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猪又孝のvoice and beats

泉まくら 3rd Album『アイデンティティー』Interview

泉まくら

3rd Album『アイデンティティー』Interview

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──禍を転じて福となす、じゃないけど、結果、nagacoさんの単独プロデュースにより、まとまりが出ましたよね。

自分の中でもまとまったなという手応えはありました。今回は、最初から、nagacoさんの曲でやりたいことと、他の方の曲でやりたいことを自分の中で完全に分けてたんですよ。

──nagacoさんのトラックでやりたかったこと、というのは?

nagacoさんの曲って、トラックだけで聴いても完成してるし、リズムを揃えてラップすると絶対映えるんですよ。だけど、それだとnagacoさんの音楽に対して負けてる感じがするんです。“nagacoさんの音楽を聴かせるためのラップ”みたいになるから、もっとnagacoの音楽とまくらの音楽が交差してる感じにしたいと、いつも思っていて。あと、nagacoさんの音楽はやさしいし、きれいなんですけど、すごい鋭い感じがするんですね。自分の内面を見られてる気がして、歌詞に自分の真ん中、核の部分が出る感じがするんです。だから、たぶん、nagacoさんだけのトラックにしてもまとまったんじゃないかと思うんです。

──今回の制作で印象深い曲は?

「通学路」と「さよなら、青春」です。「通学路」はnagacoさんがすごく気に入っていて。イントロが「降臨!」って感じがして(笑)、nagacoさんと何回も「イントロがやばい」って盛り上がってたんです。この曲の聴きどころが10あるとしたら、「通学路」はイントロが7.5くらい行きますね。「さよなら、青春」は、全体的に気に入ってます。

──「通学路」は甘酸っぱいノスタルジーを喚起させられる曲でした。

「通学路」は、実体験じゃないんですけど、完全に学生の頃のイメージ。この曲は、“点”を書くことをめざしたんです。改札でバイバイって言ったのに振り返ったらまだいる、みたいな。そういういじらしい子っていたじゃないですか。反対に、そういうのをうざいと思ってる子もいたりとか。そういう、ひとりとひとりの関係を結ぶ点を描きたくて。その“点”からイメージが広がっていくような……水にチョンとインクを落としたときにフワーッと波紋が広がっていくような曲を書きたかったんです。

──本作を聴いたとき、ひとりの女性が過去から現在までの心境を振り返ってるような印象を受けたんですが、その辺はどうですか?

私の曲には、意識的にせよ、無意識的にせよ、一曲一曲に主人公がいるんです。そうして作った曲をまとめて聴くと、ひとりの女性の視点にも見えるだろうなとは思いますけど、誰かひとりの過去と現在を書こうとしたわけじゃないです。

──とはいえ、今回は、成長するにつれて芯が強くなってきた、しゃんとしてきた女性が多く描かれてるなと思ったんです。それはまくらさん自身にも重なることなのでは?

大人になるにつれて、自分の中でいろんなことに結論が出てきたんですよね。それが表れているんです。

──その結論って、「ダメならダメでいい」みたいな感じですよね。

そうなんです。何回考えてもやっぱこうだわ、っていうような感じ。「ラップのことば2」でインタビューしてもらったときに、「(自分に)生まれてきた時点で、自分にしかできないことは8割ぐらい終わってると思う」と話してたんですけど、最近は9割行ってるんじゃないかなって思いますから(笑)。そういう感じが歌詞にちょいちょい出てるんですよね。

──「枕」の歌詞では、《私は私》と言い切ってますしね。「日々にゆられて」では《誰かに「アナタは弱い」と言われる筋合いもない ほっといてちょうだい!》ときっぱり歌ってるし。

前は「弱いとか言わないで」みたいな感じだったんですけどね(笑)。

──だから、以前書いていたような“私、誰なんだろう、どうしたらいいんだろう”感がなくなってきたなと思って。

今回は「んもう、うるさい!」みたいな気持ちが出てるんですよ。「さよなら、青春」も「青春、青春、言ってんなよ」みたいな(笑)。

──書き出しでは《青春はちゃんと終わる》と断言してるし。

「あの頃良かったよね」みたいなのって、大人が言うと下の世代の人たちには嫌味っぽく聞こえたり、「また言ってるよ」って聞こえたり、同世代の人に言われると変に励まされたりして、なんか“人は一生輝いてないといけない”みたいな呪縛があるなと思ったんですよ。その呪縛から私みたいに考えてる人たちを解き放ちたかったんです。

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ナビゲーター

猪又 孝 / TAKASHI INOMATA

1970年生まれ。音楽ライター/エディター。小4のときにビートルズ「HELP」にヤラれ、19歳のときにロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズに心奪われるも、22歳でいきなりサザン・ソウルに開眼した、我ながら雑食家。現在は邦楽のソウル/R&B/ヒップホップを中心に執筆。でも、カワイイ& カッコイイ女の子もダイスキ。オフィシャル取材などで馴染みがあるアーティストは、加藤ミリヤ、Zeebra、SKY-HI、東方神起、三浦大知、RIP SLYME(五十音順)等々。

 
 
 
 
 
 
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