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特集 伊藤銀次 デビュー45周年とココナツ・バンク

特集 伊藤銀次

デビュー45周年とココナツ・バンク

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 特集 伊藤銀次(ココナツ・バンク)インタビュー後編

『THE COMPLETE COCONUT BANK』を中心に多岐にわたった伊藤銀次インタビュー。引き続き後編では、銀次さんにまつわる様々な話を訊いた。では後編をお楽しみください。

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――今回、『THE COMPLETE COCONUT BANK』を聴いて改めて思ったことがあったんですけど?

 何でしょう?

――それは久し振りにアメリカンなギターを聴いて心地いいなあと思ったんですね。久し振りというと大袈裟ですけど、最近はUK系のギターが聴くことが多いもので…。若いミュージシャンは特に多いですよね。もちろん私はUKも好きなので問題はないんですけど、ただやはりこういったアメリカンなギターを聴くと、ほっとする自分がいました。もしかしすると、それはそういう音楽に親しんだ世代ならではなのかもしれませんけど。でも、本当にここ10数年、UK系のギターを耳にする機会がグンと多くなっているのは事実ですね。

 うんうん。UK系のギターって昔はテクニックもあって良かったんだけど、結局、僕に言わせるとオアシスが全部変えてしまったと思うんだよね。

――ああ…!?

 というのは、オアシスが単にアコギの弾き語りで簡単に出来ることをドラムとベースをつけて、アンプを繋いでギターでジャーンってやっちゃったでしょ。あれだったらアマチュアの人にはすぐに出来るじゃないですか。

――俺にも出来る!みたいな(笑)。

 そうそう。それでわぁ~と広がっちゃったんですよ。もちろん入り口はオアシスでいいと思うけど、でも、「君たち、いつまでもオアシスみたいなレベルでやってるなよ!」って僕は言いたいんですよね。いつまでも自分が下手なまんまで、ジャカジャカしか出来ないなんておかしいじゃないですか、プロを目指すんだったらね、特に。それによく聞いたりするんだよね、「僕はヘタウマだから」って言うヤツ。なんだ、ヘタウマって。自分でヘタウマ言うな!って僕は思うわけ(笑)。

――ヘタウマって、自分で言うものではなくて人が言うものですよね(笑)。

 うん。「彼はテクニックはないけど、ヘタウマなんだよね、それがいいんだよ」って他の人が言うもんでしょ。「ニール・ヤングってヘタウマだからいいよね」って言って練習しないみたいな人、けっこういますよ。

――それが練習しない言い訳としての隠れ蓑になっているんですかね。

 どうなんだろうね…(笑)。僕は奥田民生君って凄いアーティストだと思っているんだけど、彼のギターを好きな人は彼のスタイルにすっかり騙されてると思うんですよ。彼の飄々とした雰囲気を見ると練習とか全然してないように見えるじゃない?でも、彼は凄く陰で練習していると思うんだよね、人に言わないだけで。ちゃんと練習している人は人前では全然練習してないような顔をして出てくるんですよね。それにすっかり騙されちゃう(笑)。

――ああ…(笑)。

 民生君を例に出しちゃったけど…でも彼はホントに凄いですよ。音楽的な洞察力と音楽の特徴を掴む力は並外れていると思いますね。彼がプロデュースしたPUFFYの「アジアの純真」を聴いた時、びっくりしましたから。ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)のいろいろなエキスが入っていてね、それはホントにジェフ・リンが作ったらこうなるだろうなっていう作り方なんだよね。次に出した「これが私の生きる道」も見事なビートルズ・オマージュだったし。だけど、ビートルズのどれかのフレーズを露骨に出しているわけじゃなくて、ビートルズになりきって新曲を作っているような感じだったのはびっくりしました。

――銀次さんご自身もそういう感覚で楽曲を作っているんですよね?

 ええ。僕は全部そういう感覚で(曲を)を作っていますね。僕もそうですけど、それって杉真理、佐野元春、大瀧詠一、山下達郎も…いわゆる<ナイアガラ>の面々ですね…僕らは普通の人の何十倍、何百倍もアメリカンポップスやイギリスの音楽を聴いてきているし、大好きだしね。それら全てと言っていいほど、憧れるものがいっぱいあるわけで、そういう曲みたいなものを作りたいという思いがかなり強くあるわけですよ。それは決してパクるんじゃなくて、あんなふうになったら絶対にカッコいいよなっていう感覚なんですね。結局、いろいろな曲を凄く聴き込んでいて、その音楽の特徴をとにかく自分のものにしたいという気持ちが強いので、自然にそういうふうになっているだけなんですよね。

――はい。

 別にそれは僕たちが凄いわけでも何でもなくて、僕たちが好きになった音楽が凄いってことなんですよね。今でも残っていて世代関係なくみんなを感動させている。だから、最近思うのは、そんなエキスを少しでも入れたいと思うから、僕たちの音楽にそういう音楽が後押ししてくれているんだなって。

――そう思います。

 今のJ-POPの人たちをプロデュースしていて、例えば、洋楽をコピーしないミュージシャンがけっこういることに気が付いたんだけど。そこで僕が「何でコピーしないの?」って聴くと、「コピーはカッコ悪いでしょ」って答えが返ってくるわけ。

――えっーーーーー、驚きの発言(笑)。

 でしょ(笑)。「人のものを真似するわけだから、オリジナルってそういうものじゃないでしょ」とまで言うんですよ。

――(笑)。芸術は模倣から始まると言われてますけどね…。

 そうなんだけど、彼らにはその考え方はないんだよね、残念ながら。僕はそれを聞いて凄いヤツだなと(笑)。日本人がロックやポップスの洋楽を聴き始めてから大した年数なんて経ってないんですよ。それでよくオリジナリティーとか言えるなって(笑)。

――(笑)。

 あはははは…。自分の中に何かが眠っていて、それが出てくると思っているのだから、僕に言わせれば、じゃあ好きにやりたまえ!って話なんだけど。ま、それは言い換えれば、彼は魂を奪われるほどの洋楽アーティストに出逢っていないってことなんだと思うんですね。

――そういうことですね。

 うん。でも、さっき後押しの話をしたけど、ビートルズだって彼らが聴いてきた大好きだった音楽が後押しをして、さらにひとつの大きな音楽カルチャーみたいなものがビートルズの音楽を後押しして、彼らならではの素晴らしい音楽が出来上がったと思うんだよね。だからこそ、それを聴いた僕たちの感動が凄いんだと、最近そんな気がしてきているんですよ…ん?あれ、何の話だっけ?(笑)。

――(笑)UK系のギターの話です。

 ああ、そうだったね(笑)。勢いづいていろいろな話をしてしまいました(笑)。話を戻して、だからオアシスから入ってもいいんだけど、オアシスなんかは音楽のほんの入り口ですよ。勝手口みたいなもんですよ、正面の入り口じゃない。

――勝手口(笑)。

 そう(笑)。勝手口から入ってきたら、そこから中を見ていろいろな音楽を聴き始めればいいんですよ。よくね、テクニックのある音楽は良くない、巧い音楽ってハートがないって、そういうふうに考える人もいるんですよ。でもね、巧い人でもハートのある人はいるし、巧いからハートがないなんてことはないんですよ。巧い人でハートがある人はいるし、巧くもないし、ハートもない人もいる(笑)。

――巧くもないハートもない…じゃ、もうどうしようもないじゃないですか(笑)。

 あははは…だから、いろいろな人がいるんですよ。それはやっぱり自分の感覚で見つけて、自分のものにしていかないといけないと思うなあ。

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