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ジャズと映画のアヤシイ関係

時に、煽情的で、暴力を焚き付けるように。また時に、鎮静剤のように、はたまた時にはセクシーに。映像をサポートするのが、サウンドトラックの役割である。しかし、それ以上の何かをもたらしてくれる楽曲も少なからず存在する。そんな中から、ジャズ、あるいはジャジーな曲をピックアップしてみた。

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  1. カミング・トゥ・タウン
    ジョン・リー・フッカー

    マイルス・デイヴィスとジョン・リー・フッカー。この二人のコラボが叶ったのは、それぞれのソロアルバムではなく、サントラという、ミュージシャンにとって気負いの少ない媒介だったかもしれない。ふたりをひっつけた監督、デニス・ホッパーのサウンド面への気配りも評価したい。ザクザクとしたリズムに、トランペット、ヴォーカル、ギターがシンプルなブルーズを奏でる。ストーリーの妖しさに輪をかけるような、短いけれど印象的な名演。90年公開。マイルスとサントラ、いやジャズとサントラといえば、『死刑台のエレベーター』(57年、ルイ・マル監督)だけど、各方面でさんざん語られているゆえ、今回は敢えて割愛。

  2. 隠しカメラ
    ハービー・ハンコック

    不条理なストーリーやヴァネッサ・レッドグレーヴの美しさ、主人公のナルシストぶりなど見所が多い、映画ファンにはおなじみのこの作品(66年、ミケランジェロ・アントニオーニ監督)。この曲の聴きどころは冒頭のベースライン。不穏で、淫蕩な空気をその音色が連れてくるようである。余談だが、このベースラインをしっかりと聴かせてくれるようであれば、あなたの所有しているオーディオは高いクオリティにある(はず)。

  3. チャパカ組曲(パート1)
    オーネット・コールマン

    確か、映画自体は、監督志望のどこぞのボンボンが手がけたドラッグムービーだそうな。このようにサウンドトラックとして発売されているが、映画は未見。というのも、結局は、オーネットの音楽は採用されなかったから(代役はラヴィ・シャンカール!)。サントラ初挑戦で意気込むオーネットの鼓動が伝わるようで、しかもエレガントな雰囲気さえも孕んだこんなフリージャズは滅多にない。彼のディスコグラフィの中でも重要な作品だと思う。65年録音。その後、オーネットはクローネンバーグの『裸のランチ』(91年)のサントラに参加。こちらは無事採用されている。

  4. キャラヴァン
    バニー・ベリガン&ヒズ・オーケストラ

    ジャズファンでクラリネットもたしなむウディ・アレン監督の99年作。ショーン・ペンを30年代に活躍したジプシージャズのギタリストとして設定。ギタリストが主人公ゆえに、演奏シーンや当時のジャズを再現した楽曲に満ちあふれている。この映画監督の音楽的趣味と、ストーリーテラーとしての眼差し、そしてビジュアルセンスがうまくブレンドされた作品である。しかし、ジプシージャズと、ノスタルジックな気分が直線的につながるのはなぜだろう。

  5. キャラヴァン
    ジョニー・デップ

    00年、ラッセ・ハルストレム監督作品。「キャラヴァン」って、いったいどれほどのカヴァーがあるんだろう。サントラにおいてもそうだ。上記の『ギター弾きの恋』しかり、当時の気分をわかりやすく表現するには、最適だということか。安易といえば安易、短絡的と言ってもいいかもしれない。だからこそ、白洲次郎のサントラに敢えて現代的なサウンドを持ち込んだ、大友良英の試みの重要性が高まるのである。

  6. ソウル・ボサ・ノヴァ
    クインシー・ジョーンズ&ヒズ・オーケストラ・フィーチャリ ング・ローランド・カーク

    3作で完結してしまったんだろうか、このシリーズ…。1作目(97年)から通して使われているのが、おなじみのこの曲。クインシーのアルバム『Big Band Bossa Nova』(64年)に収録されているものだ。ゴージャスなアレンジメント、ローランド・カークの混濁した音色のフルートソロなどコンパクトな中にもキラリと光る要素が詰め込まれている。その作風は『夜の大捜査線』(67年)、『ゲッタウェイ』(72年)といった彼が手がけた数多くの作品でも共通している。ちなみに『オースティン・パワーズ』では、モデルにまたがって撮影するという『欲望』のパロディーシーンも。

  7. ボストン・ラングラー
    ミシェル・ルグラン

    この7月にようやくDVD化される、スティーヴ・マックィーンとフェイ・ダナウェイ出演の68年作品。流麗なストリングス、ハリのあるトローンボーンソロ、ミニマルなピアノのループ、ブレイクのSEなど、クインシー・ジョーンズとはまた違った、ルグラン流のスピード感あふれる1曲。また、99年のリメイク版『トーマス・クラウン・アフェア』では、主人公が絵画の窃盗に成功した際に、ニーナ・シモンの「シナーマン」が使われていた。つまり「泥棒もの」にジャズはフィットするということか。スリリングな展開、追いつ追われつの緊張感を盛り上げたり、引き締めたりする役割をジャズは背負わされているのか。

  8. 黄金の七人
    アルマンド・トロヴァヨーリ

    これも「泥棒もの」(65年)。今日的視点に立てば、モンドミュージック、サウンドトラックブーム、60年代ファッション、イタリア的退廃、渋谷系、スキャット、そしてジャズというタームの全てを一本の糸で縫い通したかのような1曲。タイトなボディスーツから、ゴージャスなファーなどさまざまな衣装で楽しませてくれる主演女優、ロッサナ・ポデスタの艶やかさは永遠。

  9. Big Spender
    Joseph Gershenson

    68年のミュージカル映画から。ホステスたちが客引きをしながら歌うシーン。Big Spender=気前の良いお兄さん、に声をかけているわけだ。抑揚の効いたヴォーカルやベース、ドラム、トランペットの旋律は、妖しく、艶っぽく、そして女性のしたたかさをも感じさせる。言葉の響きと、このシーンの雰囲気が心に残り、知人の会社のネーミングを考えた際、Bigをさらにデカい、Greatに置き換えて提案した。で、結局それが採用されたのだから、世の中とは面白いものだ。

  10. 天使の恍惚
    山下洋輔トリオ

    若松孝二監督の72年作。時代と呼応したのか、それともパロディなのか…。爆弾で革命を起こそうとする若者たちをモチーフに、過度に青臭さを強調した台詞とストーリー。映画本編では、後半になるまで山下トリオの音楽は出てこない。しかし、突如、本人たちの演奏が挿入され、爆弾とともにフリージャズが炸裂する。クライマックスに至るまでの数分間は、まるで山下トリオのPVのようだ。山下はその後、岡本喜八監督の『ジャズ大名』や、タモリ主演の『キッドナップ・ブルース』、今村昌平監督『カンゾー先生』などを手がけている。彼のおかげで邦画とジャズとが、いっそう共鳴する関係となった。