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特集 上地等 ソロアルバム『48』 スペシャル・インタビュー

特集 上地等

ソロアルバム『48』 スペシャル・インタビュー

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BEGINのピアノ&ヴォーカルの上地等が48歳にして初のソロ・アルバムをリリースした。タイトルは『48(よんぱち)』。本作には多彩なサウンドに乗って、同世代の人たちに贈る応援歌が綴られている。飾らずありのままを表現した『48』から伝わってくる温かい肌触り。それはまさしく上地等の穏やかな人柄そのものだ。派手さはないけれど、聴けば聴くほど心に灯りをともしてくれる、そんなアルバムなのである。今回、満を持してソロ・アルバムを初めて世に送り出した上地等に話を訊いた。そこでひとつお断りを。個人的な話になるのだが、BEGINとの出逢いは彼らがイカ天(「平成名物テレビ 三宅裕司のいかすバンド天国」)に出場した頃で、かれこれ27年くらいの付き合いになる。ゆえにインタビュー中、時折互いにフランクな言葉使いになってしまうところはどうかお許しいただきたい。
では、初のソロ・アルバムについて真摯に語る上地等の生の声をお楽しみください。

こんなに自分をオープンにして裸にしたのは初めて
自問自答して過去を振り返ることも初めてだった

――去る3月20日に行なわれた両国国技館でのBEGINデビュー25周年ライブの時に、上地等さんがソロ・アルバムを出すことを比嘉栄昇さんが言ってましたよね。それを聞いて以来、どんな作品になるんだろうかとワクワクしながらソロ・アルバムを待っていたんですよ。

あはははははは、ありがとうございます。

――で、あのライブ終了後の中打ち上げでお逢いした時、等さんに「いつリリース?」と訊いたら、笑いながら「まだ全然決まってない」と言ったましたよね?(笑)。

そうそうそう、そうでしたね(笑)。あの時はあの場で(ソロ・アルバムを)出すってことを発表しただけであって、両国国技館のライブの頃はまだ1曲もなかったから、必然的にリリースも決まっていなかったんですよ(笑)。実はね、栄昇に乗せられた感があるんですよね、今回のアルバムを出すことになったのは。

――きっかけは栄昇さん?

 そう、栄昇、栄昇。完璧に栄昇。もちろん25周年ツアーが終わって、これからまた新たに仕切り直しっていう意味でいいタイミングだったということもあるんだけど。実は栄昇からソロ・アルバムを最初に薦められたのって、2、3年前ぐらいだったんですよ。で、その時は話が流れて、それで去年ぐらいからまた「等、アルバムを作れよ」って栄昇が言い始めて。「お前のソロ・アルバムを俺は聴きたいと思っているよ」って。でも、正直言うと、自分の中ではソロ・アルバムを作るっていうイメージが全然なかったんだよね。

――全くなかったの?

うん。なかった。人のプロデュースとか、楽曲を提供するとかアレンジを頼まれるとかは、自分の中で想像できるんだけど、ソロ・アルバムなんて全く想像できなかったから。それで去年あたりから栄昇にちょくちょく言われ出した時に、アコーディオンでインストとか、ピアノでインストっていうのはなんとなく思ったりもしたけど。だからといって具体的につかめてはいなかった。だけど、栄昇やマネージャー陣たちにソロ・アルバムを作れ作れって言われ続けている中で、こっちもだんだんとその気になってきたというか(笑)。

――BEGINのソロ・アルバムというと、これまでに栄昇さんが『とうさんか』(’06年)や『えいしょうか その一』『えいしょうか その二』(’14年)を、優さんは下地イサムさんとのユニット、シモブクレコードで『Looking South West』(’09年)をリリースしていましたよね。等さんも人のプロデュースをしていたけど、2人のそういう活動を見てて焦りとはなかったんですか?

ない、ない。全くなかったですね。俺は人のプロデュースをやるのは凄く好きですよ。一緒にアルバムを作っていくってことに関しては楽しいし。でも、自分が表に立って歌うなんてことは考えもしなかった。だから、優みたいに誰かとユニットを組んでアルバムを作るのは想像できるけど、一人でやるっていうイメージは全くなかったなあ。だから、俺もやらなきゃ!みたいな気は全然起きなかった…あはははは…申し訳ないけど。

――(笑)そんな等さんが今回ようやくやる気を起こしたと。

そうですね(笑)。でね、俺がソロ・アルバムを作るんだったら、やっぱり<歌>だなって思ったんですよ。アコーディオンやピアノのインスト集じゃなくて、<俺の原点は歌だよな>って。もう何回も話していると思うけど、俺には9つ上の兄貴がいて、その兄の影響でフォークソングを幼稚園ぐらいの時からずっと聴いて育ってきているから。兄貴の部屋のラジカセから流れてくる…例えば、NSPとか岡林信康さんとか佐渡山豊さんとかね。そういう音楽を聴いてきて、小学校1年生の頃には曲の意味なんてわからず、そういう人たちの曲を口ずさんでいたから。だから、音楽が好きっていう根本に戻った時にフォークソングが自分の原点だってことを再確認できたわけ。で、ソロ・アルバムを作るんだったら、<歌のアルバム>だって。<歌>を自分の中で真剣に歌う、そんなアルバムが出来たらなってなんとなく思っていたんですよね。

――そしてこの『48』が生まれた。栄昇さんに乗せられたのは大正解でしたね(笑)。

うん、大正解!優も勧めてくれていたけれど。やっぱり、きっかけは栄昇だから。アイツはやっぱりなんかね…うん…なんか凄いよね(笑)。

――うんうんうんうん(笑)。しかも心地良く乗せられた、と。

うん、そうなんだよね。なんかわかるでしょ、凄いっていうこのニュアンス。

――ええ。言葉にするのは難しいけど、わかる(笑)。

ねっ。上手く乗せられたなっていうのは本当にあるなあ。

――で、曲作りを含めて制作に入られたのが…。

4月。4月から始めて6月頃にはある程度見えてきたって感じでしたね。もうね…4月5月が地獄だったね。うわーっと集中しての曲作りで。特に大変だったのは言葉探しだった。

――歌詞ね。

そう。曲とアレンジに関して苦労はなかったんだけど、言葉がね…。使った時間でいえば、7割は詞を書いてたかな。あとの2割は曲を書いて、あとの1割でアレンジ。

――歌詞を書く前にアルバム全体のテーマは決めていたんですよね?

テーマは、‟自分も含めた同世代以上の…大人のための応援歌集”っていう。実はね、そのテーマって、このソロ・アルバムの話が出るずっと前から自分の中にあったテーマだったんですよ。いつかそういう歌を作りたいなと思っていた。なんでそう思ったかというとね、俺らの地元の石垣の同級生を見て、本当に素晴らしいなって思うわけ。石垣に帰ると毎回、同級生たちと呑むんですね。40代後半のおっさんたちが夜、集まってきて酒を呑んでは、相変わらず高校時代の話で盛り上がるんですよ(笑)。あの時はああだった、この時はこうだったって、100回以上は聞いた話なんだけど、それを毎回大笑いしながら呑んで楽しい時間を過ごすんだけど。

――ええ、ええ。学生時代の友達と呑むと大抵そういうふうになりますね。

だけど、昼間のそいつらの顔はそうじゃないわけ。働く男の顔になっているんですよ。40代後半になると、会社でも役職についていて責任のある立場だったりするでしょ。市を動かしているような立場にいる連中ですよ。市の行事があるとそいつらが仕切ったりしているわけですよ。家族のために頑張って働いている姿を見て、<こいつらの応援歌を何か書きたいな>って思ったんですよね。その時はソロ・アルバムで…なんてことは考えてはいなかったけど。

――それがソロ・アルバムのテーマの源流。

ええ。でね、<応援歌>にしようと決めた時にちょっと恥ずかしいかなって思ったりもしたんだけど。でも、48歳の俺が今、同世代に向けて表現できる最大の言葉だと思って<応援歌>に決めたんです。それでアルバムのタイトルを『48(よんぱち)』にしたんですね。そういうことがぼんやりとあって、栄昇に勧められてソロを出すことを決めた時にテーマはコレだ!って。で、テーマは決まったはいいけど、さっきも話した通り言葉を探す作業が大変だったわけで。もちろん、こういうことを歌ったらいいなっていうことは幾つかあったんだけど、それをどう言葉で表現していくかってことに凄く時間がかかったんですよね。

――ヘンな言い方ですけど、アルバム全体を通して‟まんま等”だなと。

あはははは…そう?

――ええ。メロディーやサウンドから等さんの音楽的ルーツが見えるし、歌詞は今の等さんが正直に表現されている。歌も含めて穏やかで誠実な感じがアルバム全体から漂ってくるわけですよ。そういう意味での‟まんま上地等”ということなんですけど。それが特に表われているのは歌詞の世界なのかなって。

ありがとうございます。やっぱり、カッコつけてどこかで聞いたような言葉を書いてもそれは俺じゃないからね。2~3行書いたら、嘘っぽいのがバレるわけよ(笑)。なんか違うなって。絶対に普段自分が使っている言葉じゃないと無理だなって、今回書きながらつくづく思いました(笑)。

――だから、素のまんまっていう。

そう!本当にそういう(自分自身の)言葉を散りばめたつもり。だから、こんなに自分をオープンにして、こんなに裸にしたのもたぶん今回が初めてだと思うんですよ。あんなにも自問自答して、過去を振り返ることも初めてだったんじゃないかな。

――で、自問自答して何がわかりました?

昔の自分を忘れていたっていうか(笑)。栄昇が酔っ払って時々言うことがあるんだけど…。「お前はそんなヤツじゃないだろ!」って。

――その‟そんなヤツ”はどんなヤツで、もともとはどんなヤツだったと?(笑)

あははは…。栄昇が言うには「等、お前は俺の後ろでピアノを弾いて、俺のMCの時に‟うんうん”と頷いているヤツじゃないだろ、ホントは」って。「俺が知っているお前はそうじゃない。学生の頃だったら、ステージに上がって率先してみんなを楽しませるようなヤツだった」って。栄昇が言うには、ですよ。

――はい。

「それが今、全然活かされてない」って(笑)。

――そういえば、そんなことを聞いたことがありますね(笑)。

あるでしょ(笑)。ほーんとによく言われる(笑)。マネージャー陣にもそんな話をよくしてるし。「等はあんなヤツじゃないよ」って。そう言われるとそうだったなと(笑)。デビューして25年、26年経って、その過程の中で俺は自然とプレイヤーになっていたのかなって。キーボーディストの…ピアニストの性格になっていたんじゃないかなって思うんですよ。それはきっと優もそうで、優は自然とギタリストに…ギタリストの性格になっていったんじゃないかなって。バンドマンとしてね。それを栄昇にうまくバラされたというか。「違うよ、コイツ。そんなヤツじゃないよ」って。

――それらを踏まえて改めてもう一度、伺います。今回のアルバムを通してわかったことって?

単純に俺は本当に歌うことが好きなんだなって思った。もちろん、ピアノを弾くこともアコーディオンを弾くことも好きだけど、歌うことも本当に面白いんだなって思ったことがひとつ。あとは…上手く言えないけど、俺はいたって普通のヤツだなと(笑)。音楽の世界でこういうCDを出しているけど、決してキラキラした自分じゃないし、石垣島から出てきた田舎もんっていうのは確認できたかな(笑)。歌詞を書いてそれがよくわかったから。《話も上手いとは言えない》って歌詞を書いたけど、俺はホントに自分の気持ちをパッと言えるほど上手じゃないと思うわけ。

――「レモンチューハイ」でそう歌っていましたね。

うん。《器用でもないし》っていうね。だから、なんかただのフォーク好きの田舎のおっさんかなって思いますね(笑)。

――おっさんって…(笑)。

あはははは…もう48歳なんだから、おっさんですよ。さっきも言ったけど、やっぱり、カッコつけたら言葉が続かなくなるし…。本当に正直になるしかないなと思って歌詞を書いたから。大畑さんが言ってくれたみたいに、素のままのアルバムかなって。

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