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猪又孝のvoice and beats

泉まくら 3rd Album『アイデンティティー』Interview

泉まくら

3rd Album『アイデンティティー』Interview

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教室にいる女生徒が全員メイクした男性だったということで話題になった昨秋公開の資生堂CM「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」。SPANOVA feat. 泉まくら&Itto名義となる同作のCMソング「Wanna」を歌い、さらなる注目を浴びた泉まくらが、前作『愛ならば知っている』から約1年半ぶりとなる新作『アイデンティティー』をリリースした。泉まくらと言えば、やりきれなさや虚しさ、寂しさが漂う詩情が特徴。主義主張が弱めで、ためらい、戸惑い、“いつもどこか宙ぶらりん”みたいな主人公を描くことが多かった。けれども、本作で多く描かれているのは、葛藤を経て芯の強さを得んとしている女性たち。不器用さも引っくるめて今の自分を認め、何かを決意した女性たち。それは泉まくらの内面にも起きた変化なのか? 制作途中で筆が止まった時期もあったという本作に込めた思い、制作の舞台裏をたっぷり語ってもらった。

──今回のアルバムは、いつ頃から制作に着手したんですか?

メッチャ早かったです。『愛ならば知っている』を出した直後から着手はしていました。

──昨秋、限定EP「P.S.」を発売しましたよね。ああいう新曲+リミックスの企画盤はこれまで出したことがなかったですが、なぜ出すことに?

『愛ならば〜』を作り終わって最初に取りかかった曲が「P.S.」なんです。『愛ならば〜』は当時、自分の中で最高だなと思ってたんですね。もしかしたらこれ以上いいアルバムは作れないかもしれないと思うくらい気に入ってて。だから、絶対それを超えたくてメッチャ気合い入れて作ったんです。ただ、次のリリースまで時間が空きそうな感じになってきて……。それで「P.S.」を先行で出しておこうとなったんです。

──「時間が空きそうになった」というのは、ひょっとしてスランプで筆が止まっちゃったとか?

そうなんです。もともとnagacoさんのトラックは6曲くらいあって、他の方からのトラックと合わせてアルバムにする予定だったんです。で、nagacoさんのトラックはわりとトントン拍子に筆が進んで、他の方のトラックも手を付けてたんですけど、熊本の震災があって、それからふっと書けなくなって。

──今年4月のことですね。

そこまでにnagacoさんのトラックは、彼が住んでる大阪に行ってレコーディングしていたんです。だから「今回のアルバムはパッとまとまりそうだね」なんて言ってたんですけど、地震があって、どんなペースでやっていけばいいのかわからなくなっちゃって。あの頃はなんだかずっと胸がざわざわしてました。

──結局、作業はどれくらい止まったんですか?

2ヶ月くらいですね。もうダメだと思って、Kussyさん(術ノ穴代表)に「ちょっと書けないです。進まない」と伝えたんです。同じタイミングでnagacoさんにも相談したら「いや、書かないとダメ。書くべき」って言われて、1週間も経たないうちに新しいトラックを作って送ってくれたんです。それを聴いたら、すぐ書けたんですよ。それが「さよなら、青春」なんです。

──曲調や音色に救われた感じがあったんですか?

nagacoさんと顔を合わせてレコーディングするのは、今回が初めてだったんです。そこで2日間くらい一緒に過ごしてからの「書かないとダメだと思う」は、なんか違ったんですよ。今までとは違う距離感で言われた「書きなさい」と、そのタイミングが良かったんだと思います。信頼が生まれたというか、「この人が言うんだったら書かなきゃいけないんだろ、それは今なんだろ」みたいな。

──「さよなら、青春」は震災をテーマにした歌じゃないですよね。

そうです。地震が起こる前の段階で、なんとなく勝手に、nagacoさんの曲は、これはこれでまとめて出した方がいいんじゃないかと思ってたんです。でも、「よし、これで出そう」というまでの決心はなくて。でも、「さよなら、青春」のトラックをもらったときに、再び時間が流れ出したような感覚があったんですね。それまで自分が書きたかったであろうことを書けた感じがして「あ、自信持って出していい」という気持ちになって。だから、今回はnagacoさんだけのトラックになってるんです。

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ナビゲーター

猪又 孝 / TAKASHI INOMATA

1970年生まれ。音楽ライター/エディター。小4のときにビートルズ「HELP」にヤラれ、19歳のときにロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズに心奪われるも、22歳でいきなりサザン・ソウルに開眼した、我ながら雑食家。現在は邦楽のソウル/R&B/ヒップホップを中心に執筆。でも、カワイイ& カッコイイ女の子もダイスキ。オフィシャル取材などで馴染みがあるアーティストは、加藤ミリヤ、Zeebra、SKY-HI、東方神起、三浦大知、RIP SLYME(五十音順)等々。

 
 
 
 
 
 
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