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猪又孝のvoice and beats

SKY-HI 2nd ALBUM『カタルシス』
Special Interview

SKY-HI

2nd ALBUM『カタルシス』
Special Interview

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深く濃厚なのに爽やかで胸がすく。そんなオートフィクションを読んだ気にさせる、非常にコンセプチュアルな作品となったSKY-HIの新作『カタルシス』。前作の『TRICKSTER』も今作も、リスナーの意識をポジティブにすることをめざして作られた一枚だが、その伝え方、物語の進め方は飛躍的に進化(深化)。一枚通して聴いたあと、聴き手にめくるめくカタルシス(不安や苦しみからの解放、心の浄化)をもたらすよう、驚くほど緻密に計算されて作られている。歌詞にちりばめられたダブルミーニング/トリプルミーニングを読み解いていくのも面白いし、Mummy-D、DJ WATARAI、KREVA、Nao’ymt、SONPUB、夢幻SQUADなど豪華プロデューサー陣が作る音に身を任せるのも一興。今回はそんなアルバムがどのようにして作られたのか、たっぷりインタビュー。これがSKY-HI渾身作『カタルシス』のレシピだ。

——今回のアルバム制作にあたり意識していたことは?

大きく2つあります。まずはプレイリスト時代に対応しうる音像の幅広さ。自分にある振れ幅のいちばん左からいちばん右まで、みたいなことをちゃんと突き詰めて提示することがひとつ。もうひとつは、そうして音のバリエーションを求めると、ともすればコンピレーションのようになっちゃうから、そうならないように自分の主張/メッセージを頭から最後までしっかり通すこと。ヒップホップは特に近年、そういう意識が強いですよね。ケンドリック(・ラマー)だったり、ドクター・ドレーの『Compton』だったり。

——コンセプチュアルな作り方っていう。

その作り方をちゃんとやろうと思いました。こういうことを歌ったあとに、こういうことを歌って、これが来てとか。アルバムの前半で歌ったことが後半に繋がってくるとか。そういうのを押しつけがましくない程度に、説明臭くならない程度にしっかり作り込んで、聴いてるうちに感情が沸き立つようなちっちゃい爆弾みたいなものを詰め込んでいこうと。なので、去年くらいの段階で、映画みたいに脚本を作って、シーン撮りするみたいにアルバムを作っていきました。

——今回、描きたかったストーリーのテーマは、大きく言うと「生と死」ですか? それとも「愛と自由」?

生と死、ゆえに愛と自由かな。死をネガティブなものに捉えることができなかったのが今回のアルバム作りの始まりなんです。死ってネガティブなものの象徴みたいなところがあるけど、そのことにすごい違和感があって。死が待っているから、それまでの生をどうするかっていうところに目を向けられてるのかもしれないし、ひょっとしたら死後は全然想像の範疇を超えていて「第2ステージの始まりでーす!」みたいなことがあるのかもしれない(笑)。誰も知らないし、わからないじゃないですか。そういう歌が「スマイルドロップ」以降多くなってきたから、生と死みたいなことをずっと考えてるんだなって自覚し始めてたんですよ。

——「Luce」もそういうテーマだったしね。

そう。「Serial」は殺しちゃうし、「Seaside Bound」のビデオもそういう感じだったし、「スマイルドロップ」のビデオもそうだったから、これはきっと自分の中でモヤッとしてるんだろうなと。だからこそ、シングル曲はテーマがでかいぶん、ポップな音像をめざしました。入り込みづらくしたくなかったので。

——でも、なぜ「生と死」について考えるようになったんだろう。

「スマイルドロップ」をつくるまでの時間がシンド過ぎて、たぶん「死にたい」とか思ったんですよ。でも、死にたいと言ってもどの程度の「死にたい」なのか自分でもよくわからない。わからないけど苦しいし、辛いし、っていう。

——以前取材したとき、「スマイルドロップ」はその辛さを昇華しようと作った曲で、それができたから「カミツレベルベット」がつくれたと言ってました。

だから、それをアルバム全体で言いたくなったんです。「スマイルドロップ」で《笑顔の理由が足りない》って言ってた人が、「アイリスライト」で《君がただ「幸せ」っていう一秒がつくれたら それが僕の生きる意味だ》って言う。その境地に達せられたまでの物語を作ろうと。

——1曲目の「フリージア 〜Prologue〜」で、《生きるって何?》《愛なんて見えやしない》って歌ってるのがフリになってるんだよね。

そうなんです。その話をきちんと成立させるために、歌詞の1番と3番でQ&Aのカタチになる「フリージア」を書いて、「スマイルドロップ」の前と、「アイリスライト」の後に入れようと。「フリージア 〜Epilogue〜」でそのフリに対する答えを言い切れたときに、自分でもアルバムが完成した実感がありました。

——ただ、2曲目で《Ms.Liberty》と歌うから、愛と自由がテーマなのかな?とも思ったんです。

まさにその曲は「愛と自由」だったんです。厳密に言うと「フリージア」をつくったときに、最後で《愛、夢、優しさに正しさ》と歌ったけど「自由だけ歌えてないな」と思って「Ms.Liberty」をつくったんですよ。

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ナビゲーター

猪又 孝 / TAKASHI INOMATA

1970年生まれ。音楽ライター/エディター。小4のときにビートルズ「HELP」にヤラれ、19歳のときにロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズに心奪われるも、22歳でいきなりサザン・ソウルに開眼した、我ながら雑食家。現在は邦楽のソウル/R&B/ヒップホップを中心に執筆。でも、カワイイ& カッコイイ女の子もダイスキ。オフィシャル取材などで馴染みがあるアーティストは、加藤ミリヤ、Zeebra、SKY-HI、東方神起、三浦大知、RIP SLYME(五十音順)等々。

 
 
 
 
 
 
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