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特集 DAVID BOWIE is 大回顧展「DAVID BOWIE is」の魅力をラジオとウェブで紹介

特集 DAVID BOWIE is

大回顧展「DAVID BOWIE is」の魅力をラジオとウェブで紹介

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デヴィッド・ボウイが亡くなって早1年、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館を飛び出して、世界ツアー真っ最中の大回顧展「DAVID BOWIE is」は2017年1月に日本に上陸し、連日多くのファンで賑わっている。また鋤田正義や高橋靖子、ミック・ロックといったボウイと時代を共にしたクリエイターたちのギャラリーやトークショーも各地で開催され、再びボウイにスポットが当てられている。さらに生前最後のアルバムとなった『★』(ブラックスター)がグラミー賞5部門で受賞を果たし、先日行なわれたブリット・アワードでも最優秀ブリティッシュ・アルバム賞を獲得すというビッグ・ニュースも飛び込んできた。あらためてボウイの功績、その存在の大きさに気付かされ、同時に一層ボウイがこの世にいない寂しさを感じずにはいられない。MUSICHELFでは「DAVID BOWIE is」開催を記念して、独自の視点からデヴィッド・ボウイの魅力をウェブとラジオで紹介しているが、今回は昨年(2016年1月30日)ラジオの3時間番組として放送したデヴィッド・ボウイ追悼特別番組「チェンジズ★フォーエヴァー」からソニーミュージックのプロデューサーであり『ザ・ネクスト・デイ』『★』を担当した、白木哲也さんのインタビューをお届けします。

Photo by Jimmy King

Photo by Jimmy King

ーー白木さんがデヴィッド・ボウイの作品を担当されたのは、どのあたりからですか?

実際に担当してクレジットされたのは『ザ・ネクスト・デイ』なんですけど、ボウイがソニーミュージックに移籍して初めて出した『ヒーザン』から、部門の長として、ずっとやってきました。だから、デヴィッド・ボウイは個人的には非常に思い入れのあるアーティストですし、担当じゃなくても突っ込んで仕事をしてきました。

ーー訃報を知った時は驚かれたと思いますが、ニュースが出る前に関係者だけに知らされてはいなかったのでしょうか。

まったく。病気だったことすら知らないですし、ニューヨークのスタッフも誰も知らなかったと思います。僕が訃報として初めて聞いたのは、日本時間だと11日の3時ぐらいでした。『ヒーザン』の担当だった小沢という者がいて、彼女はいまニューヨークのオフィスにいるんですけど、デヴィッド・ボウイのFacebookに訃報が乗っているのを見つけて僕に電話してきたんです。〈こんな情報が乗っていますけど何か聞いてます?〉って。最初、僕らは信じられなくて〈いや、そんなの嘘でしょう〉って。というのも、その時点ではFacebookにしか載ってなかったんですよ。いろいろ調べたんですけどね。だから、誰かにFacebookを乗っ取られたんじゃないかと思ったんです。でも、いろいろ検索していくなかで(ボウイの息子の)ダンカン・ジョーンズのツイッターに行き着いたんですよ。そこに〈本当だ〉っていうことが書かれてて。その直後にデヴィッド・ボウイの公式サイトにも情報が載ったんです。

ーーボウイのレーベル、ISOからは何の通達もなかった?

ないですね。

ーー本当だとわかってから大変だったんじゃないですか?

そうですね。〈本当なのか?〉っていう問い合わせがどんどん入って来るわけですよ。僕らとしてはオフィシャルのサイトにも載ってるし、間違いないんだろうな、と思いつつも、やっぱりレコード会社ですから、ニューヨーク本社からの情報を待たないとちゃんとしたことが言えないのでオフィシャルの発表はしてなかったです。ただCNAとかBBCとかCSが自宅で見れたんで、ずっと見てたら海外がものすごいことになってきて。残念ですけど情報は間違いないなって確信しました。

ーー白木さんご自身、ほんとだとわかったときはどんな感じでしたか?

ショックでしたね。皆さんもそうだと思うんですけど、ちょっとでも〈最近、調子が悪い〉とか、そういう情報があれば心の準備ができていたと思うんですけど、アルバムを発売した直後ですし……。なんて言ったらいいんですかね。〈心にポッカリ穴があいた〉、まさにそんな感じでした。

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ーー『リアリティ』のツアーのときに一度倒れたじゃないですか。その時だったらまだしも、新作が立て続けに2枚出て「21世紀のボウイが動き出した!」と思った直後ですもんね。『★』のリリース情報が来たのはいつぐらいだったんですか?

10月下旬ぐらいだったんですけど、確かイギリスの新聞にリークにされてSNSで広がったんです。それまでは、僕らのもとにはまったく情報が入ってこなかった。リークされた後、デヴィッド・ボウイのサイトもちゃんと声明を出して、ようやく僕らも〈出るんだな〉ってわかったんです。そこからは早かったですけどね。(ボウイの)誕生日に出すっていう話になって、11月の頭ぐらいに音が来ました。それで試聴会とかをやろうかとか、いろいろ話をした記憶があります。

ーー『ザ・ネクスト・デイ』の時も驚きましたけど、『★』も厳重に情報規制されていたんですね。

そうですね。『ザ・ネクスト・デイ』のインパクトがすごかったですから、今回も同じようにやろうと思ったんだとは思います。でも、今から考えると〈もしかしたら、もっと後にリリースを考えてたのかな?〉って勘ぐったりしますけどね。〈リークされたのも、1月8日を目指すために何かしたのかな?〉って考えられなくもない。今から思うと、ですけどね。

ーー最初に公開された曲「★」を初めて聴かれた時、どんな印象を持たれました?

超驚きましたね(笑)。僕は『ザ・ネクスト・デイ』を担当したこともあって、『ザ・ネクスト・デイ』の延長線だろうなって想像するじゃないですか。そしたらまったく裏切られた。かつ、展開がすごくて、曲の途中でガラッと変る。〈なんなんだろう!?〉っていうのが正直なとこでしたね。

ーーちょっと組曲っぽい展開ですよね。アルバム全体でいうと、前作は結構ストレートでパワフルなアルバムでしたけど、今回はちょっとダークな雰囲気もあって、緊張感がずっと貫かれてる。前作が陽としたら今回は陰というか、前作と対になってる感じがしました。

確かにそうかもしれませんね。ポップなアルバムではないですし、決してメロディアスな曲が入ってるわけではないんですけど、〈なんかすげえ!〉みたいな感じは、多分どんな方が聴いてもわかると思うんですよね。だから、今回のアルバムは60代後半の人が作るアルバムではないような気がします。やっぱり、ボウイは挑戦し続けてる。新しいことを取り入れて、まだやろうとしてるんだみたいな驚きをすごく感じましたね。

ーーアルバム・タイトルが記号っていうのも意味深ですよね。

最初、レーベル側から絶対このままにしろって言われたんですよ。〈ブラック・スター〉って書くなって。絵だけにしろって。かなり強い口調でした。でも、さすがに向こうも途中で変わったのかもしれなくて、iTunesには〈ブラック・スター〉って載ってましたね。だから僕らは、一応読み方として〈ブラック・スター〉はOKっていうことにしようって話をしたんです。

ーーリリースが決まってからは、新作に関する資料は届いたんですか。

いや。デヴィッド・ボウイは何も来ないんですよ。バイオとかは来ますけど、アルバムの背景とか、そういうのは一切言わないんですよね。『ザ・ネクスト・デイ』の時もそうでしたけど。かつ、正式な情報が届くのが遅いみたいな(笑)。唯一、歌詞は来るので、それがヒントになるんじゃないかと思います。

ーーちなみに、白木さんが『★』のなかで印象に残った曲を1曲挙げるとすると?

2曲目の「ティズ・ア・ピティ・シー・ワズ・ア・ホア」です。イントロのドラムとかも含めて、最初に聴いた時、いちばんインパクトがありましたね。

ーーマーク・ジュリアノのパワフルなドラムが。

まさに。あと、最初はそんな思わなかったんですけど、何度も聴くうちに好きになったのが「ラザルス」。今はこの曲が一番良い気がします。

ーー特にこの曲は舞台を想定して作られた曲だし、ボウイが曲に込めたメッセージを深読みしたくますよね。

今聴くとまったく違う聴き方になってしまう。「アイ・キャント・ギヴ・エヴリシング・アウェイ」とかも深読みしてしまいますね。〈私はすべてを与えることはできない〉っていう歌詞で終っちゃうわけですから。

ーーこれが最後のアルバムになると本人は意識していただろうから、最後の曲は相当考えたでしょうね。とにかく、自分がもうすぐこの世を去ることがわかりながらアルバムを作るっていうのは想像を絶するというか……。

ちょっと考えられないですよねデヴィッド・ボウイのイメージとか、これまでやってきたことから考えると〈デヴィッド・ボウイらしいアルバムだな〉っていう話になっていくと思うんですけど、〈自分が死ぬってわかってる時にこんなアルバムが作れるか?〉って言ったら、普通できないと思いますよ。そこがデヴィッド・ボウイらしさ、ボウイのすごいところなのかもしれないですけど。

ーー余命1年とか言われたら、普通は家族とゆっくり過ごしたいと思いますよね。

そうですよね。でも、アルバムを作り続けて。かつ、最近トニー・ヴィスコンティが言ってたんですけど、亡くなる1週間前に5曲ぐらいのデモが送られて来たらしくて、もしかしたらもう一枚作ろうとしてたんじゃないかって。

ーー最後まで新しい曲を! 凄まじいアーティスト魂ですね。

もし、余命わずかだとわかったら、自分の好きな曲とか、一番良い時代の曲をカヴァーしたり、人生を振り返るアルバムを作りそうな気がするんですよね。でも、ボウイは変わり続けようとした。

ーー新しいことをやるには精神力も体力もかなり必要だと思うんですけど、いちばん厳しい時期にそういうことをしようとするというのは大変なことですよね。

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