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寺嶋由芙 Special Talk Session 寺嶋由芙×トミヤマユキコ

寺嶋由芙

Special Talk Session
寺嶋由芙×トミヤマユキコ

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古き良き時代から来ました! まじめなアイドル、まじめにアイドル!──をキャッチフレーズに、群雄割拠のアイドル・シーンで孤軍奮闘を続けてきた“ゆっふぃー”こと寺嶋由芙。この春からは、秋葉原のライヴ・スペースを拠点にでんぱ組.incや妄想キャリブレーションといった人気グループを送り出しているディアステージにマネージメントを移し、改めて臨戦態勢を整えたところ。そんなゆっふぃーがソロ始動から3年、ついにファースト・アルバム『わたしになる』をリリースすることになりました。ここには、これまで発表してきたシングル群のほか、ちょっぴりレイドバックしたバンド・サウンドに乗って歌うタイトル曲「わたしになる」、夢眠ねむ(でんぱ組.inc)作詞の電波系テイストな「オブラート・オブ・ラブ」、“ゆるキャラ”の命名者でもあるみうらじゅん作詞の「ゆるキャラ舞踏会」、初のミディアム・バラードに挑んだ「101回目のファースト・キッス」、ライヴでの人気曲「ぜんぜん」のアンサーソング「まだまだ」など自身の可能性を押し広げた新曲群で、寺嶋由芙の“これまで”と“これから”をしっかりとパッケージ。もはや“あっぱれ!”としか言いようのない作品の完成を祝して、MUSICSHELFでもスペシャルなトーク・セッションをご用意しました!──というわけでお招きしたのは、書評を中心とした執筆活動をする一方、早稲田大学非常勤講師としてサブカルチャー関連の講義も行っているトミヤマユキコさん。ゆっふぃーが早稲田大学在学時に授業を受けた“寺嶋さん”“トミヤマ先生”の関係でもあり、以降もお付き合いを続けている(ゆっふぃー曰く)師匠ならではの目線で、アイドル・寺嶋由芙を掘り下げてみようと思う次第ですので、さっそく!

トミヤマユキコ
ライター、大学講師。「文学界」「ESSE」「女子SPA!」などで、ブックレビューやコラムを執筆するライターであり、早稲田大学などでサブカルチャー関連講義を担当する研究者としての顔も持つ。主著に年間200食のパンケーキを食べ書き上げた『パンケーキ・ノート』がある。

 

トミヤマ先生 ファースト・アルバムが出るんですよね、おめでとうございます!

寺嶋さん ありがとうございます!

トミヤマ先生 本当に感慨深いですよ。意外と付き合いが長いですから。

寺嶋さん 先生の授業を取ったのが4年生の時だから、3年ぐらいですかね。

トミヤマ先生 あの頃は寺嶋さんがちょうど激動の時期でね。

寺嶋さん ひゃあ!

トミヤマ先生 ひとりで活動を始めた時期で、苦労しつつもちょっとずつ輝いていくっていうのをわりと近くで見ていて。

寺嶋さん そのあいだに先生もご結婚されて!

トミヤマ先生 そうだった!(笑)

──お互い、人生の転機を迎える頃に出会ってるわけですね。

トミヤマ先生 そうですね。寺嶋さんの激動っぷりを遠巻きに見つつ、パンケーキの話をするイヴェントで会うって感じですね。今日は久しぶりに会いましたけど、ますますピカピカになって、ねっ。

寺嶋さん いやいやいやいや(照)。

トミヤマ先生 やっぱり教え子の活躍は教員のよろこびなんですよね。寺嶋さんは教え子のなかで今いちばんキラキラしてるし、うれしいなあ……って、なんか、孫を見るおばあちゃんみたいだけど(笑)。

寺嶋さん ありがたい限りです。

トミヤマ先生 どうですか? アルバムが出てうれしいでしょ!

寺嶋さん あー、もう、なんかホッとしてます。やっとだなっていう感じがあって。シングルのリリースはいろいろ重ねては来たけど、1枚でまとめて聴いてもらえるものがずっとなかったので、私がこの3年間やってきたことをわかってもらえるものが出来たから、良かったなあと。

トミヤマ先生 うれしい&ホッとした、って感じなんですね。

寺嶋さん とっ散らかしたままやめていくわけにはいかないぞ!っていう気持ちがあったので、ちゃんと一回まとめて、これで次のことをがんばれるっていう。

トミヤマ先生 一枚一枚のシングルも名刺代わりではあるけれど、アルバムってちゃんとした名刺って感じだし、新しいファンとの出会いもあるでしょうね。ライヴではワンマンも経験しているけど、それとはまた違ったうれしさがありそう。

寺嶋さん ライヴとかって瞬間瞬間だけど、作品って自分がいなくなっても残る……なんかもうすぐ死んじゃうみたいなこと言ってるけど(笑)、自分がそれまでやってきたことが形になって、もしかしたら何十年か経ったあとに私のことをぜんぜん知らない人がたまたま手にしてくれるとかも起こり得るから、物を書いてる方もそうだと思うんですけど、自分が書いたものとか残したものが、その時に出会えなかった人にもあとから出会えることができたりするので、いろんな意味で広がるなあと思ってます。

トミヤマ先生 一気に広がりますよね。なかなかライヴに来られない人とかも、なんなら100年後の人も、アルバムがあれば身近に感じられるわけだし、幸せなことですよ。アルバムのコンセプトとかって、どのぐらい関わったの?

寺嶋さん たぶん、アイドルとしてはかなり関わらせてもらってるほうだと思います。結構、作り手さんが出したものを「ハイ!」って歌うだけの人のほうが多いと思うんですよ、アイドルって。とくにグループとかだと、全員の意見を全部吸い上げられないだろうし。ただ、私はソロっていうこともあるし、ソロ活動のはじまりが手作り状態から始まったということもあって、その時から関わってるスタッフさんもいるんですね。わりと話し合いをしながら「こういう曲が欲しい」とか自分でも言えたし、曲が出来上がった時も曲順を一緒に考えて、聴きながら「どっちがいいかね?」みたいな。

トミヤマ先生 じゃあ、プロデューサー・寺嶋由芙的な部分も反映されてるわけだね。

寺嶋さん かなり意見は聞いてもらってると思います。

トミヤマ先生 出役としての自分と、プロデューサーとしての自分ってどういうふうに分けてるの? たとえばわたしはライターで、たくさんの人の原稿を読んで欲しいとは思うけど「どういうライターに見えてるんだろ?」ということまでは考えないタイプ。他人に委ねがちっていうか。でも、寺嶋さんの場合、自分というアイドルがどう見られてるかっていうところまでしっかり考えて、曲調とか曲順とか「こういう感じの歌詞を書いてほしい」っていう意見を出す。頭のなかどうなっとんじゃい!?って思いますよ(笑)。

寺嶋さん たぶん、見る側から考えることのほうが多いです。

トミヤマ先生 へえ!

寺嶋さん Twitterとかでもそうなんですけど、私から何か言いたいっていうのはそんなになくって。

トミヤマ先生 おおっ、そうなんだ。

寺嶋さん すごく伝えたいことがあって歌ってますとかだったら自分でもっと歌詞を書くし、でも、そういう感じではないから、むしろ寺嶋由芙っていうアイドルをどうやってイジっていくのが楽しいかっていうのを考えてるというか。

トミヤマ先生 あくまで“素材”なんだね。

寺嶋さん そう、素材として楽しんでももらいたいと思うし、作家さんたちにも、寺嶋由芙にはこういう歌詞を書いてみたいとかこういう歌を歌わせたいとかっていう遊びの要素になればいいなと思ってますね。そう言いながら、本当の私はこうなのよっていう辛い気持ちも抱えてないです(笑)。

トミヤマ先生 むしろ自分という素材で遊んでもらえるのがうれしいってことだよね。

寺嶋さん うれしいし、自分が考えても見なかった方向に転がったりとか、こんな曲を歌うとは思わなかった!っていう曲をいただけたりすることもあるので、そうやってビックリしてることを、いかに必要要素だったかのように見せていくかっていうのも結構楽しい。起こっちゃったトラブルとかも、こういうことがあったから素敵ですって見せるのがだんだん楽しくなってきてます。

ハプニングすら“素敵”に変える、ゆっふぃーの頼もしさが伺えた好エピソードがコチラ→「淡路島ガールズ・ポップ・フェスティバル前夜祭ヾ(゚ω゚)ノ #淡路島で寺嶋」(公式ブログ〈ゆふろぐ〉より)

トミヤマ先生 なるほど……昔からだと思うんだけど、寺嶋さんは受け身を取るのがすごくうまいよね。基本的に全てが寺嶋由芙の“受け身芸”みたいなところがあると思うんですよ。ファンから来るTwitterのリプライとか、仕事上のトラブルとか、楽曲のこともそうだし、「いい感じの球を投げてくれたから捕ります〜」っていうタイプじゃなくて、「投げてくれるのであれば、どんな球でも捕りますし、投げ返しますけど?」っていう。

寺嶋さん はい、それが楽しいです。

──学生時代からそういうスキルを見せていたんですか?

トミヤマ先生 そうですね、寺嶋さんが私の授業を取ってたときに、レポートについて質問しに来たんですが、それは今の話に近かったかも。働く女性が出てくる漫画を取り上げて、その女性の労働について論じなさいっていうレポートを課したんですよ。そしたら寺嶋さんがやって来て、「たとえばアイドルっていうのは労働に入りますか?」と。アイドルの女の子が出てくる漫画があるから、それを取り上げて労働っていうところに的を絞ってレポートを書いてもいいしょうか、って訊いてきたんですよ。たぶん「女性の労働が描かれている漫画について論じなさい」っていうわたしの球を彼女なりに拾って、「私だったらこう投げ返すかなあ」みたいなことを考えて、彼女のなかにはいくつかの案があったんだろうけど、そのひとつがアイドルだった。とてもいい受け身だと思います。

寺嶋さん もう、めちゃくちゃですよ(笑)。

トミヤマ先生 あはは。日本文学専攻なのに、ゆるキャラのことで卒論を書くっていうのもある意味めちゃくちゃだけど、それはいいめちゃくちゃだからね!

寺嶋さん いやいやいや(照)。でも、アイドルの漫画を題材にしていいですか?って訊きに行ったのは、アイドルが労働なのかどうかがわからなかったからなんです。当時からアイドルとして仕事をしてたけど、ちゃんとES(エントリーシート)とか書いて就職していく人たちとは違うから、どこかでちゃんとした仕事じゃないんじゃないかって、そう見られてるんじゃないかって思ったんです。そこで訊きに言ったんですけど、構図として女性の労働としてはあり得る形だったし、それでOKって先生は言ってくれたし、先生の授業を受けたり大学でいろんな話を聞いたりしたことで、やりたいことを続けていくのはどうしたらいいか?みたいなのは、すごく学んだと思います。

トミヤマ先生 まじめだねえ。

 

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