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誕生の地から、遠く離れたこの国で…

ジャズはもちろん、日本人が発明したものではない。しかし、それは今やこの国仕様にローカライズされ、独自に成長を遂げ、本場にはない感覚やアイデアを織り込んでスタイルを築いている。nativeのように世界と渡り合える日本人ミュージシャンも少なくない。 それはジャズだけではない。世界各地の音楽を、その発祥の地から遠く離れたこの島国で、ときにダイナミックに、ときにひそやかに演奏しているミュージシャンがいる。そんな彼らの音楽をかいつまんで、日本に居ながらにして世界一周としゃれこんでみようか。

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  1. Into Yaman Color Feat. Dewa Berata
    sitaar-tah!

    いきなりインドへ行きます。シタール奏者だけでも30人を擁すという、ヨシダダイキチ率いるバンド(オーケストラと言ってもいいかもしれない)。トラディショナルなインド音楽を踏まえつつも、サウンドはエレクトロニカやファンクなどの要素も飲み込んだ混沌としたものである。彼らのライヴを一度だけ体験したが、ステージ上にシタールのネックがずらりと林立する光景があまりに異様だった。やがて、シタールのひとつひとつが微弱な音を奏で、それらが一体となってざわざわと高揚していく様子に軽く鳥肌が立ったのだった。

  2. マトリョーシカ(Shibuya Lounge Mix)
    Gypsy Vagabonz

    続いてヨーロッパへ。かの地でもジプシー(ロマ)が作りだした音楽の再興、再構築がブームとなっているようだ。日本ではジャンゴ・ラインハルトマナーに則って、さらにヴォーカルを加えて新しい表現を目指しているバンドがある。それがジプシーヴァガボンズ。演奏のクオリティの高さはもちろんのこと、ヴォーカル&フルートを担当する秀子のデカダンなステージングも今後話題を集めること必至だ。

  3. Alba
    Satoshi Hori

    ロマの足取りを追うようにさらに西のスペインへ。フラメンコギターの名手は日本にも数多く存在する。その中でも、以前からそのスタイルをベースにしつつ、オリジナリティ溢れる楽曲作りに取り組んでいるのが、堀聡である。普段はライヴ演奏が中心ゆえに、コンピレーションの中の1曲とはいえ、このようなかたちで彼の音楽が記録されるのは非常に嬉しいことである。

  4. No Se Acaba
    Central

    続いて北米に向かう。カリブをルーツにニューヨークで確立されたサルサ。我が国でも手がけるバンドは多いが、どうしてもディープな世界での活動にとどまりがち。そんな中でCENTRALは、言ってしまえばクラブ世代のサルサバンドというスタンス。スカやクラブジャズバンドとの対バンでも違和感なく溶け込み、ダンスミュージックをいう大きな枠の中で活動している。サルサの正調なステップなんてどうでもいいのだ。

  5. Oh, Mom!
    Zydeco Kicks

    アメリカ大陸を南下して、到着したのはルイジアナ州。フランスからの移民やアフリカから連れてこられた黒人たちが織りなすクレオール文化のひとつとして、独自の発展を遂げたザディコという音楽がある。アコーディオンとヴォーカルをメインに、ドラムやベース、そしてパーカッションとして洗濯板の金属版であるラブボードを使うのが特長。現地では、バックウィート・ザディコやクリフトン・シェニエらが有名どころである。そんな局地的な音楽ジャンルを追求しているのが、ヴォーカル&アコーディオンの中林由武が率いるザディコ・キックス。ひたすら快活で、ほどよくユーモアもあって、浮き世のウサをすべて取り払ってしまうほどダンサブル。このCDは自主制作のため残念ながら、流通量が少ないようだ。詳細は彼らのHPからhttp://www.zydeco.jp/

  6. くノ一(Kunoichi)
    キラー・シスタ

    そして、ジャマイカへ。ルーツミュージックを語る時、カリブ海に浮かぶこの島を黙って通過することはできない。ここで誕生したレゲエ、そのサウンドは日本だけでなく、世界各地の音楽カルチャーと分ちがたく結びつくまでに拡散した。そんなレゲエのヴァリエーション、ダブを日本で演奏するのが、キラー・シスタ。ピアニカ&キーボード、ベース、ドラムスの3人組。そしてグループ名の通り、全員女子! 先日のリー・ペリーの来日公演でオープニングアクトを務めたのも彼女たちだ。下品になり過ぎない、それどころかエレガントな印象さえ与える、RAS DASHERのダブミックスも秀抜。

  7. ジングルベル(インスト)
    ティンダラーズ、ナーグシクヨシミツ

    カリブ海のトリニダード・トバゴ共和国では「20世紀最後にして、最大のアコースティック楽器の発明」と言われるもの誕生した。それがドラム缶を元にして作られたスティールパン。ヤン富田やリトルテンポなど、この楽器を効果的に使用する日本のミュージシャンも数多い。その中でもティンダラーズは、沖縄出身の2人のパン奏者と、パーカッショニストというユニットとして活動している。この曲は、クリスマスソングを沖縄スタイルでカヴァーするという好企画の中から。ジングルベルを沖縄風に、しかもカリブの楽器で。楽曲に対して2回もヒネリがあるのに、自然に聴けてしまうのは、スティールパンの涼やかな音色に潜む魔力である。

  8. Super Boots
    naomi & goro

    南米大陸に上陸、ブラジルへ。ブラジルではもはや懐メロとなっている(つまり、あまり若い世代が取り組まない)ボサノヴァ。その音楽がなぜ、地球の裏側に住む私たちの心に響くのか…、そんな古くからの謎はさておき、日本のボサノヴァデュオ、naomi & goroの新作が届いたので触れておきたい。ボサの名曲に取り組む『Bossa Nova Songbook』シリーズの第2弾となる今回は、前作に比べてカラフルな音作り。カエターノ・ヴェローゾや坂本龍一との共演でも知られる偉大なチェリスト、ジャキス・モレレンバウムも参加とか。この曲のみ伊藤ゴローのオリジナル。カヴァーされた他の名曲とも遜色のない美しいメロディ。

  9. 次郎の流儀 1
    サルガヴォ

    さらに南下してアルゼンチンに。前回のこの連載でインタビューした大友良英が携わったテレビサントラにフィーチャーされた1曲。ギタリスト鬼怒無月をリーダーとする気鋭のタンゴバンドである。攻撃的とも言えるシャープなフレーズの連打。古いフォーマットを敢えて利用した、アバンギャルドすれすれの格好よさ。

  10. 祭りの幻想
    白木秀雄

    ひと頃話題になった「和ジャズ」の極北。日本の祭りをテーマにジャズとの融合を図った1曲。世界の音楽を巡って、最後は畳の部屋に帰って来たような、と言いたいところだが、なんだかムズムズ落ち着きが悪い。琴のイントロに導かれ、白木秀雄のドラムとピアノ、サックスなどが和モードを奏でる。なのに、である。僕らの耳に違和感と新鮮さを同時に連れてくるのは、カリブ海の音楽よりも、南米のサウンドよりも、邦楽が一番遠いところに存在することの証左なのである。