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猪又孝のvoice and beats

Suchmos 2nd E.P.「LOVE&VICE」Interview

Suchmos

2nd E.P.「LOVE&VICE」Interview

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——「STAY TUNE」で、もうひとつ印象的だったのはファルセットの多用だったんです。ここまでファルセットをフィーチャーしたのは初めてですよね。

今回はいろいろな歌唱法を試したかったし、「ボーカルってこういうことだろう」みたいなところを3曲全部に盛り込めたと思ってます。まずは、同じ旋律を2本重ねて録る手法がすっかり当たり前になっているので、Aメロとか質感を出して歌いたい部分は昔ながらのシングルで録ったんです。そこはこだわりを持って、良いテイクが録れるまで「気合いだー!」って感じで臨んで。

——なぜ1本で録ろうと?

歌が上手くなったっていうことですかね(笑)。だから、「BODY」でも象徴的にファルセットを使っているんです。今回はそこをわかりやすく、武器として盛り込もうと。

——今回のファルセット使いにはソウルマナーも感じました。

カーティス・メイフィールドの歌い方を一時期パクってたというか(笑)、「これ、モノにできたらかっこいいな」と思いながらお風呂で練習してたんです。だから、今回とりあえず盛り込んでみようと。

——YONCEくんがボーカリストとして影響を受けた人は誰なんですか?

まずカート・コバーン。それからカーティス・メイフィールドと、あとはフレディー・マーキュリー。フレディーの高音域にいくところだけちょっとシャウト気味になるところが超カッコイイと思ってるんで、自然に俺もそう歌っちゃってるんですけど、この3人の影響がデカいかも。

——日本人アーティストだと?

MISIAと、あとはチバユウスケさん。

——MISIAはテクニック抜群の「巧い」歌手、チバユウスケは味のある歌で聞かせる「旨い」歌手って感じだからタイプが違うけど?

MISIAは歌の巧さもそうなんですけど、表現力ですね。すごくたっぷり歌える人だと思っていて。たっぷり歌うってどういうことだ?みたいな感じで、自分でもよくわかってないんですけど、あの境地に辿り着かないとわからないことは絶対あるだろうから、目標みたいな存在なんです。チバさんはヴァイブスの塊。そういう感じで歌う人だと思っていて。そこは自分の芯にあるところなので、そういう部分も捨てちゃいけないと思うんです。

——少し話が戻るけど、「BODY」は何について歌った曲なの?

サビの最初は、ビバリーヒルズもゲットーもあんまり変わらないじゃん、みたいなことを歌っていて。考えてることは実際あんたら変わらないよ、みたいな。サビの2回し目の「控え ロスター」っていう歌詞は、サッカーとかバスケとかのベンチメンバーもスターティングメンバーも等しく努力してるよっていうことを歌ってるんです。

——大きく言うと平和を願っている歌なんですか? 人類は皆、友達みたいな。

いや、ちょっと厭世観が入ってます。世の中、平和だと考えたいけど、平等に見えないことが多すぎるよ、俺にはそうは見えないんだけど、っていうことを言いたくて。だから、ちょっと斜に構えた視点ですね。

——世の中のひずみとか不平等に着目して書いてるけどね。

でも、それを是正したいなんて1ミリも思わないんです。歌詞に出てくる「へらへら笑っていたい」とか「ハッピーなテンションだけをKeep on」っていうのがこの歌の気持ちを端的に示してますね。別に俺はこうやっていれさえすればいいんだっていう。でも、みんなはそうじゃないんでしょ? じゃ、おたくらは頑張って下さいよ、くらいの感じ。

——『THE BAY』の「Alright」や「BURN」もそうだけど、YONCEくんは世の中にちょっと中指を立ててる歌詞を書いたりするよね。「ふざけんな」感と「うんざり」感から来る歌詞というか。

たとえば「Alright」は、失業保険で生活してたときにハローワークにマジですごいペースで行かなきゃいけないことにムカついて書いたんです。こっちは会社の都合で職を失ったわけだから、「もうお役所さんが勝手にうまい具合にやってくれよ!」っていう。一方で、シリアの内戦とかがあって世界が不安定だし、それが巡り巡って俺の生活に影響を及ぼしている! これはその陰謀だ!とか勝手に妄想を巡らせて書いてて。

——メチャクチャ身勝手な紐付けだけど(笑)。

「BODY」も、シリアの難民問題がすごいじゃないですか。それに対して、日本は生きてくのがラクだし、俺はラッキーだなと思って。難民に直接、救いの手は差し伸べられないから、俺はいま自分が運良く過ごせてることをひとまず書いておいたほうがいいと思ったんです。

——事態をなんとなくは想像できるけど、リアルじゃないと。

さっきも言ったけど「We Are The World」とかは大成功した人じゃないと、本当に思いを巡らせられないと思うんですよ、地球レベルのことなんて。そういうって自分できるようになってから言わないと意味ないと思うんで。

——であれば、いまは身近にある不条理について歌ってる方がリアルだと。

そう。そのほうが痒くならないですよね、自分が。

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「Our favorite albums + tracks.」

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猪又 孝 / TAKASHI INOMATA

1970年生まれ。音楽ライター/エディター。小4のときにビートルズ「HELP」にヤラれ、19歳のときにロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズに心奪われるも、22歳でいきなりサザン・ソウルに開眼した、我ながら雑食家。現在は邦楽のソウル/R&B/ヒップホップを中心に執筆。でも、カワイイ& カッコイイ女の子もダイスキ。オフィシャル取材などで馴染みがあるアーティストは、加藤ミリヤ、Zeebra、SKY-HI、東方神起、三浦大知、RIP SLYME(五十音順)等々。

 
 
 
 
 
 
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