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特集 UNCHAIN 20th Anniversary Special 8th Album『with time』 Interview

特集 UNCHAIN

20th Anniversary Special
8th Album『with time』 Interview

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皆さんUNCHAINというバンドをご存知でしょうか?なんて今更シェルフの読者の皆さんに、そんなイントロからスタートするのもおかしな話ですが、今回は是非とも今まで彼らを知らなかった音楽ファンにもよーく知って頂きたいので改めてバンドの紹介からスタートします。野村克也さんや太川陽介さんというビッグな大先輩が生まれた京都は京丹後市出身の同級生3人が15歳でバンドを結成、後に1年後輩が加入して現在の4人組となりました。メンバー2人が所属していた高校レスリング部の先輩、プロレスラー中邑真輔選手の親戚が命名したそのバンド名は<UNCHAIN(アンチェイン)>。メロコア、パンク、J-POP、ジャズ、ブラックミュージックとあらゆる音楽を吸収した独特のサウンドで、20年経った現在も一切メンバーチェンジなく、その名の通り“鎖に縛られない”活動を続けており、KEYTALKやBRADIO、HaKUといった現在第一線で活躍するバンドにも大きな影響を与えてきた、唯一無二の存在なのです。
一方、UNCHAINは自分たちにしかできないスタイルを愚直なほどまじめに追い続けるバンドで、これまでのオリジナル作品、カバー作品とリリースする度に大胆なチャレンジを行い、その愚直さ故に時にはファンの意見が別れたり、「迷走」と言われたりすることもありました。しかし、これまで関わってきた多くのスタッフにも支えられ、彼らは一歩ずつ成長を遂げ、2015年3月、ロサンゼルス・レコーディングでのSadaharu Yagi(グラミー受賞エンジニア)との出会いが、まさに「これだ!」という確信を持つには十分な彼らの進むべき大きな<きっかけ>が生まれました。
そのきっかけを形にすべく、セルフ・プロデュースで挑んだ8枚目のオリジナル・アルバム『with time』は結成20周年に相応しい、自信に満ちた作品が完成しました。
演奏の上手さ、ヴォーカルの歌唱力、都会的な洗練されたサウンド、エモい、踊れる等々、ファンの皆さんが抱くUNCHAINの好きなところは、実際に彼らがこれまでチャレンジしてきた数だけあるかと思いますが、今回の『with time』を聴いた瞬間、そんな思いも吹き飛んでしまうくらい、今までにない衝撃が走って<これが一番好き>に変わるかもしれません。それ程、強烈で、猛毒性があり、一度噛まれたら、しばらくその毒は消えないでしょう。
ということで長くなりましたが、バンドの中心人物、谷川正憲に今回の作品についてたっぷりと語ってもらいました。

やってることは簡単に聴こえますけど
実はいままでやってきたことが全て詰まっているんですよ

―― セルフ・プロデュースということでどんな作品になるのかなって思っていたのですが、完全にヤラれました(笑)これまでもずっと聴かせてもらっていますが、<瞬殺>は初めてだったかも(笑)。

あはは(笑)

―― 全曲シングル・カットしてもいい位、一曲一曲の輪郭が際立っているし、『10fold』のサウンドの流れもちゃんと継承しているし、中毒性の強いとても印象に残るアルバムになりましたよね。迷うことなくその先のゴールがちゃんと見えていて、そこに4人が一気に突き進んでいった感じがします。

そうかもしれないですね。名村武さんと『N.E.W.S.』で色々とチャレンジさせてもらったものの中からダンスミュージックに絞ってYagi(Sadaharu Yagi)さんにお願いしてロサンゼルスで『10fold』をレコーディングして、なのでロスでのレコーディングの時点で次回は<ダンスミュージックにテーマを絞ってオリジナルを作る>という方向性が見えていたんです。せっかく突き詰めてきたものを今度は自分たちの力だけでやったらどうなるのかなって知りたくて、今回はセルフでやってみようと決めました。

―― 『10fold』での一番大きな収穫って具体的にはレコーディングだと思うんですけど具体的にはどんなところでしょう?

考え方が日本とアメリカって逆って言うじゃないですか。日本はゼロから10に足していく感覚で、アメリカは10から引いていくのが完成形で、アメリカのほうが引き算の考え方で、日本のポップスとかは逆で、厚みをどんどん足していく感じ。まあそうじゃない奴もあると思うんですけど。

―― 最初に全部録音して、そこから引いていくてってこと?

そういう訳ではないのですが、例えばマーシャルのアンプでEQとかヴォリュームを全部10にして、そっからちょっとずつ下げていく、なんかそんな感じです。音の立体感とかも普通、日本はドライな状態があって、そこからリバーブをかけてちょっと奥にしてやるみたいな<前から奥へ>で、アメリカはリバーブをひったひたにして全部奥にやってからちょっとずつ手前に出していく<奥から前へ>、そんな考え方のような気がするんです。実際はどうかわかんないですけど、それをすごく感じて。それでいくとUNCHAINの音楽はいままでギター弾いている僕が作っている音楽なので、ギターを弾きながら作ってきた訳じゃないですか、だからギタリストが作るギター中心の音楽にやっぱ無意識になるんですよ。で、今回はそうじゃなくて、まずリズムを作ってリズムにどうギターをのせるかっていう、そう考えると<ギターの音こんなにいらないや>ってなるんですよ。結果音数は減るみたいな。

―― 『10fold』を聴くと減っている感覚はなくて、むしろそれぞれの楽器の太さとか厚みとか、あとクッキリとした音の輪郭とか、それがズシンと耳に届いてきて、そこにヴォーカルが力強く、まっすぐ届くという感覚で・・・。

方法論と考え方の違いだけだと思うんですよね。それだけでこんなにも違ってくるのかって感じで、単純に音数だと思うんですよ。言葉で伝えようとすると<音数が少ない>だけで終わっちゃうんですけど、音数を少なくしたことによる効果みたいなものが、すごく出てるんですよ。音楽的にもミックス的にも普通は削らないといけない帯域でも、出しても大丈夫だったりとか、そういうメリットってやっぱすごくあるんですよ。厚みは完全にそこに生まれてますし、音数少なくなって厚みが出るっていうと、逆なんじゃないかって感じがするんですけど、実は音数が少ないほうが音をデカく出しても大丈夫だし、細かく色々やっちゃうと、どうしてもうるさくて奥に引っ込めなくてはいけなくなっちゃいますからね。

―― 減らしても前に出ていると?

音数が多いとうるさいじゃないですか。<パーンッ!>って一発だけだと大きくても大丈夫じゃないですか。

―― そっか、まわりが鳴っていない分、輪郭が際立つんだ!

そう、より良い音で出せるし、音がない部分とある部分の差が出て、それによって立体感が出るし、迫力も出てくるんです。それがロスのレコーディングでわかったことですね。

―― なるほどね。すると『10fold』は、そういう変化をハッキリと感じ取れる曲をあえてピックアップしたと?

そうですね。そういう結果がダイレクトに出てくる曲をYagiさんと選びました。

―― そして今回の『with time』へと進んで行ったんですね。いつ頃からアルバムの構想を練っていたのでしょう?

『10fold』をリリースした後、2015年の7月に「get down」を作った辺りからですね。次は『10fold』のやり方でオリジナル・アルバムを作りたいと。同時にそれを超えなくちゃいけないっていうプレッシャーも既にありましたね。

―― じゃあ<ダンスミュージックにテーマを絞ってオリジナルを作る>という方向性はその時点で見えていたんですね。

そうですね。<シンプル>っていうサウンドのテーマは決まっていました。曲作りも今回やり方を変えて、歌詞もサウンドに合わせてシンプルにまとめようと考えました。

―― 今回は、キャッチーと言っていいのか、常に歌詞とメロディーが一体になってすごくメロディが引き立っていますよね。

それがサウンドと歌詞とのマッチングですね。今回の曲は一番最初にどうしたかというと、タイトルになるような言葉、キーワードを先に決めていったんです。それが決まってから、そこに付くメロディーや連想する言葉をつないで肉付けして出来上がったものばかりなんですね。今までだとアレンジも全部決まってから歌詞を考えるという感じだったんで、膨大な情報の中から一点を摑み取るような暗中模索感がすごくあったんですけど、いままでよりも早く曲が出来上がったという感覚がありますね。

―― それで最初に出来上がったのが「get down」。

そうですね。最初にサビのメロディーが浮かんでなんとなくあてはめた言波が「get down」だったんですよ。ブラックミュージックでもよくこのフレーズが使われているので、あらためて意味を調べてみると「落ち込む」みたいな意味となぜか「ダンスする」という意味もあって、これはぴったりだと思い、そこから歌詞のイメージも広がって曲が出来ました。最初にイメージがあると余計なことを書こうとしなくなるので、自ずと内容もシンプルになるんです。ということは、よりポップに聴こえるってことなんじゃないのかなって。

―― なるほど、確かに。

昔は一曲に自分の世界観の全てを詰め込まないとダメだと思っていたし、気がすまなかったんですけど(笑)今回は言いたいことが一言だけでいいから伝わればいいやという感じで。

―― サウンドと同じく、細かいディティールを気にするのではなく、あくまで<シンプル>にこだわったと。

ブルースの考え方なんですよね。ブルースのような3コードの歌で何を歌っているのか、何を伝えたいのか、短い言葉だけどそのサビとかテーマで全て表されている感じ、今回はそれをやりたかったんです。

―― そして今回は日本語詞がこれまでよりもシンプルに届きますよね。あと英語詞と日本語詞の曲が隣り合わせになっていても聴いていて言葉による違和感が全然ない。

曲の設定的に細かいところまで物語が決まっているものもあるんですが、その細かいところまではあえて歌詞にはせずに削ぎ落とすんですが、ちゃんとそこに想いは込められているし、聴き手の想像にまかせる遊びの部分もあっていいのかなって。まあダンスミュージックなんでそんな深いこと言ってませんけど(笑)

―― 今回「with time(intro/ outro)」を外すと全部で10曲ですよね。候補曲は他にもありましたか?

全部で30曲位ですね。他の曲も同じようなやり方で作った曲ですね。

―― その中で10曲に選んだ理由は?

まずこれは絶対入れようという曲が6曲決まって、その後は印象的な曲とかちょっと変わったテイストを選ぼうと。結構メンバー内でも意見が分かれましたけど、タイトル通り、今までの経験を詰められたらいいなというだけでしたね。

―― 最終的な収録の決め手って何でした?

うーん、やっぱりポップさですかね。J-POP感とは違うポップ感。覚えやすさ、伝わりやすさ、あとテンポ感ですね。そういうのはありました。

―― これまでの曲に比べてテンポが遅い曲でも今回は遅く感じないですよね。

そうですね。それが今まで難しくて、なかなか出来なかったんですよ。

―― 『with time』というアルバムタイトルはいつ出たんですか?

これは最後ですね。今回は20年の節目なんで「UNCHAIN」というセルフ・タイトルでも良いんじゃないかって意見もありましたけど、今まで「太陽(=『SUNDOGS』)」「月(=『Eat The Moon』)」「地球(=『Orange』)」そして「東西南北」(=『N.E.W.S.』)とだんだん距離が近くなってくるという流れがあったんですけど、「時間」という概念もアリなんじゃないかということできまりました。

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