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Love & Groove Delivery ”ステージ裏 ”鼎談 バンドを支える3人が初めて語るUNCHAINとカバーアルバム

Love & Groove Delivery ”ステージ裏 ”鼎談

バンドを支える3人が初めて語るUNCHAINとカバーアルバム

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既発の配信限定6曲に加え、新たに4曲を加えた UNCHAINによる好評カバーシリーズ『Love & Groove Delivery』が遂にCDリリースとなった。誰もが知っている曲をチョイスし、谷川正憲の絶品のヴォーカルと遊び心たっぷりのサウンドで理屈抜きに楽しめる、まさに現在の彼らを象徴する一枚となっている。そんな理由もあってか、発売当初は店頭で一時的に品薄となり予想を上回る嬉しい知らせが届いた。早速本人たちに取材を申し込んだところ「今回はプロデューサーの名村さんとレーベル代表の伏島さんに話を聞いてみませんか?」とマネージャーから意外な提案が飛び出した。これは面白くなりそうだ。せっかくなのでマネージャーにも参加してもらい今のUNCHAINを支える3人にとことん彼らについて語ってもらいましょう。その前に少しだけ昔話から。

 【登場人物紹介】

 

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 ★ 名村武(ナムラ タケシ)★
プロデューサー、ベーシスト。これまでBO GUMBOSや東京スカパラダイスオーケストラ、キリンジなど数多くのアーティストの作品を担当した業界で知らない人はいない有名ディレクター。現在はUNCHAINをはじめ木下航志、黒猫チェルシー、ザ50回転ズ等のプロデュースを手掛ける。

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★ 伏島和雄(フセジマ カズオ)★
株式会社Cloud Cuckoo Land代表取締役。 FLYING KIDSのリーダーでベーシスト。現在はSTAR LINE MUSICを立ち上げ、FLYING KIDS、浜崎貴司、UNCHAIN、王族BANDらが所属。

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★壇 慎一郎(ダン シンイチロウ)★
Sony Music Artistsで勤労中。 UNCHAIN、白井良明(ムーンライダーズ)のマネージャー。 推しメンは吉田昇吾。

– 唐突ですが、名村さんは昔アン・ルイスさんのバックバンドのベーシストとしてドリフの「8時だョ!全員集合」のステージに立った事があるって聞いたんですが。

名村:はいはい (笑)  あの (生放送で) 停電した時があったでしょ。

壇:見てた!

名村:あの時出てましたもん。

全員:えーーっ!(笑)

名村:最後まで電気が付かなくって懐中電灯で照らして、あれ?あの時は演奏やったのかな?忘れちゃった(笑)

– 改めて名村さんの経歴を読者のみなさんにご紹介しますと、元々は関西で活動をされていてギタリストの松浦善博さん(ex.ツイスト / THE BAND HAS NO NAME)に誘われてアン・ルイスさんのバンドに入ったと松浦さんのブログに書いてありましたが。

名村:元々は関西の大学でバンドをやっていて、8.8ロックディ(※)とか出たりして。

(※)数多くのバンドを輩出した関西アマチュアバンドの登竜門的なヤマハ主催のコンテスト。

– その時のバンド名は?

名村:ブラッドショットっていうバンド名でJ・ガイルズ・バンド(※)のコピーバンドだったんです。

(※)1967年、J・ガイルズを中心にボストンで結成。1981年発表の「堕ちた天使」はミュージックビデオが話題となり、全米1位の大ヒットとなった。

伏島:僕も好きだけど、J・ガイルズ・バンドっていうところがいいですよね。そこにいくかってね(笑)

壇:面白い!そういう話ってこれだけ長い間一緒にいますけど、今までした事ないですよね。

名村:うん、そうだった。それで松浦くんはアイドルワイルド・サウスっていうバンドでオールマン・ブラザーズ・バンドみたいなのをやっていて、僕とはその頃からの知り合いで、松浦くんは桑名正博くんのバックバンドもやっていたんです。で、その時にアン・ルイスがバックバンドを探しているからといって松浦くんに誘われたんですよ。それで彼と一緒に東京に来たんです。

壇:松浦さんはデュアン・オールマンのお葬式に呼ばれたって噂が・・

名村:それはない(笑)

伏島:(笑)

壇:(笑)じゃあそろそろ本題に入りましょうか。

–はい、今回はUNCHAINのカバーアルバムがリリースされまして

壇:皆さまのお陰で大好評の中、

伏島:そうですね。ご好評を頂いておるのですが現時点(取材日の2013年2月13日現在)予想以上に出荷のスピードが早くて追いつかず。

– このインタビューが掲載される頃には、きっとみなさんのお手元に届いている事でしょう。そんな予想を上回る反応も嬉しい今作『Love & Groove Delivery』ですが、いつもですとメンバーにインタビューするところ、既に次のオリジナルアルバムの制作に入っているという事で今回はちょっと視点を変えまして『SUNDOGS』以降のバンドの大きな飛躍のきっかけとなっている現在のUNCHAINを支える皆さんに彼らの事や作品の事について、もちろん、彼らがいると聞けない事まで、あれこれ聞いちゃおうと。

壇:特に今回の作品の核となってるのはアレンジだと思うんですね。で、そのアレンジを手がけたのはプロデューサーの名村さんだし、であれば今回はより音楽的にコアな話をしていきましょうと。そしてここ5年くらいのUNCHAINを一番近くで見てくれていたのがMUSICSHELFさんなので、ここでしかできない企画として提案させてもらいました。

– ありがとうございます!ではまず最初にみなさんのUNCHAINとの出会いからお聞きしたいのですが、最初に彼らと出会ったのは、もちろん壇さんが先ですよね。

壇:そうですね。この3人の中では。2009年の9月です。

– その後に名村さんという事で、あらためてUNCHAINの第一印象はいかがでしたか?

名村:確か彼らに会う前にライブを初めて見て、その時にね、ちょっとファンキーな感じもあり、かと言って割とギターバンドじゃないですか。だからね、ファンカラティーナ系(※)みたいな、ブルー・ロンド・ア・ラ・ターク(※)とか、そんな印象でしたね。

(※)アメリカのディスコ・ミュージックにラテンのフレイバーを加味して’80年代初頭に流行したイギリスのニュー・ウェーブ系ダンス・ミュージック。
(※)ジャズ要素も強いファンカラティーナ系を代表するバンド。オリジナルアルバムは1枚のみ。

壇:2010年の秋頃にUNCHAINのコーラスでもお世話になっていて、名村さん、伏島さんとも関わりのあるズクナシ主催のイベントが吉祥寺でありまして。前日がSCOOBIE DOと松山のイベントだった事もあり、楽器車の移動の都合上、初めて谷川くん一人を現場に送り出し(笑)

伏島:それで当時、僕は浜崎貴司(FLYING KIDS)のソロアルバムを作っていて、そのズクナシのイベントに浜崎も呼ばれて、準備をしていたらサブステージからもの凄い勢いで弾き語りの歌が聴こえてきたんですね。谷川の歌うMISIAの「つつみ込むように」が聞こえてきて、それが抜群にうまくて、ここ数年そんなシンガー見た事ないなと思って、そしたら浜崎が「ヤングパワーに押された (汗) 」って(笑) それで当時の浜崎のマネージャーと「あれはいったい誰だ?」となって聞いたらUNCHAINというバンドをやっていると聞いて。

壇:その時は、とにかく楽屋が先輩ばかりで怖かったと谷川が言ってました(笑) で、その翌日がベストヒットSMAというイベントで、その時に2人に初めてバンドのライブに来て頂いて、そしたら2人とも感想が同じで(苦笑)

名村:キメがやたら細かくてグルーヴがよく分からなかったんです。

壇:ある種ギターバンドのカタルシスだとは思うんですど、なんかもうちょっと引き算をしていった方が、今後おもしろくなるんじゃないかなって。名村さんと話しながら曲作りを進めていったんです。その頃、伏島さんも同じような事を谷川に話していて。

伏島:彼の歌を聴いたときに彼は「Maroon5とかジャミロクワイみたいなバンドを目指しているんです」って僕に言ってくれて、観に行ったら「あれ?」みたいな。「昨日の歌があまり生かされていないんだけど・・・」って本人に苦言を呈しちゃったんです。

– そこから『SUNDOGS』への道のりで大きく舵取りをして、よりクッキリとバンドの輪郭がわかるような進化が始まりましたよね。どんなきっかけがあったのでしょう。

伏島:それは名村さんのサポートが大きいですよ。

壇:2010年7月7日に4枚目のフルアルバム『Hello, Young Souls!!』を出したあとに、レコード会社と契約が終了しまして。当時はとにかく制作活動を止めちゃいけないと思って、11月くらいから名村さんにお願いして一緒にデモを作りを始めたんです。

名村:とにかく一緒にやりだして思ったのが谷川くん相当歌がうまいなと。なかなかこういう人はいないし、これをもっと生かした方が良いと思ったんで、もうちょっとシンプルにして、ちょっとやっぱりファンキーさみたいな物を増したほうがいいのかなと。それで完成したのが『SUNDOGS』ですね。

壇:時期的に前後して伏島さんがSTARLINE MUSICというレコード会社を立ち上げると聞いてて。そこで一緒にやりませんかという話をさせてもらい、STYLE_MISSILE recordsというUNCHAINだけのレーベルを置かせてもらったんです。そこで正式に名村さん、伏島さんお二人とタッグを組ませてもらって。で、前のレコード会社からリリースされる2種類のベスト盤に、新曲を1曲ずつ入れるという話が決まってたし、6月に新チームでアルバムを出そうという話も進んでいたので、ベスト用と『SUNDOGS』に向けて同時進行で曲作りが行われてたんです。

伏島:僕はライブの時に聴いた谷川の歌と翌日観たバンドのライブしか情報がなかったんで、一緒にやらせてもらう事になって過去の音源を全部チェックしたんです。するとインディーズでやっていた時の音の感じっていうのがソウルフルに聴こえて、英語だったんですけどシュガーベイブみたいな感じというか、僕がイメージしていた音楽に一致していて。名村さんと一緒にやったらたぶん着地点が一緒になるなって予感はあったんです。(名村さんは)メンバーひとりひとりの意見や考えを理解しながら進めていく懐の深さがあるので、僕が思っていたイメージ通りに進んでいると思いますね。

壇:今は彼らの周りのスタッフはミュージシャンばっかりなんでね。もうひとり香川さんっていう元ROGUEのギタリストが同じチームにいるんですけど、ミーティングが始まると「全員バンドマン」なんですよ。話が全く進まない(笑) それが最初の悩みでした(笑)

名村:俺は違う (笑)

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– (笑) 彼らにとっては最高の環境ですね。

名村:バンドがもうひと皮剥けて大きくなるというか、力が付けばいいなと思いますよね。そしたら谷川くんのヴォーカルもより前面に出てくると思うし。

– そんな中で名村さんはどのように共同作業を進めていったんでしょう。

名村:まず大きかったのは歌詞を全曲日本語詞にする事。これはね、凄く横暴かもしれないけど、ヨーロッパの人が英語を歌うのとは違って、日本語ってある種の高次元な言葉を使っていると思いますし、せっかくなら全曲日本語でやった方が開けるんじゃないかなって。

壇:もちろん今までも日本語詞の曲はあったんだけど、やっぱりこれから先、谷川の歌をこのチームでもっと前面に押し出してしていこうってなってる時に、より伝わる作品にしないと意味を成さないだろって。結構話し合いましたよ。バンドとしての不安もあったかもしれないけど、彼らも新たに見つかる物があるんじゃないかと。

伏島:僕もね(一緒にやる時) 「レーベルが変わるっていうタイミングはチャンスでもあるし、そこでトライしてみない?」って提案したんです。

– 歌詞と共にアコースティックライブを積極的に取り入れた事で表現の幅がグッと広がった気がするのですが。

壇:そうですね。それこそ『Hello, Young Souls!!』をリリースした頃から谷川の弾き語りがスタートして、バンドとしてはその冬に初めてアコースティックワンマンやって。そこで弾き語りやアコースティックで演奏する時に、英詞だとお客さんに伝わる力がどうしても日本語の歌詞には勝てないな という悩みを谷川が歌い手として抱えていて、それも日本語詞にシフトしていくきっかけの一つだったと思うんですよ。だからメンバー側のシフトチェンジと ちょうどいいタイミングだったと思います。

伏島:普通バンドってアコースティックのライブを定期的にやるのっていうのは意外と勇気が必要で、FLYING KIDSの経験からしてもインストアの時にアコースティックを演奏するっていうのはありますけど、アコースティックのライブをやってしまうっていうのは。

名村:アコースティックって仕方なくやるみたいな部分がね

伏島:そうそう、どっちかっていうと我々の世代はね(笑) だからそれを全面的にやってしまおうっていうのは壇さんの手腕ですよ。アイデアの勝利だと思うんですよ。

壇:いやいや基本メンバー発信ですから、僕は彼らがやりたい事を進行してただけで。ちょっと現場をかき混ぜるくらい(笑)

伏島:結果、より谷川くんのヴォーカルが引き立ったしね。

– そのアコースティックライブではカバー曲を披露するのも楽しみの一つでしたが、そこから本格的にカバー楽曲を配信リリースする事になったきっかけというのは?

壇:2011年の6月に『SUNDOGS』をリリースして、9月に全国ツアーをやって、その次はアルバムの制作に入るタイミングだったんですが、メンバーもスタッフもそういう感じではまだなかったんですね。で、8月から3ヶ月連続で企画したアコースティックイベントで毎回いろんなゲストを呼んでカバー曲をしたんですけど(※)、評判も良かったんで、じゃあ先ずカバーでやってみましょうかって。過去のシングル作品では毎回カップリングにカバー曲が収録されてたし、改めて次の方向性を試す意味でやってみましょうと。当初は5ヶ月連続リリースとかどうですか?って提案したんですけど。

(※) ゲストにD.W.ニコルズ、土岐麻子、浜崎貴司を招き2011年8月から3ヶ月連続で行ったUNCHAIN企画のアコースティックイベント。

伏島:「それは無理!」って(笑) さっきも言いましたが最初に彼の歌を聴いたときのMISIAのカバーの印象が強くて、やってみたらどうだろうって。

– アレンジが特徴的ですよね。

壇:アレンジは最初にバンドでこうしようと決めたら、名村さんに一度形を作ってもらって。

名村:オリジナルだと思いっきりできない分、カバーだったら割と思い切ってできちゃうというのはありましたね

– 出だしがソウルな感じで途中でジャジーなサウンドが入ってきたり最後がラテンファンクとか、一曲の中の流れに大きな変化や遊びの部分があって。

名村:最近思うんですけど、面白い事をやる人が少ないんですよ。例えば「丸の内サディスティック」だったらツインリードギターとかちょっとバカバカしいヤツが入っていて、そういうバカバカしい物ほど、みんなもっとやればいいのになって思っていたから「やってみない?」って言ったらメンバーがノッてくれて、良かったですね。

– そういう遊びもちゃんと出来ちゃうってところが彼らですよね。

名村:そうですね。

伏島:面白い事って余裕がないと出来ないですよね。昔の上手いジャズミュージシャンて結構そういう遊びの部分があったじゃないですか。だからUNCHAINは出来るというキャパシティのあるバンドだという事ですよね。

壇:そういう意味でいうと『SUNDOGS』であそこまで振り切ったのが大事だったなって。やっぱり彼らの中の意識でも「とりあえず1回やってみようぜ」っていうのが、幅が広くなったというか、良い意味で緩くなったというか、固定概念が無くなってきて。

名村:まだまだできる!って。ホントできちゃうバンドなんですよ。

壇:以前はアルバムの中にメンバー以外の人の音を入れる事に対して拒絶反応があったんですけど、今回の作品には全曲(木下)航志くん(Key)が参加してるし、それで楽曲が良くなるんだったらいいじゃん。って。もちろんライブバンドとしての線引きは当然あるだろうけど。

名村:そっか、これで初めてガッツリ鍵盤が入ったんだ。

伏島:そう! ここから『Eat The Moon』につながっていくんですよね。

(話は今作へと続きます)

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