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澤田かおり 2nd Album 『FRONTIER』Special Interview

澤田かおり

2nd Album 『FRONTIER』Special Interview

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井上陽水やMISIAがラブコールを送ったことで脚光を浴び、昨年11月にメジャー・デビュー・アルバム『Songwriter』をリリース。美しく透き通った歌声とシンプルでチャーミングなメロディー、そしてアラサー女性の人生観や心模様に寄り添う歌詞で人気を集めているシンガー・ソングライター、澤田かおりが待望のセカンド・アルバム『FRONTIER』をリリースした。すべての楽曲をここ半年ほどで書き下ろし、「旬な気持ちが詰まっている」と語る本作には、前作以上に剥き出しな彼女の姿が。サウンドは洗練と遊び心を兼ね備え、新たな曲調も聴かせる意欲作となった。エモーショナルなピアノの弾き語りライブや、裏表のない性格が垣間見られるフランクなトークでも人を惹きつける彼女は、一体どんな思いで本作をつくりあげたのか。曲作りに対するこだわりや、来春まで行われる全国フリーライブ・ツアーの話も含めて、たっぷりと語ってもらった。

──新作は前作『Songwriter』以上にヴィヴィッドな色合いを感じるアルバムになったと思うんですが、どんなものをめざして作ったんですか?

前作はタイトルにも表れているとおり、自己紹介をしようと思って作ったアルバムなんですけど、そうして作った作品を世に出す辺りから「さて、自己紹介をしたあとは何を話そうか」と考えていて。自己紹介よりそっちの方が需要だなと思ったし、今度は自分という人間をもっと深く知ってもらったり、自己紹介して出会った人たちとの関係をより深められるような作品をつくりたいなと思ったんです。

──『FRONTIER』というアルバム・タイトルはどんなところから?

タイトルを考えている頃、もう少しで〈なでしこリーグ〉に昇格という女子サッカーチームの方とプライベートでお会いする機会があって。そのときに、今はスポーツにせよ政治にせよ、いろんな分野で、女性も自分が輝ける場所を見つけて切り開いていこうとしているなと思ったんです。話を聞くと、女子サッカーの人たちってものすごい悔しい思いをしてるんですよ。

──女子リーグには、まだプロ契約してる選手が少ないですからね。みなさんバイトをしたり、所属会社の業務をこなしながらサッカーをしてる。

そうなんですよね。みんな不安を抱えてるけど、サッカーが好きだとか、これが自分の道なんだと思って続けてる。そのときに「これは自分で決めた道なんだから」というふうに覚悟を決めた人は、すごく強いし、そういう気持ちを周りに見せていくと自ずと道が開けてくるんじゃないかと思ったんです。私も音楽で達成したい目標はあるし、なによりも自分自身でその道を開拓していくんだという気持ちを持っていなくちゃいけないなと思って。それで『FRONTIER』というタイトルに決めて、最初にそのタイトル曲をつくったんです。

──そのときの思いを新鮮なままパックしようと。

そう。その曲ができてしまったら、あとは自分をすごく解放できたというか。もう核があるから、あとは自由にやろうと。なので、電車に乗りながら考えたこととか、自分が怖いと思うものとか、うだつのあがらなかった男のこととか、日常のいろんなことから自由にネタを探していったんです。

──アルバムを作っていく上で心掛けていたことは?

前回は「はじめまして……」みたいな“はにかんだ”部分があったんですけど、今回は曲のタイトルにしても、歌う内容にしても、とにかく思ってることをぶつけていこうと考えていました。スタッフとの打ち合わせのときにすら言うのが恥ずかしいことも作品にしちゃおう、みたいな。

──もっと裸になろう、だと言い過ぎですか?

それに近いと思います。スタッフは男性が多いんですけど、「今、すごい倦怠期で……」って男女のデリケートな問題も話しちゃったりとか(笑)。そういう話ってなかなか男性と共有しづらいけど、でも歌にしてしまえば女性は共感してくれるはずだと思ったんですよね。

──リード曲の「アイオライト」は、どんなキッカケで書いたんですか?

この曲はもともと「トワイライト男」という題名だったんです(笑)。言いたいことも全然違っていて、最初はうだつのあがらない男性のことを書いていて。私の周りにもいるけど、普段は全然連絡を寄越さないのに酔っ払ってるときだけ「何してんの? 遊ぼうよ」みたいな。そんな男って何なんだよっていう曲だったんですけど、煮詰めていくうちに、トワイライトって淡い光みたいな感じだから、これじゃ違うなぁと思って。ただ「トワイライト」という語感だけはいいなと思っていたので、違う言葉を探していたら「アイオライト」という言葉がひらめいたんです。

──アイオライトってパワーストーンのことなんですよね。

花言葉ならぬ石言葉みたいなのを調べてみたら、石自体が強い輝きを放っていて、誰かの道しるべになったりするとあって。最近は逞しい女性も多いから、そういう鉱石みたいな女性がいて、男性を引っ張るっていう構図も決して少なくないことだなと思ったんですよね。

──だったら、クズ男にフォーカスするのではなく、クズ男を引っ張っていく女性にフォーカスしようと。

そう。手のひらでコロコロしちゃう、みたいな。なので、トラックメイカーさんにトラックをオーダーするときも「峰不二子が夜中に首都高を乗ってる感じ」って。私自身は怖くて首都高は運転できないんですけど(笑)、颯爽としてる女性をイメージしたんです。自分の中にある憧れの女性を曲にしようと。

──ざっくりいうとこの曲は打ち込みによるビート・ミュージックで、本作の中でいちばんアーバンなサウンドですが、そういう曲調はこれまでやってなかったですよね。

もともとは好きなんですよ。なんですけど、どうしても「ピアノの弾き語りでやれること」っていうのを先に考えちゃうんですよね。そうなると、もうちょっとメロディアスなものとか、しっとりしたものとか、弾き語りで再現率の高いものになりがちなんですよ。だけど、今回はそこもこだわらなくていいと思ってたんです。曲自体カッコイイものがいいと思っていたので、「アイオライト」に限らず、踊れるようなものもやりたいと思ったんです。

──アーバンな雰囲気はタイトル曲にもあるし、「Dance With Me」と「痕」も新しいテイストだなと思ったんです。前者はソウル・ファンク調だし、後者は70年代ロック/ポップ風のちょっとラフなサウンドに仕上がってる。

そういう変化の理由はもう一個あって、前回の『Songwriter』は、言いたいことが先にはっきりとあったから、ほぼ歌詞を先に作っていて、それに見合うように曲を作っていったんですね。でも、今回は曲から作ろうと思ったんです。だったら、今までにないような曲調とか、好きだけど弾き語りということでなかなかやりにくかった曲調をやってみようと。なので、自分の中で今回は全然アプローチが違うんです。

──ダンス系の音楽も好きということですが、その辺だとどんなアーティストに影響を受けているんですか?

特定の誰かっていうのはいないんですけど、アメリカの音楽大学に行っていたときにプリンスとかアース・ウィンド&ファイアーとかモータウン系とか、そういうものを聴くようになって。そういうのをアンサンブルの授業でやるんですよ。それが楽しくて。ジャミロクワイとかアニタ・ベイカーとかルーサー・ヴァンドロスとか、いろんなものを聴くようになりましたね。

──資料にはキャロル・キングに憧れたとありますが、もともと澤田さんのルーツにある音楽は何なんですか?

小さい頃はディズニー音楽とかジブリ音楽が好きでした。ミュージカルも好きで「アニー」がすごく大好きだったんです。だから、歌で鮮やかに場面が変わるようなものが好きだったんだと思うし、子供心にそういう音楽の美しさに感動したんですね。その後、クラシック系の高校に進学したので、クラシックを勉強したんですけど、心のどこかで「クラシックもいいけども、もうちょっとポピュラーでわかりやすいことをやりたいな」と思っていて、それでアメリカに行ったんです。そこでリズムの面白さとか、もっと音楽にはわくわくすることがあるんだなって知って。それと同時に、弾き語りで歌うようにもなったので、キャロル・キングとか、ビリー・ジョエルとかを聴いたり。あとアリシア・キーズがバカ売れしてた時代だったからやっぱり憧れましたね。

──なかでもキャロル・キングが好きだったんですか?

そう。キャロル・キングというと70年代ポップスのイメージが強いですけど、私はどちらかというと彼女の人間性が好きで。おばあちゃんになった今のしわしわの笑顔は生き様を表してると思うし、最初は楽曲提供から始めたけど、自分で表舞台に出て歌うようになったというところも共感する部分があって。なので、キャロル・キングが好きと言ってるんです。

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