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寺井尚子 『Piazzollamor』 Special Interview & Playlist

寺井尚子

『Piazzollamor』
Special Interview & Playlist

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《リリース情報》
 
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ピアソラへ、愛を込めて。
寺井尚子『Piazzollamor』
UCCY-1077 SHM-CD:¥3,000+税
2017.3.29 ON SALE!
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CD
01. アディオス・ノニーノ (アストル・ピアソラ)
02. フーガと神秘 (アストル・ピアソラ)
03. リベルタンゴ (アストル・ピアソラ)
04. 天使のミロンガ (アストル・ピアソラ)
05. ミケランジェロ 70 (アストル・ピアソラ)
06. Piazzollamor(ピアソラモール)(寺井尚子)
07. まだ見ぬブエノス・アイレス)(北島直樹)
08. イン・マイ・スロート (佐山雅弘)
09. アモーレ・グランデ (佐山雅弘)
10. レイン(北島直樹)
11. キャラバンの到着(ミシェル・ルグラン)
12. プラットフォーム(北島直樹)
(2017年1月25-27日録音)
 


《インタビュー》

 
偉大なバンドネオン奏者、アストル・ピアソラの没後25年となる今年、寺井尚子が「自分にとって最も重要な作曲家のひとり」と語る、その音楽家に捧げるアルバム『Piazzollamor』(ピアソラモール)を完成させた。ピアニストに佐山雅弘と北島直樹、パーカッションはお馴染みの松岡“matzz”高廣、ドラムは荒山諒、ベースは金子健という世代を超えた鉄壁のメンバーが脇を固めてレコーディングされた今作品。まさにアルバム・タイトルの通り、敬愛するピアソラに捧げる代表曲がずらりと並んだ。他にもルグランの名曲「キャラバンの到着」やオリジナル楽曲も収録され、聴き応えたっぷりのボリュームとなっている。とりわけ新たなアレンジでお目見えとなったライブ定番曲「リベルタンゴ」は今作の注目ポイントだ。MUSICSHELFではオフィシャルインタビューと貴重な最新プレイリストをここに紹介。あらためて「タンゴ」という音楽の素晴らしさを再発見してみよう。(編集部)
 
――折に触れてアストル・ピアソラの曲を取り上げられてきた寺井さんですが、あえて新作をピアソラ・トリビュートにしようと思われたのはなぜですか。

もちろん今年(2017年)が彼の没後25周年ということもありますが、一番大きかったのは、昨年の東京ジャズで、10年にわたってピアソラ楽団のピアニストを務めたパブロ・シーグレルさんと共演したことです。本番前にニューヨークでパブロさんとリハーサルをしたのですが、その時改めて、タンゴという音楽の中にアルゼンチン人の血がどれだけ色濃く溶け込んでいるかを感じたんです。と同時に、ピアソラの素晴らしさも。

――具体的には、どこが素晴らしいと?

作品自体が持つ力、ですね。ピアソラの作品って、まるで凝縮されたコンチェルトのようでしょう? ストーリーがあって、泣かせどころがあって、すべてがメロディアスで1度聴いたら忘れられない。クラシックの方がよくピアソラを取り上げるのも、その楽曲の力に惹かれてのことではないでしょうか。そんなピアソラの作品をパブロさんと掘り下げていく中で、次のアルバムは彼へのトリビュートにしようという思いが固まっていったんです。

――アルバムには、ピアソラの楽曲とメンバーのオリジナル作品が収められていますが、この構成は当初からのプランだったのですか。

はじめはもう少し漠然としていたのですが……ただピアソラ・トリビュートという大枠が決まった時に、北島直樹さんに「なにかピアソラからインスパイアされたものを曲にしてみて」とお願いしたんです。北島さんは11年以上私のグループでピアニストを務めてくれていたのですが、最近またライヴで共演するようになって。彼はとにかく作編曲の才能が素晴らしいので、それをぜひ発揮してほしいと今回お願いし、上がってきた「まだ見ぬブエノスアイレス」が素晴らしい仕上がりで、これはもうアルバムに入れるしかないなと。

――もう1曲、タンゴ調のオリジナルがありますね。現レギュラー・ピアニスト、佐山雅弘さんの「グランデ・アモール」。

「まだ見ぬブエノスアイレス」ができてきたちょうど同じ頃に、佐山さんが、僕もこんな曲ができた、と持ってきてくれたんです。これがまた、北島さんの作品とは全然テイストが違って、一見正調タンゴなんだけど実はひねりが効いているという本当に彼らしいナンバーで。こうして2曲の素晴らしいオリジナル・タンゴができたので、それなら私はもっと別の方向からピアソラへの愛を表現しようと思って書いたのが「ピアソラモーレ」。この3曲をオリジナル・サイドの柱とすることで、ようやくアルバム全体のコンセプトが決まりました。

――そのコンセプトというのは?

寺井尚子からアストル・ピアソラに贈るメッセージ。アルバムの前半ではピアソラ曲を演奏することで彼への敬意を示し、後半はメンバーのオリジナルでピアソラからのさらなる飛翔を表現する、というものです。全曲ピアソラというやり方もあったのかもしれないけれど、このほうがチャレンジングで私らしいトリビュートになったのではないかと思います。

――今回1枚のアルバムに2人のピアニストが参加することになったわけですが、お互いかなり触発されるものがあったのではないでしょうか。聞けば、別日ではなく、おふたりとも同じ日にレコーディングだったとか。

もちろん刺激になったと思います。ピアニストというのはなかなか別のプレイヤーの演奏をじっくり見る機会はないですから。でも2人ともさすがに大人で、相手のことをすごく認め合っていましたし、それがプレイにも反映されてとてもよい結果を生んだと思います。

――ピアソラを5曲取り上げられていますが、どんな基準で選曲されたのですか。

今回は、演奏される機会があまりないナンバーも入れたいと思いました。それが「フーガと神秘」と「ミケランジェロ70」です。「フーガと神秘」は、原曲ではフルート、ギター、バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノといったいろいろな楽器がフーガを奏でていくのでサウンドがとても分厚くなるのですが、こちらはヴァイオリンとピアノとベースだけなのでその分厚さをどう表現するかでちょっと苦労しました。「ミケランジェロ’70」は東京ジャズでパブロさんといっしょに演奏した曲。彼との思い出を残したくてアルバムに入れました。ピアソラの中でもアグレッシブなナンバーで、ライヴのオープニングにふさわしいかな。

――それ以外の3曲は比較的知られた曲ですね。特に「リベル・タンゴ」は寺井さんもよく演奏されています。

「リベル・タンゴ」は過去に3回録音しています。今回は北島さんにアレンジをお願いしたのですが、これまでとはまったく違う雰囲気に仕上がってきました。聴き慣れたこの曲に新しい光を当てた素晴らしいアレンジです。「アディオス・ノニーノ」は、途中4ビートになるところがミソ。最初はタンゴのリズムを変えてしまっていいのかなとも思ったのですが、私からピアソラへのプレゼントということなら、やはりジャズ的なフィーリングを入れるべきだろうと。「天使のミロンガ」は実は最後の最後まで悩んだ曲。大好きなんだけど、曲の世界観をなかなか表現できなかったんです。最終的には満足のいく演奏になりましたけど。

――それに先ほどの「まだ見ぬブエノスアイレス」「アモーレ・グランデ」「ピアソラモール」が加わって、ピアソラへの敬意とそこからの飛翔というコンセプトが表現されるわけですね。それ以外の曲についてもお聞かせ願えますか。

「イン・マイ・スロート」は佐山さんの作品。ピアソラの濃厚な世界が続いてきたところでちょっとひと息、という感じの爽やかな曲です。といっても実は5拍子というところが佐山さんらしいのですが(笑)。「キャラバンの到着」はミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」の挿入歌で、作曲はミシェル・ルグラン。それを佐山さんがアレンジしてくれました。ほかとは毛色の違う曲で、チェンジ・オブ・ペース的なトラックになったと思います。

――「レイン」と「プラットホーム」は北島さんのオリジナルですね。

「レイン」は最近のライヴではずっと演奏しています。こんなにストレートで切ない美しさにあふれた曲は、北島さんにしか書けないのではないでしょうか。「プラットホーム」もそう。火照った心をクールダウンさせてくれる、これで心安らかに眠りにつける…そんな、アルバムのクロージングにふさわしい曲ですね。

――最後に、寺井さんにとってアストル・ピアソラとはどういう存在ですか。

フォーエヴァー、です。ピアソラの音楽は人々の心に永遠に鳴り続ける。そしてそんな彼の音楽を、私を含む多くの人が愛し続ける。ピアソラに出会えてよかった、ずっと隣にいる人、そういう存在ですね。

 

寺井尚子 Playlist
「いま聴きたい10曲」

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