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特集 上原ひろみ 『SPARK』 Special Interview

特集 上原ひろみ

『SPARK』 Special Interview

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アンソニー・ジャクソン(b)、サイモン・フィリップス(Dr)とのザ・トリオ・プロジェクトをスタートさせて6年目を迎えた上原ひろみから、またしても彼女史上の最高傑作を更新するアルバムが届けられた。トリオによる4作目『SPARK』がそれだ。聞けば、トリオとしての3作目だった前作『ALIVE』の取材では「三部作ですね」と言われることも多く、このたび4作目が完成したことに驚く声もあるのだとか。けれど彼女にそういったあらかじめの意図はなく、1枚1枚、瞬間瞬間が、新しい音楽を生み出すための果敢なチャレンジの積み重ね。そして4枚目となる本作はまさに、彼女の音楽人生を突き動かしてきた瞬間のきらめきや興奮、衝撃=SPARKが詰め込まれるものとなった。MUSICSHELFでは2009年の『PLACE TO BE』のインタビューから数えて5回目となる今回は、飽くなき挑戦とダイナミクスにあふれた新作の話から、彼女の創造力を刺激してやまないトリオのこと、文字どおり”SPARK”に充ち満ちたツアーの舞台裏まで、上原ひろみの今をたっぷりと聞いた。

『ALIVE』のツアーをしているなかで
「この人たちともう1枚作りたい」という強い思いが生まれた

──新作、すごく好きです。・・・って、なんだか告白みたいですね。

ありがとうございます。

──毎回、上原さんの新作を初めて聴く時は正座をして、くらいの緊張感があるんです。今回はどんなチャレンジが詰まっているんだろう?と、ドキドキする。で、聴くといつも気持ちがグイッと前に出るというか、エネルギーが湧いてくるんです。

『ALIVE』の時も、そうおっしゃっていましたよね?

──前回も言ってましたか!?

「すごくやる気が出ました」みたいなことを言ってらしたのが印象に残ってて(笑)。

──同じ前ふりですみません・・・。いやもう、本当にそうなので。で、前作の『ALIVE』では三人の距離が近く、「かたまり感」のようなものを強く感じたんですが、今作では三人の輪が大きくなったというか、むしろ繋いだ手を離しても平気なくらいの大らかさや安心を感じました。それぞれが離れていても安心してボールを投げられるし受けとめられるというか。取材などでは、どんな感想が聞こえてきてますか?

いろんな方がいらっしゃいますけど、「すごく難しいことをやっているんだろうけど聴きやすい」という感想は多いですね。「ポップ」と表現する方もいましたし。

──なるほど。で、もっと言うと、音楽的な経験や成長だけでなく、人生経験みたいなものも反映しているように感じたんです。それはたとえばいろいろな感情の経験が曲想に投影される・・・というようなことも含めて。ただ、そういうことはもしかすると、作っている本人はわからないものかな、と思って。

わからないですね。成長していないと困るなという気持ちはありますけど、長く生きれば生きた分だけいいものが作れるかというと、それも違うと思いますし。10代や20代だからこそ作れる音楽があるだろうし、今しか作れないもの、今の年齢だからできる演奏もある。その時点でのベストを出していく・・・それだけだと思っているので。

──では現時点でのベストである今作、ご自身ではどんなアルバムになったと感じますか?

やっぱり、ずっと三人でやってきての4枚目なので、どこでどうハンドルを切っても全員がちゃんとついてくるという安心感は表れているんじゃないかとは思いますね。お互いがつねに挑み合い、輝かせ合う関係なので、その中では、急発進、急停車、ドリフトと、いろんなことが起こる。それでも全員が必ずガシッ!とついてくる。阿吽の呼吸的なものが育っているのは感じました。

──そういった安心感というのは、曲を書く時点ですでにありました?

あったと思います。三人で『ALIVE』のツアーをしているなかで「この人たちともう1枚作りたい」という強い思いが生まれたので、曲を書く段階でも安心と興奮という相反するものが共存していたとは思います。

──「もう1枚」と思ったのはやはり、トリオとしての伸びしろや可能性を感じて?

彼らをあらためて360度から見た時に、もっとこういう曲を二人とやってみたいなとか、こういう曲でのアンソニーを見てみたい、サイモンのこういうプレイを見てみたいというのが出てきたんですね。

──それは具体的なイメージで?

そうですね。それに合わせて曲を書いたりもしましたし。

──どの曲が最初にできてきたんでしょう?

基本的に同時進行なので、「この曲が最初にできた」というのはないんですよ。ちょこちょこと書き直したりしながらやっているので。

──ちょこちょこといろんな着想があって、それぞれがちょっとずつ育っていく?

そうです。”SPARK”という大きい幹があって、そこから枝分かれしつつ、全部がニョキニョキニョキと出てくる感じです。

──”SPARK”というテーマは最初からあったわけですね。

二人に「もう1枚作ろう」と言った時には、すでにありました。いつも、曲の雰囲気みたいなものを言葉にして書き出すんですけど、今回はひとつの曲ができつつある時に、「衝撃」とか「一瞬で世界が変わる」「その瞬間」というようなことを書いていたんです。それで、これは”SPARK”だなと思い、これをテーマにしたら面白いかな、という感じでしたね。

──SPARK=スパークって、日本人にとっては一瞬のパッと鋭い光、きらめきといったイメージだと思うんですが、「衝撃」という意味合いもあるんですね?

心を瞬間的に奪われる、というようなイメージですね。一目惚れ・・・対象は人でも物でもいいんですけど、「そこに光が見える」という意味での衝撃というか。

──心の中でのスパーク・・・身体に電流が走った!みたいな?

そうそう、「ビビッとくる」とか(笑)。

──あぁ、なんとなく掴めました。で、その「スパーク」というテーマのもと、コンポーザーとしての上原さんが音楽的に意識したのは、どんなところですか?

トリオとして積み重ねてきたものがあるからこそやれるダイナミクスを打ち出したい、というのはありましたね。そういう意味では、スタジオに入る前にツアーで3週間、新作の曲をやったことはすごく良かったと思います。コンポーザーの私が要求することをピアニストの私が必ずしもすぐに弾けるとはかぎらないし、そこはメンバーも同じなので。ライヴでやることで技術的な部分も曲自体も、どんどん揉まれていったのはとても良かったです。

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Photo by Takuo Sato

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