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祈らないこと、の後に…

selected by 笛岡俊哉

例えば、だれかを信じたとして、裏切られたと感じてもそれでも信じることもある。傷は傷として残って、それでも信じることがあるのかもしれない。もちろん、そう信じることで救われる側面があり、むしろ、信じたい、と思っているのかもしれない。そんなとき、ただあふれてしまう涙は決定的なことになってしまうのかもしれない。 そうして、すり減った後で、もう、信じることも祈ることもできなくなってしまうのかもしれない。 その後で、正しさを越えて、安部公房の言葉を借りるのであれば、他者との関係の回復があり得るのか、ということに少しは光を当ててくれるような音楽を選びました。 こうして、音楽から受取る光、というものがあり、とても能動的に受手が反応する部分があるというのは、それもひとつの音楽とのコミュニケーションのように感じます。

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  1. I. Lento - Sostenuto Tranquillo Ma Cantabile
    Henryk Gorecki

    ほぼ聴き取れないようなレベルの音量にはじまり、徐々にストリングスの響きが立ち昇って来る。延長されるカノン。響きの立ち上がりはやがて透明に立ち還り、アップショウの歌声はその先の光のように降り注がれていく。一瞬一瞬繰り返すことの無い日常のように。

  2. River III
    Ketil Bjornstad & David Darling

    楽器が絵筆を持っているかのように、心象風景をなぞる。倍音はにじみのように。はじまりの一音で、絵画に対峙した時のように、すべてが一瞬に現れるようにも感じられる。一方で、少しずつ置かれていく音は、丁寧に、ある種の確信をつないでいるかのようである。

  3. Charlotte
    Hope Sandoval & The Warm Inventions

    ぼくはcharlotteを知っている。彼女は決して戻ってこない。

  4. Intruder
    Susanna

    ノルウェー、Susanna & the Magical Orchestraのsusannaによるソロアルバム。ピアノと、ときおりはいるテルミンが印象的な一曲。音の雫の一粒一粒が心に滴ってくるよう。何故か、日本家屋の軒先で降りしきる雨を見つめているような気持ちになる。また、テルミンが音楽的に機能しているのは、テルミンと言う楽器を思うと、とても嬉しく感じた。

  5. Believer
    Susanna & The Magical Orchestra

    「私が去ったとき、あなたは何か新しいものを見つける。あなたは知っている。あなたはbeliever、わたしは違う。。。」信じることは決して何かを正当化することにはならない。または、信じることによって、弱さを忘れようとするのかもしれない。 離れていくことを決めた彼女に、信じないこと、祈らないこと、そんな女性のしなやかな強さに心を打たれる。

  6. Girl Of My Dreams
    Sir

    「彼女はまだ一人で待っている、ただあなたが帰ってくることを」そんな夢の少女をぼくたちは忘れてしまう。単調に繰り返されるオルガンの響きに、忘却の確かな感覚だけが漂う。忘れてしまったということだけが確かな感覚として漂う。

  7. Shining Shadow
    Tu M'

    イタリア在住のエミリアーノ・ロマネッリ(Emiliano Romanelli)とロッサーノ・ポリドーロ(Rossano Polidoro)による、電子音響デュオ、テュ・ム。「Shining shadow」という言葉に内包されるある種のイメージや意味といったようなものに、ゆっくりとある質量を持って覆いかぶさって来てくれる、影でもあり光でもあり、それは音でもある。

  8. Leave It All
    Orenda Fink

    azure rayのメンバー。彼女の何かを吐き出そうとする、それでも届かない何かを届けようとする声、吐息。そんなささやかながらも、力強さと言ったものが、azure rayよりも違った角度で深く届いて来る部分がある。また、Azure rayそれぞれのソロ作品を聴くと、azure rayの音楽の必然性のようなものが浮き彫りになるように感じられた。

  9. September Tears
    Sophie Zelmani

    本当に心に届いてくることはそんなにたくさんないはず。涙を流させてくれるような人もそれほどたくさんいないはず。涙が答えになる瞬間もぼくたちはしっているはず。生きること、感じること。あなたは祈らないかもしれないし、信じないかもしれない。だけど、希望だけはずっと抱き続けるのかもしれない。

  10. I'll Be Cryin' For You
    Stina Nordenstam

    何かのために涙を流すことができるのであれば、それを愛することができるのだろうか。すべての場合にはあてはまらないとは思うけれど、sophie zelmaniの言うような、涙を流させてくれる人なんてそれほどいない、その場合には「本当に愛する」ということの感触、というものだけが少しだけ感じられるようにも思う。