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特集 ダイアモンド✡ユカイ デビュー30周年 進化し続けるオンリーワンのロックシンガー

特集 ダイアモンド✡ユカイ

デビュー30周年 進化し続けるオンリーワンのロックシンガー

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八面六臂の大活躍―。今、この言葉が最もふさわしい男の登場だ。
伝説のロックバンド、RED WARRIORS(以下、RED’S)のボーカルとして、鮮烈なデビューを飾ったのは1986年。一世を風靡したRED’Sはわずか3年で解散するが、近年は音楽活動を中心に、俳優としても舞台や映画で活躍。その一方でバラエティ番組への出演や育児奮闘記を出版するなど、多方面で才能を発揮している。
そのダイアモンド✡ユカイはメジャーデビュー30周年の今年、更なる充実の時を迎えている。ソロ活動では、3月9日にカバーアルバム第3弾『RespectⅢ』をリリース。その3日後に開催されたバースデーライブを成功させただけでなく、織田哲郎とタッグを組んだロックバンド“ROLL-B-DINOSAUR”のボーカルとしても、初のライブツアーを実施中だ。さらに、6~7月には『ALICE~不思議の国のアリスより~』、10~11月には『ミス・サイゴン』という2本のミュージカルにも立て続けに出演。ベテランの地位に安住することなく、飽くなき挑戦で音楽的な幅を広げ続けている。
ロックシンガー、俳優、タレント、イクメン・・・。いくつもの顔を見せながら、唯一無二のエンタテイナーとして進化し続けるダイアモンド✡ユカイと、彼のソロ活動を支える音楽プロデューサーの川原伸司に、『Respect』シリーズへの想いと、“これからのダイアモンド✡ユカイ”に関する話を聞いた。

――ユカイさんと川原さんは、2012年にリリースされたカバーアルバム第1弾『Respect』以来のパートナーだと聞いております。

ユカイ:仕事面ではそうなんですけど、初めてお会いしたのはかなり前でね。杉真理さんが96年に結成したピカデリー・サーカスというバンドに、俺がゲストボーカルとして参加したときが初対面じゃないかな。

――川原さんは杉さんがデビューしたときの担当ディレクターでしたよね。

川原:そう。ピカデリー・サーカスには、ユーミンや(竹内)まりやさんなど、杉くんと親交のあるミュージシャンが多数参加していたんだけど、ユカイくんもその一人でね。僕はそれ以前に、ユカイくんが“田所豊”名義で出演した『TOKYO POP』(88年/フラン・ルーベル・クズイ監督)という映画を観て「いい役者だなぁ」と思っていたんです。でもその役者とダイアモンド✡ユカイが結びついていなかった。それが杉くんの現場で初めて一致したんだよね。

ユカイ:杉さんと俺はビートルズ仲間なんですよ。それでピカデリー・サーカスに参加したら、変なオジサン(笑)が『TOKYO POP』のアメリカ発売のサントラ盤という、普通の人は持っていないようなレコードを持ってきて「サインしてくれ」って言うわけ。映画はアメリカで観てくれたらしいんだけど「ずいぶんマニアックな人がいるな」と思ったのが川原さんだったんです。でも当時は具体的に何をやっている人かというのを知らなくて、プロデューサーとしての川原さんと、井上陽水さんの曲を作っている平井夏美さん(川原のペンネーム)のイメージも結びついていなかった。

――お互いに2つの名前を持つ者同士、当初はそれが一致していなかったわけですね。そんなお二人が『Respect』というカバーアルバムでタッグを組むことになった経緯は?

ユカイ:2000年代に入って、カバーブームが起きたじゃないですか。まずブライアン・フェリーがスタンダードジャズをカバーした『As Time Goes By』(99年)というアルバムを出したんだけど、ビリー・ホリデイとかをグッとくる歌い方でカバーしていてね。それを聴いて「こういうジャズをカバーするのもいいな」と。当時の俺は“成りさがり”の時期だったので、インディーズで『NIGHT LIFE』(99~03年)というカバーアルバムを作ったりしたんですけど、その後、ロッド・スチュワートが『Great American Songbook』(02~10年)というカバーシリーズを爆発的にヒットさせた。「これを日本でやる人がいるかな」と思っていたら、陽水さんの『UNITED COVER』(01年)や、徳永(英明)さんの『VOCALIST』シリーズ(05年~)が次々とヒットし始めて。

――日本のカバーブームを作ったと言われている中森明菜さんの『歌姫』シリーズ(94~03年)や、陽水さんの『UNITED COVER』はいずれも川原さんがプロデュースした企画でした。

ユカイ:そうなんですよ。それを知ったとき、なぜか俺の中では「川原伸司という仕掛け人は、新進気鋭のプロデューサーで、スーツをビシッと着こなしたイケメン」というイメージが浮かんでね。杉さんのところで出会った記憶がすっかり飛んでいて、自分より若いプロデューサーが新しいことをやり始めたと思い込んでいたわけ。ところが今の事務所(サンミュージック)に入って、俺のカバーアルバムを川原さんが作りたがっているという話を聞いて、いざお会いしたら、全然違うイメージの人が来て(笑)。

川原:会った瞬間、キョトンとしてるから「俺だよ、俺」って(笑)。

ユカイ:そう言われてようやく「ピカデリー・サーカスのときにレコードを持っていたあの人が川原さんだったんだ」と(笑)。それまでバラバラの点だったイメージが、そこで初めて繋がったという。

――劇的な再会でしたね(笑)。ところで川原さんはどうしてユカイさんと一緒にカバーアルバムを作ろうと思われたんですか?

川原:今、ユカイくんみたいな力強さを持ったボーカリストで、男歌を真正面から歌える人っていないんですよ。ロックシンガーでは矢沢永吉さんとかもいらっしゃるけど、みんなシンガーソングライターでしょう? ロッドやブライアン・フェリー、あるいは(ビング・クロスビーの)『Just a Gigolo』をカバーしたデイヴィッド・リー・ロスみたいに、ユーモアもあって、なおかつジャズでもなんでも自分のスタイルでスタンダードボーカルアルバムにしてしまえる人って、なかなかいない。

ユカイ:言われてみると“男らしい歌”って最近は無に近い存在だよね。演歌以外は。

川原:その演歌も最近は女歌を男が歌うスタイルが多いからね。ポップスでも草食系の優しい歌が主流で、「黙って俺についてこい」みたいな男の歌はほとんどない。で、あるとき打ち合わせでサンミュージックさんに行ったら、ユカイくんのプロフィールが置いてあって。「どうして?」って訊いたら「今はうちの所属なの」と。それで「是非やらせてほしい」とオファーしたんです。

ユカイ:自分としては川原さんが声をかけてくれたことはすごく嬉しかったんですけど、すでにいろんなカバーアルバムが出ていたので「今からやって大丈夫なんですか?」と訊きましたね。「男歌をやろうよ」と言われたときも、正直、最初はピンと来なかった。でも巷では女の歌を男が歌うみたいな、そういうカバーが全盛だったから、全く逆の発想もいいんじゃないかと。多分、川原さんのマジックにかかったんだろうけど(笑)、誰もやっていないことに挑戦しようという気になっていったんです。

――川原さんはプロデューサーとして、ユカイさんのどこに魅力を感じますか?

川原:ロックって、アイドルとは違った意味でのビジュアルの良さというか、歌っていてサマになるカッコよさが絶対に必要だと思うんです。エルヴィスやビートルズが出てきたときも、見た目の良さは音楽を表現するうえで大事な要素だった。僕はユカイくんのことをもともと役者だと思っていたんだけど、彼らに通じるカッコよさを感じましたね。

――ユカイさんは2004年にもソフィア・コッポラ監督の映画『ロスト・イン・トランスレーション』に出演されています。

川原:あの映画は出張帰りの飛行機の中で観たんだけど、改めて「いい役者だな」と(笑)。俳優さんでも歌が上手い人はいっぱいいて、たとえば松田優作さんは歌う姿もサマになる。俳優もロックミュージシャンも言ってみればパフォーマーだから、共通する部分があるんでしょうね。矢沢さんも以前、ドラマに出演されたことがありましたけど、歌も芝居もきっと同じように表現できるんですよ。僕はそういう人じゃないとカッコいい男の歌は歌えない気がしてね。石原裕次郎さんや小林旭さんは映画でも歌でもカッコいい姿を見せてくれたじゃないですか。

――ではサンミュージックでユカイさんのプロフィールを見たとき、「彼ならそれができる」と?

川原:そうです。

――『Respect』シリーズは当初から三部作で行こうという構想があったのでしょうか。

ユカイ:第1作を作ったときに「3作まではやろう」という話を川原さんとしました。選曲に関しては、最初に挙げた候補の中で残していた曲もあったけど、基本的にはそのとき自分が歌いたいと思った曲が中心です。

――第1弾のキャッチフレーズは“男が泣ける男の歌”でした。

ユカイ:川原さんが考えてくれたテーマなんですけど、歌ってみたら、それがピタッとハマってね。特に『涙をふいて』(オリジナル:三好鉄生)には思い入れがあって、最初、川原さんに薦められたときは「俺には合わないんじゃねぇか」と思ってた。曲はもちろん知っていたけど、三好さんのイメージが強いじゃない? いがぐり頭で体育会系的な。でもやってみたらアレンジも全然違うし、寧ろ自分の歌みたいに思えてきて。カバーでこれだけしっくり来る歌に出会えたのは初めてだったんじゃないかな。

川原:作曲した鈴木キサブローさんも褒めてくれたね。

ユカイ:川原プロデュースのすごいところは、俺が今まで歌ってきた歌よりキーを落としたんだよね。ロックだと自分の限界までガーッと歌っちゃって、今まではそれがダイアモンド✡ユカイのいいところだと言われていたんだけど、『涙をふいて』ではキーをガツンと落として、低いレンジから歌っている。そのとき「あ、カバーって面白いな」と思えたし、新しいダイアモンド✡ユカイが見えたんです。

――何かが目覚めたと?

ユカイ:そう、自分には見えないものがあるんだということを改めて知ったというか。最近はこの曲が俺の歌だと思っている人がいるみたいでね。

川原:カラオケのアレンジも『Respect』のバージョンになっているしね。

――カバーの醍醐味じゃないですか!「オリジナルは超えられない」という定説があるなかで、そういう評価を得られるのは歌い手冥利に尽きますよね? 個人的には『情熱の薔薇』(オリジナル:THE BLUE HEARTS)にも衝撃を受けましたが。

ユカイ:あれは同世代の人が聴いたら「え?」と驚くアレンジだよね(笑)。みんなが期待していたのは多分ロック的なものだったと思うけど、聴いてみたら「これもいいね」みたいな。びっくりしたのは、当時2歳だったうちの娘が歌い始めたこと。しかもあのアレンジの歌い方で。「THE BLUE HEARTSの曲って子供にも分かるんだな」と思いましたよ。でもRED’Sの曲は歌えない。子供には難しすぎるんだね、きっと。

川原:THE BLUE HEARTSの曲は作りがペンタトニック(5音階)に近いんだよね。だから子供が覚えやすいの。すごくディストーションのかかったギターと、甲本さんのパフォーマンスがあるからロックになるけど、曲自体は子供の頃から慣れ親しんでいる童謡のメロディに近い。それはX-JAPANも同じだけどね。

――なるほど。とにかく私はリアルタイムでRED’Sやブルハを聴いてきた世代ですから「ダイアモンド✡ユカイが『情熱の薔薇』を歌う」と聞いただけで大興奮で(笑)。

川原:お客さんにとっては、たとえば明菜が聖子の歌を歌うのと同じことなんでしょうね。但し、そういうカバーは同じ表現をしたらダメ。それでは「やっぱり甲本ヒロトの方がいい」となってしまう。だから2人で話し合って、全く違うものにしたわけです。でもアレンジはちょっとやりすぎたかな(笑)。

ユカイ:「強烈だなぁ」と思いましたよ。でも最初は「これ歌っちゃっていいのかな」と。川原さんは自信満々で「サイケだよ、ユカイくん」なんて言ってたけど(笑)。

ソロ4

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