MUSICSHELFトップ > インタビュー・プレイリスト > インタビュー > BOMI

BOMI 3rd Album『A_B』Interview

BOMI

3rd Album『A_B』Interview

(ページ:1/2)

Jyunichi_banner560
BOMIが約2年ぶりにフル・アルバムを発表した。『A_B』と題されたそのサード・アルバムは、彼女が自身の半生に向き合って制作したもの。宇多田ヒカルの新作にもコーラスで参加して注目度が高まった小袋成彬がBOMIの綴った文章を元に歌詞を書き、アルバム全体のプロデュースも彼の率いるTokyo Recordingsが担当している。かつてのようなガーリーで弾けたポップ・ロックから完全に脱却し、艶やかなグルーブや静謐さのあるピアノにのせて切実であるがゆえに美しい歌を響かせているこの作品は、どのようにして生まれたのか。BOMIに話を訊いた。


──このアルバムはまず、歌がとてもいいですね。

ありがとうございます。それは、おぶちゃん(小袋成彬)がすごく気をつけてくれたところで。「今回はBOMIちゃんの“歌”を録りたいんだ」って言ってて。

──小袋さんはヴォーカル・ディレクションもされてるんですか?

送られてくるデモを、おぶちゃんが歌っているので、それがある意味ディレクションになってましたね。ヴォーカリストとしての才能もすごくあるひとだから、そういう意味でも勉強になりました。どっちかというと、おぶちゃんは(リズムに対して)後ろでノルんですよ。その感じはどうやればいいのかな、とか。

──新しい歌い方、声の出し方を発見できた。

習得した、ってところが大きいかもしれないですね。

──何しろ歌が生々しい。それが今作の最もいいところで。

ほとんどが一発録りだったから。さすがに4曲の歌を1日で録ったときは、声が掠れてくるし、「もう無理かも」ってなりましたけど。でも基本的に、いじりたくない、修正したくない、というのがおぶちゃんの考えで。そういう意味ですごい緊張感がありました。なかにはプリプロ(プリプロダクション。正式な録音前の準備作業を指す)のテイクをそのまま使ってるのもあるんですよ。プリプロって私、いままではわりとテキトーにやってたんですね、本番でちゃんと歌えればいいという考え方だったから。でも、おぶちゃんは真面目で、「プリプロの段階でちゃんと歌えるようにしてきてよ」って。

──結果的に、それがよかった。

かな。

──歌うってなんだろって、いままでよりも真剣に向き合ったわけでしょ?

そうですね。今回、初めて思ったんですよ。「別にひとに受け入れられなくてもいいかな」って。「受け入れられようが受け入れられまいが、これが私なんです。わかりづらいかもしれないけど」って、そういう感じ。

──そういう境地に立てたのはなぜ?

おぶちゃんとやり合うなかで、そうなったのかな。彼と私って真逆なんですよ。だから、すごく喧嘩したし。例えば「どうやったらもうちょっと、ひとに伝わりやすくなるかな」って私が言うと、「その、“ひと”って誰なの!?」って言う。「共感なんて必要ない」って言うんですね。そういうところで、いちいちやり合って(苦笑)。でも、誰かと一緒に作ることを選んだ以上、そのやり取りからは逃れられないし、それってひとと生きていくってことに似てるのかもって思ったんです。もちろんもっと大人な対応ができるひともいるけど、原初的なところで言ったら、そもそもひとはみんな同じ考え方を持っているわけではないじゃないですか。そう考えたら、やっぱりこのチーム(Tokyo Recordings)と一緒にやって生まれるものというのは、基本的にピュアネスに則ったものになるって理解できたし。彼らは、売れる売れないよりもまず、いい音楽を作りたいという心情を真ん中に置いて作っていて、それが結果的に売れることにも繋がると思ってやっているから。っていうのが大きいですね。

──なるほど。

おぶちゃんって、若いのにすごく推進力があるんですよ。私の話をじっくり聞いてくれたり、尊重してくれたりというよりかは、自分が引っ張っていく力が強い。で、私は今回、その引っ張ってくれる力が欲しかったんですね。メジャーじゃなくCDを出していくってなったときに、私は自分で全て正解を決めていくというのが苦手だなと感じていたから。そういうときに仲良くなって。

──そもそもどういう出会いだったの?

(水曜日のカンパネラの)コムアイちゃんとのコラボで三越伊勢丹の企画展のムービーの音楽を作るときにサウンド・プロデュースをしてたのがおぶちゃんで、その仕上りがすごくよくて、それからいろいろ話すようになったんです。

──もともと小袋さんが手掛けた作品を聴いていた。

はい。N.O.R.K.も聴いていたし、あと、綿めぐみちゃんの「災難だわ」(2014年)を聴いて、大衆に理解されうるプロテストソングだなって思ってたんです。ポップだし、バランス感覚がいいひとなんだな、きっとお茶の子さいさいでこのぐらいのことができちゃうんだなって。だけど私と一緒にやり始めた頃には、彼のなかでのああいうモードがもう過ぎ去っていて、「共感を呼ぶ歌詞になんの意味があるんだ」みたいな。でも、「BOMIちゃんにはBOMIちゃんにしか歌えない歌があって、それはBOMIちゃん自身のことなんじゃないの?」って言ってくれたんですよ。その前まで私は何を歌うべきかわからなくなっていたんだけど、そう言われて「なるほど」って思って、「じゃあ、ちょっと文章にまとめてみる」って言って。実際、いろいろケリをつけたいのにつけられないのがいままでの私だったから、それをこのタイミングでまとめられたらいいなと思ったし。これが最後のアルバムになってもいいやって、そういう感覚でしたね、そのときは。

──で、自分の半生についてを1万字以上の文章にまとめて、それを小袋さんに渡し、彼はそれを元に歌詞にしていった。その文章を渡した際、このなかからどういうところを抽出してほしいみたいなことは伝えたんですか?

それは言わなかった。そしたら少ししてアルバムの構成表ができてきて。10曲前後で、この歌ではこの内容を歌うとか。

──これまでは自分で歌詞を書いていたわけで、そうやって元となる文章を渡したとはいえ、作詞を完全に任せるのは今回が初めてなわけでしょ。それって勇気のいることだよね。信頼がなかったらできないわけで。

うん。それはやっぱり、綿めぐみちゃんの作品を聴いたときに、身近なことを書くのにすごく的確で上手な言葉を使うひとだなと思ったので。あと、今回は自分の話だからこそ、自分で書きたくないという気持ちもあって。

──あがってきた歌詞に関して、どう思いました?

「初恋」とかは「完璧だね!  すごい曲だね!」って感じで。でもこれだと私の言いたかったことが伝わりづらいかもっていうので喧嘩したものもあります。「They don’t know」なんかは、すごいやり合って完成させた。

──どこまで赤裸々にして、どこまで客観性を持たせるか。そのバランスの難しさみたいなことなのかな。

そうなのかな。うん。そうかもしれないですね。

──BOMIちゃんは、メジャーで出した『メニー・ア・マール』の頃はガーリーで楽しいポップをやってたでしょ。で、2015年の『BORN IN THE U.S.A.』でそこからかなり脱却して。今回はさらに自己と対峙しながら、サウンド含めてより深化したものを作ったわけだけど、あの頃の自分とは違うというような意識は作り始める前からあったの?

もともとキャット・パワーとか大好きだったし、いまの年齢くらいになったら、そういう感じに寄っていきたいなって気持ちはあったんです。だから音域も落としたいと思っていたし。ボイトレに通ってたときに、中音域がどんどんよくなってきてると言われて、それを生かせるような曲を歌いたいという気持ちもあったんですよね。ガーリーな曲を歌うのもあれはあれで楽しかったけど、あれは若いときにしかできないことだし。

前のページ (ページ:1/2) 次のページ