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パスピエ アルバム『&DNA』インタビュー

パスピエ

アルバム『&DNA』インタビュー

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「自分たちの歩いていく道をしっかり作っていかないといけない」

──結果として変化していくバンドは多いけど、変化を宣言して変わっていくことって実はすごくプレッシャーがある気がするのですが。

成田 そうですね。今回のアルバムにしてもシングルにしても、変化すると宣言しての制作だったので、特に変化のスタートとなるシングルで今まで自分たちがやってこなかったことをやって、J-POPの枠ではやられていなかったような新しさを持った曲が作れて、客観的に見てもよい作品だと思えるものを作れたんですよね。だからこそ今回のアルバムを作る自信になったし、プレッシャーとか不安とかありながらも、作り続けたことで乗り切った気がします。自分に自信が持てなくなったら終わりだと思っていて、結果がどうであれ、結局、「おもしろいと思えるものが作れた」って思えるところまで行けていることが自分にとっての支えで、今までそれがまったくなかったらもっとふわふわしてる気がするんですよ。バンド活動も作品作りも。

──悩まないことがないですよね。

成田 ずっと悩んでいた気がします。そう思うとしんどい一年でしたね(笑)。極端な言い方をすると、変えたことで全員が敵になる可能性もあったわけですよ。これまで好きでいてくれた人にそっぽ向かれるかもしれないし。結果的に変わったではなく、変えていくということは、変わる意義があるから変えていくわけだから、そこについては自分たちがしっかりと理解していないといけないな、と。一年一年はもちろん大事だけど、それだけじゃなくて3年後、5年後と長く自由に音楽を続けていくためには、という部分も考えないとダメなんじゃないかなって。

──ソロじゃなくてバンドでそういう意志を共有するのは難しそうですけど。

大胡田 特別何度も話し合ったりはしていなくて、自然とみんな同じ気持ちになっていたんじゃないかな。

成田 そういう雰囲気作りは大事にしてますけどね。みんなに「そうだね」って思わせる空気作りみたいな(笑)。

──そういう部分も成田さんがリードしていくわけですね(笑)。

成田 もちろん強引に強要することはなくて、そもそも「こういう曲が作りたいからついてこい!」みたいなタイプではないし、そういうタイプだったらバンドなんてやってないと思うし、みんなの意見を尊重したいと思って、バンドとしてやっていきたいから、自分の主張はもちろんあるし、アイディアの発端は自分だけど、同じ方向を向きやすい環境作りはしてますね。たぶん、これからもっと自分たちの歩いていく道をしっかり作っていかないといけないと思うんですよ。

──というと?

成田 デビューから5年が経って、デビュー、初フルアルバム、初全国ツアー、そして5周年と、これまでは何かしらトピックというか、見出しになるようなものがあったわけですけど、5周年の次は10周年で、そうなると、間の年はそういったものがなくなるんですよ。その状況下だともっとしっかり道筋を作っていかないといけないなって。初めてなんですよね、そういう野ざらしの状況が。だからこのアルバムを、聴けば今のパスピエをわかってもらえるという作品にできたことが、この先に自分たちにとって大きいと思っています。

──今のお話を訊いてアルバムタイトルの“DNA”というのがとても意味を持っているように感じました。

大胡田 今回のタイトルは私が付けたんですが、今回のこの12曲は、「これがパスピエの遺伝子です」と言える曲が揃ったなと思って、そこから“DNA”というワードが浮かんだんです。昔、よく回文のタイトルを付けていたんですけど、そこと繋げたい気もして、“AND DNA”、表記はパスピエらしく、記号っぽくしたかったので『&DNA』になりました。

──確かにパスピエの遺伝子と言えるような作品ですね。

成田 ビーフジャーキーみたいなアルバムですよ(笑)。

──噛めば噛むほど。

成田 そう(笑)。

大胡田 よく言ういわゆるスルメ曲みたいな?

──スルメよりは肉っぽい?

成田 いや、そこまでは考えてなかったけど(笑)。

「私がいつも思っているのは、声も楽器でありたいということ」

──成田さんが今作でキーになった曲を挙げるとすると?

成田 やっぱりシングル候補でもあった「DISTANCE」と「スーパーカー」かな。「DISTANCE」は2016年にできた曲、「スーパーカー」はずっと前からあった曲で、この2曲は録る時期でガラッと変わる曲だと思っているんです。だから、アルバムに入っているのが現状の一番を収録したものになっているけど、これからライヴでやることでまたどんどん変わっていきそうだし、伸びしろが多い曲っていうのかな。これからのパスピエがとても反映されていきそうで楽しみなんです。だからキーになった曲というよりはこれからのパスピエにおいてキーになっていく曲はこの2曲だと思います。

──育てがいのある曲。

成田 できあがった今はとても満足しているけど、声色とかもっと違ったエッセンスを入れてもおもしろいなと思っているんです。それをライヴで試したり、違うバージョンをこれから録ってみるのもおもしろいかもしれない。

大胡田 「DISTANCE」は現状のものも今までと全然違った歌い方、声の使い方をしたのでキーになるし、「夜のこども」も雰囲気を大事にして歌った曲なので私にとってはキー曲と言えるでしょうね。

──大胡田さんはいろいろな声を持っているんだなってこのアルバムを聴いて改めて思いました。

成田 結果として今回は色々な声、歌い方の曲が集まったよね。僕はただただ「こういう声で」ってリクエストするだけなんで楽ですけど(笑)。

──リクエストというのは歌入れの前にするんですか?

大胡田 まず曲を聴いてインスピレーションで私が歌ってみるんです。それから成田さんから「もっとこういう声で」とリクエストがあるんです。それに沿って歌ってみて、そこからさらにリクエストがあって。今回はそれに応えていったらこれだけ幅広い歌い方になりました。成田さんのリクエストって抽象的なんですよ。何故か歌に関してだけ。他のことはわかりやすく具体的に話してくれるのに、このレコーディングでも「もっと内臓がグッとなる感じ」とか。全然イメージがわからなくて(笑)。

成田 僕は大胡田によかれと思ってわかりやすく言っていたつもりなんですけどね(笑)。

大胡田 でも最終的にはきちんと形にできているのでどこかしらでちゃんと伝わって理解できてるんだと思います。

成田 曲だけだったものに歌詞と歌と両方の情報が一気に入ってくると、ユーザー視点になって、もっとこうした方が歌詞が入ってくるとか、その歌い方じゃ歌詞の魅力が半減しちゃってもったいないとか、リクエストが多くなるんですね。今回だと、「ああ、無情」は、“ああ”って言ってるけど、そのあとに“溢れだす”ってあるから、どんな“ああ”だったら“溢れだす”に繋がるのか、とか結構細かくシビアにリクエストしました。

──成田さんはコンポーザーであり、コンダクターであるわけですね。

成田 そうですね。大胡田は飛び抜けた感覚があるので、大胡田の表現をわかりやすくしたり、その逆でもっと突き抜けさせてみたり、そういう調整を僕がしているんだと思います。

大胡田 私がいつも思っているのは、声も楽器でありたいということなんです。声質は、結局歌っているのは自分だからそこまで大きく変わることはないけど、ニュアンスでだいぶ印象が変わるので、シンセサイザーに色々な音色があるように、ギターの音がエフェクターで変わるように、声も同じように変わっていくべきだと思うんです。声も楽器みたいに自在になったらいいなって思ってます。それにはもう少し歌えるようにならないとダメなんですけどね。バリエーションをもっと増やさないと。

成田 ぜひお願いします!(笑)。

大胡田 きっとまた私が困るような難曲を書いてくるでしょうし(笑)。

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