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特集 結成20周年のザ・たこさん 5thアルバム『タコスペース』インタビュー

特集 結成20周年のザ・たこさん

5thアルバム『タコスペース』インタビュー

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――で、今回は音がめちゃくちゃかっこいいですね。いい具合の粗さもあるし、ザ・たこさんのライブでの音がそのままパッケージされてる。熱を感じます。

安藤:一発録りですからね。

山口:今回はCLUB WATER(大阪は十三にあるライブハウス。オーナーはザ・たこさんの全作品のミックスを手掛けている松田健。ザ・たこさんの年末恒例・投げ銭ライブ「ザ・たこさんアワー」はこのハコで行なわれている)で全部録らせてもらったんで。だから、ケツを気にせんでよかったっていうのもあるしね。

安藤:『ベターソングス』は、ある意味、ソフトに録ってましたからね。今回はもう、ガツンといこうと。

――『ベターソングス』はポップなよさがあったと思うんです。でもザ・たこさん本来のダイナミズムみたいなものは、今回のほうが強く出ている。剥き出しの音というか。

安藤:ええ、そうですね。

吉永:ぼくは、『ベターソングス』に関しては、音のことよりもまず曲を入れすぎやったと思ってて。14曲入ってましたからね。で、今回は12曲。これでもまだ多いと思ってるんですけど。

山口:内本さん、どう思います?

――今回はこれでちょうどいいんじゃないですかね。前作は確かに多いけど、それは時代的なこともあると思う。4年前はまだどのCDも曲数多かったですから。みんな、入れられるだけ入れてた。洋楽でもやたらボーナストラック詰め込んだりしてたし。でもここ数年は、長すぎると途中で飽きられて全部聴かれないってことで、絞る傾向にありますね。

山口:そうなんや。

吉永:ぼくとしては、9曲にして45分くらいに収めたかった。

安藤:46分テープに収まるくらいの。

吉永:うん。それぐらいコンパクトな感じで、次をまた聴きたいと思わせるぐらいがいいと思ってたんやけど、せっかく作ったんだから全部入れようやって話になって。

安藤:そらまあ、20周年やからね。

――うん。長すぎる印象はないですよ。で、サウンドに関してですけど、質感みたいなことに関してはマツケンさん(松田健)とガッツリ話しあって決めていってるんですか?

山口:めっちゃ話しますね。でもマツケンさんはドラムのセッティングの仕方とか革の張り方とかもわかってるから、鳴らした段階でもうバッチリなんですよ。あと、ぼくの個人的な話ですけど、今回はマツケンさんのアンプを使わしてもらってて。それ、『ナイスミドル』んときも使わせてもらってたやつなんですけど、それとの相性がいいんですよ。

――なるほど。いや、今作は山口さんのギターの音がめちゃめちゃいいですからね。

山口:やったあ!!

――山口さんのギターがサウンドを決定づけているアルバムだな、と。

山口:だから今回のは自分でもすごく気に入ってて。

――縦横無尽ですよね。でも、これぞ山口しんじのギターの音だというのは、どれを聴いても伝わってくる。

山口:なんかね、自分の好きな感じが絞れてきたというか。オレは何が好きなんかなって思う時期ってあるじゃないですか?  でもなんか、自分はこういうのが一番好きなんやっていうのがわかって。それは何かっていうたら、やっぱりスワンプなんですよ。で、なんでかって言うたら、ファンキーやし、いなたいし。いなたい感じがやっぱり好きなんですよね。

――そういう好みの音をそのまま出していると。

山口:そうです。でもまた最近、ツェッペリンとかジミヘンも聴いたりしてるんですけどね。なんか40越えたおっさんが言うのもヘンやけど、もう一回いろいろやってみて、「わっ、オレ、ツェッペリンできるやん」とか「オレ、ジミヘンみたいやん」とか、そういうのが嬉しくてね。そんなにちゃんとコピーとかしたことなかったんですけど、それでも歳とったらできるようになるんやなって、ちょっと思ったんですけど。

――いや、ぼくが言うのもおこがましいですけど、山口さん、ここ数年どんどんギターの腕が上がってますよね。

吉永:うん。うまなりましたよ、山口さん。ぼくが入ってからでも、どんどんうまなってるなって思うもん。最近、普通に練習してても、そう思いますね。

山口:嬉しいなぁ。なんか好きなことがわかってきたんですよね。いろいろ好きなんですけど、それが自分のなかでひとつにまとまってきたというか。絞れてきた。

――そういうわけでサウンド的には山口さんのギターの色が全面に出ているわけですが、一方、歌の内容に関しては、これはもう完全に安藤さんの世界観がどーんと出ているアルバムで。

安藤:いや、もう、なんかねぇ、どんどん劣化していってますからね、歌詞の内容が。いや、劣化というとアレですけど、どんどんくだらなくなってる。どんどん幼稚になってますね。

――中2に戻ってる感じ。

安藤:ええ。だから、これから先、どないなるんやろと(笑)

――奥田民生さんも、ある時期からどんどん歌詞がシンプルになっていったじゃないですか?  物語を歌わなくなって、言葉の響きのほうに傾いていったというか。その感じに近いんですかね?

安藤:まぁ、そういう心境なんでしょうねぇ。もう、まっとうな歌詞を書くのが恥ずかしいというかね。もともと恥ずかしいんですけど、年々そうなっていってますね。

――照れがでる。

安藤:うん。だったら、無理くりださなくてもええんちゃうかなって思ってて。ザ・たこさんを始めた頃はちゃんとした歌を書こうって気持ちもあったんですけど、もうなんか、そういうのは面白く思えないんですよね、いまは。お笑いではないけど、面白い歌を作りたい。だからぼく、「飯よ」なんかはむちゃくちゃ好きなんですよ。「持ってこ~んか~いな」ってところとかね、“こ~んか~いな”がなんかの呪文みたいに聴こえるでしょ? そこを歌ってると自分のなかでトリップしてしまうぐらいの感じがあってね。

――意味ではなく、言葉の響きの面白さ。

安藤:ええ。大滝詠一の「あつさのせい」って歌あるでしょ?   あれで“あ、つさのせ~”って歌ってて、“つさのせ”ってなんやねんって思うじゃないですか?  意味はないけど、耳に残るでしょ。あれと似てますね、「飯よ」は。歌ってるほうとしても、楽しい。

――そういう語感の面白みがあちこちに出てるアルバムですよね。あと、もうひとつ思ったのは、これは労働者の一日が描かれたアルバムでもあるな、と。

安藤:ああ、はいはい、そうですねぇ。

――朝起きて金がなくて、意識が朦朧とするくらい働いて、帰り道でパツキン・ネエチャンの罠にはまって、居酒屋でひとり、いいちこお湯割り飲んで、家に帰って結局TENGA。で、疲れ果てて寝るっていう。

山口:あははは。ほんまやわ。

安藤:これが所謂、“修行”の成果ですよ。

――労働者のリアルが表現されている。

安藤:うん。でも、生々しすぎて逆に敬遠されるかもしれないですけどね(笑)

――「Oh,疲れマラ」ってフレーズとかね(笑) 。

安藤:あそこはぼく、デヴィッド・バーンを意識した歌い方をしてます。“お~~つかれま~~ら~~”って。因みにこの曲、最初は「飯よ」ってタイトルじゃなかったんですよ。

山口:なんやったっけ?

安藤:「ハードワーカーズ・ソング」。それをオマエが「飯よ」にせいって譲らんから。

山口:「酒よ」みたいでええやんって。しかもあれ、ダブル・ミーニングなんですよ、「オカズはいらない」ってところ。“オカズ”はいらんから、いまは飯を食いたいっていう。

――ああ、そっちのオカズとかかってるんだ。

山口:もうね、そんなんばっかりですよ。昔、ようそんな話しとったもんな。腹へってんのに、コクことあるよなって。

安藤:うん。食ってからコクか、コイてから食うか。角川映画や。

山口:ネバーギブアップ!

安藤:ママ~、ドゥユリメンバ~。

――わはははは。

安藤:あかんな、どんどん幼児化してるな。オレ、思ったけどな、30代ぐらいでジジイになってたのかもしれない。ジジイになると幼児化するねんて。

山口:20代の頃からジジイに憧れてたもんな。

安藤:「中之島公園、16時」も、あれ、ジジイが歩いてるのを見ながら書いた曲やしな。

――「チェーンスモーキンなじいさん」もそうだし、「殺し屋のテーマ」の殺し屋も、人を殺めて50年……ってことは仮に10歳で初めて殺めても60歳ですからね。

安藤:設定としては14歳で初めて殺めてるので、いま64歳ですわ。

――というような曲が詰まったアルバムですが、では改めて聴きどころを。

安藤:ほな、好きな曲をあげましょか。ぼくの好きなのは、「チェーンスモーキンなじいさん」「レバー・フォーレバー」「飯よ」。この3曲が特に気に入ってますね。

山口:ぼくはなんやろ?  家で何回も聴きたいと思うのはこのバージョンの「TENGA」ですね。ファンキーでしょ、リズムが。このふたり(オカウチ&吉永)が本当によくやってくれて。あと、全体的には安藤八主博の世界をとことん味わってほしいですね。

――ほかのどこにもない、安藤ワールドを。

山口:安藤ワールド。アンダーワールドじゃなくて(笑)

――(笑)。オカウチくんは?

オカウチ:ぼくにとってはこれがザ・たこさんでのデビュー・アルバムになるんで、最高傑作と言われるのか、駄作と言われるのか、早く外の人の声を聞いてみたいですね。駄作って言われたら、オレのせいってことにもなってくるじゃないですか?   だから、どういう評価が下されるのか、気になりますね、すごく。

――吉永さんは?

吉永:うちの2歳の娘は「BLUE MOUNTAIN BLUES」が気に入ってるみたいで、“ババショーヘイ・ヘイ”って言うてます。最近は“どーぞ”“どーぞ”って。そこも言うんやって思って(笑)

――かわいいっすね(笑)。ドラマーとしての今作のポイントは?

吉永:今回はとにかくシンプルです。ほぼ2種類のオカズを使い回してるだけ。基本パターンも2種類。オカズも2種類。

安藤:まさに、オカズはいらない。

吉永:オカズはいらない(笑)。聴いてもらったらわかるけど、意図して全部ほとんど一緒です。違うことはしていない。めったなことがなければ、タンタンタカタカンですから。それが出たら吉永節っていうのをやりたかったんですよ。リズム的にはドンドンパンか、ドンパン・ドンドンパンしか、基本的にはやってない。シンプルにこれしかできませんっていうのをやってるんです。

――だからこそ山口さんは自由自在に弾けるってことですね。

山口:ほんま、そうですね。うん。

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