入れてもらいました。皆さんにも楽しんでもらえたら」とコメント。
 原田知世&伊藤ゴロー ライブ写真①
ライヴはノラ・ジョーンズの「ドント・ノー・ホワイ」からスタート。冒頭から繊細な伊藤のギターをバックに透明感溢れる歌声を聴かせた。「“ドント・ノー・ホワイ”は元々はひとりで歌うつもりでレコーディングしたのですが、伊藤ゴローさんが作者のジェシー・ハリスさんにダメ元でデュエットを依頼してくださったら快諾してくれて実現しました」とコメント。そして2曲目の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」、3曲目にザ・ビートルズのカヴァー「夢の人」を披露。いずれもライヴで披露するのはこの日が初めてだったのだが、英語の歌詞を見事な発音で歌い上げた。最後に、前作『noon moon』に収録された「Brand New Day」を披露しステージをあとにしたものの、客席からのアンコールを求める拍手が鳴りやまず再登場。「まさかアンコールをいただけるなんて思ってなかったので嬉しいです」と感激し、「ドント・ノー・ホワイ」をもう一度演奏した。新作「恋愛小説」はカヴァー・アルバムとしては14年ぶりとなる作品。ザ・ビートルズ「夢の人」、ノラ・ジョーンズ「ドント・ノー・ホワイ」、エルヴィス・プレスリー「ラヴ・ミー・テンダー」などの名曲を透き通る歌声で、短編小説の主人公を演じるように歌っている。原田も「女優と歌手の両面を皆さんに楽しんで頂けるようなアルバムになったと思います」とコメントしている。

【ライブ概要】
アルバム「恋愛小説」release party
原田知世(ヴォーカル)、伊藤ゴロー(ギター)
2015年3月19日(木)
café 104.5(新御茶ノ水)

setlist
1. ドント・ノー・ホワイ
2. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
3. Brand New Day
4. 夢の人
<アンコール> ドント・ノー・ホワイ