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Feel the Music vol.114

10年前から変わらない想い─誰かの支えになる歌を - 愛内里菜

■インタビュー/文:河野アミ ■コーディング:Astrograph 掲載日:2009.12.11

 キュートながらパンチの効いた歌声を武器にJ-POPの第一線をひた走り、気がつけばデビューからはや10年。弾けるようなポップ・ロックを歌い続けてきた愛内里菜も、最近は時にディナーショーでピアノをバックにしっとり歌い上げたりと、成長から成熟へと確実に歩みを進めている。そこで今回は、10周年の節目に届けられた全シングル網羅のベストアルバム『ALL SINGLES BEST ~THANX 10th ANNIVERSARY~』を軸に、この10年間で変わったものと変わらないもの、思い入れの強い楽曲や印象的だったライヴなど、彼女が夢中で走り続けてきた10年の軌跡を振り返るスペシャル・インタビューをお届けします。

--デビュー10周年なんですよね。「まだ10年」と「もう10年」のどちらですか?

 もう10年(笑)。早かったですね! まわりに「10年だね」と言われて気づいた感じでした。もう10年かあ…って。

--もう10年か…としみじみ感じるのは、どんな時ですか?

 デビューの時からずっと歌詞を書いてきたので、並べて聴いた時に歌詞の世界観が変わっていく感じだったり、この年齢だから書けた言葉だなあっていうのを振り返った時ですね。この10年間、歌詞を書くことで自分探しをしていた部分もあるので。

--試行錯誤した時期はありました?

 壁みたいなものは、作品を出したりライヴを終えるごとにあった気がしますね。次の作品、次の音、次の自分…と、やりたいことが増えていくので、その壁を越えるために目の前のことを一生懸命やっていたら、あっという間に10年が経っていた感じでした。

--その壁というのは、どちらかというと愛内さんが積極的に作った壁ですよね?

 そうですね。

--それ以外に予想外の壁にぶち当たったりはしませんでしたか?

 ああ、ありました! 一番大きかったのはミュージカルを初めてやらせていただいた時で…。

--2006年の「tick, tick...boom!」ですね。

 そうです。演技(の壁)にぶつかる覚悟はできてたんですけど、まさか歌で「ここまでぶつかるか!?」ってくらい、ぶつかってしまって。違う人が書いた歌詞をうたって誰かになりきる……つまり“愛内里菜を見せないように”というのが大きな壁になって、それまでの5年間で何となく確立されていた自分らしさが壊れてしまう不安があったんですね。それで、普段は関西在住なんですけれども、その時期は東京に住み込んでレッスンを受けたりもして。あの時は厚い壁にぶつかったなあっていう感じでした。

--その壁を越えて、どんなものが得られました?

 それまではバラードを歌うことに苦手意識があったんですね。それこそ壁があったというか。「自分ではこう歌いたいのに思うように表現できない」という状態で、のびのびと歌えなくて。それがミュージカルで違う発声や表現の仕方を教えてもらったことで、バラードを歌う気持ちよさが少しわかったんです。シングルでも、もっとバラードを歌いたい!と初めて思って。

--なるほど。

 それから歌詞についても、それまでは自分の感情を絞り出して、心の内側をさらけ出すように書いていたのが、ミュージカルで歌ったものは情景描写が多かったりして影響を受けました。たとえば恋人との距離感や季節感などが感じられる歌詞も書きたいなあと思うようになって。ミュージカルの後は歌詞も変わりましたね。

--この歌詞には特別な思い入れがある、という曲はありますか?

 歌詞だけとなると、やっぱりデビュー曲の「Close To Your Heart」ですね。これがデビュー曲だと決まった時から、何回も書き直したり歌い直したりしましたし、ここから愛内里菜が始まるんだ!っていう、いろんな気持ちが詰まった曲なので。

愛内里菜--じゃあ、思い入れの強い曲となると?

 そうですねぇ……(とベストアルバムの収録曲名を見ながら)、やっぱりライヴが好きなので、ライヴで強い印象が残っているものですね。ライヴで直接(曲をファンに)渡せた時に「完成した!」って思うんですよ。なので、いつもライヴの最後のほうでみんなと一緒に盛り上がる「恋はスリル、ショック、サスペンス」だったり、同じようにライヴでずっと歌ってきた「Forever you~永遠に君と~」は、思い出がライヴ映像として残ってますね。

--ライヴの楽しみ方も、この10年で変わりました?

 いえ、実はそれがあまり変わっていないんです。最初のライヴの時に「みんなと繋がれた」という心地よさや歓びを感じることができたので、その時の感覚を忘れないように、ライヴハウスでも日本武道館でも同じ気持ちでいこう!って思ってやってきたんですね。その上で、もっとあそこを直そう、次はもっと楽しんでもらおうっていうのはあるんですけど、基本は「あの時の感動を忘れないように」なんです。

--最初に最高の醍醐味を味わえたんですね。素晴らしい。

 そうなんですよ~。

--なかでも特に印象に残っているライヴは、どれですか?

 〈RINA♥MATSURI〉っていうのを、もう7年くらい、自分の誕生日付近でやってるんです。他のライヴと違って、誕生日にみんなで騒ごうよっていうアットホームな感じで、ライヴ用のグッズを作ったり、(スタッフが)誕生日プレゼントのサプライズを用意してくれていたりするんですね。でも歌ってると、そのサプライズの存在をつい忘れちゃうんですよ。

--毎年あるのに。

 そう(笑)。前日までは「今年もあるんだろうなあ」って覚えてるんですけど、当日になるとステージの見せ方やサウンドだとかのほうが気になっちゃって(苦笑)。だからサプライズの瞬間は、いつもホントにビックリして泣きそうになるんです。そんなこともあって毎年の〈RINA♥MATSURI〉はちょっと特別な、他のライヴ以上にみんなとの繋がりが感じられるライヴですね。

--ベストアルバムの初回盤の特典DVDに今年の〈RINA♥MATSURI〉映像が入ってますから、なかなか参加できない地方のファンは要チェックですね。ところで、さっき「ライヴの楽しみ方は最初とあまり変わっていない」とおっしゃってましたが、この10年のなかで他に“変わっていないもの”はありますか?

 変わらないものは……実はデビューしたいと思ったきっかけが友だちのひと言で、友だちみんなでカラオケに行った時に「里菜の声を聴くと安心する、癒される」って言ってもらえたのがすごく嬉しくて、これが仕事になったらいいなあ、誰かの心に届くって素敵なことだなあと思ったんですね。そしてこの10年間も、その友だちのひと言があったからこそ、誰かの癒しになったり支えになるような歌をうたえるアーティストでいたいって、ずっと思ってやってきて。なので、そういう気持ちを大事にしながら歌詞を書き、歌っていきたいという部分は変わらないですね。

--友だちの何気ない言葉がずっと心に残ることって、ありますよね。

 そうですよね。その友だちは今でも親友で、デビュー前も今も変わらず応援していてくれてるんです。今年の春に『THANX』というアルバムを作ったんですけれども、その友だちに感謝を言いたいなあと思って去年の12月に両A面シングルとしてリリースしていた「Friend」という曲も収録しました。

--感謝の曲といえば、今作のボーナス・トラックに収録された新曲「GIFT」も、これまでの歳月を俯瞰しながら自分を支えてくれる人々に感謝を伝える、心の贈りものといった内容の曲ですよね。

 まさに心の贈りものという感じです。デビューから今までを振り返った時に、ここまでずっと(ファンと)“気持ちの受け渡し”をやってこられたなあって思ったんです。作品でもライヴでも、自分の気持ちを歌詞に綴って、それをいろんな場面でみんなに渡すと、今度はみんなの気持ちが返ってくる──。お互いの間で心のギフトの贈り合いがあったから、ここまで来られたんだなあって。これからも素敵な愛を歌った曲などのギフトを渡せていけたら…という気持ちを込めて書いた曲です。

--音色もあったかくて。

 12月とかクリスマスっていうのも、すごく意識しました。この曲をどこかでふっと聴いた人には、冬のラヴソングして温かいものを感じてもらえたらいいなって。そしてもちろんファンの人には、私のこれまでの気持ちも含めて届いたらなあっていう、両方の気持ちを込めて作りましたね。

--うんうん。で、そんな感謝の気持ちで迎えた10周年の節目ですが、これからの10年については何か思い描いているものはありますか?

 ここまで立ち止まらずに、自分なりに作った壁をひとつずつ乗り越えながら地道にやってきたなあ…という実感があるので、この先の10年も止まることなく、楽しみながら壁を越えていきたいですね。その結果、素敵な作品をみなさんに届けられたらって。

--では最後に月並みな質問ですが、10年の節目なのであえてお伺いします。愛内さんにとって音楽とは?

 音楽は……人と人とのパワーを繋ぐもの、ですね。

--人と人とのパワーを繋ぐもの。

 私は、ライヴではいつも自分でも知らなかったようなパワーが出てくるし、曲を作ることでエネルギーがあふれてくるんです。そしてそれを聴いた人も、自分では忘れているものを取り戻せたり、何かちょっと頑張れたりすると思うんですね。お互いのことを知らなくても、音楽を通じて一緒に向上しあえるというか。そういう“パワーを繋ぐもの”という感じが、すごくありますね。だから、そういうものを引き出せるような曲を作っていきたいし、ライヴをやりたいっていう思いが、すごくあるんです。

--来年2月のライヴもパワーに充ち満ちたものになりそうですね。

 そうですね~。タイトルに〈MAGIC OF THE LOVE〉と掲げてるんですけど、いろんな曲にマジックをかけていこうかなって(笑)。バレンタインの時期でもあるので、愛のこもった温かい感じにしつつ、10年分の感謝もちゃんと伝わるようなものにしたいなあと思ってます!

ジャケットから見る10年の軌跡

2000年3月「Close To Your Heart」でデビューして以来、シングル31作、オリジナルアルバム7作をリリースしてきた愛内里菜。彼女の作品を語る上で楽曲とともにCDジャケットのアートワークは外す事の出来ない重要なファクターである。今回、彼女の作品を3つの時代に分けて、その時代の思い出やジャケット制作の上で変わらず大切にしている事などを語ってもらった。

Part.1 シングル「Close To Your Heart」~「風のない海で抱きしめて」アルバム『Be Happy』、『POWER OF WORDS』

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Album

デビューの頃からどんなジャケットにしていくのかスタッフと一緒に考えて、衣装も直接自分で見に行ったりして決めているんです。「Ohh! Paradise Taste!!」のお花の衣装は私が作ったんですよ。「明日撮影だ!」という事になって、直接お花を買いに行って、自分の形に合うように縫って徹夜作業で仕上げたんです。
ネイルも10年前って、今のように専門のお店があまり無かった時代なので、ネイルチップも自分で作ったりして、「Close To Your Heart」で写っているネイルは全部自分で作ったんですよ。

Part.2 シングル「FULL JUMP」~「薔薇が咲く 薔薇が散る」アルバム『A.I.R』『PLAYGIRL』、『DELIGHT』

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Album

この辺から何か今までにない自分を表現してみたいと思って、大人なイメージに変化していったんです。「FULL JUMP」辺りで初めてツアーをやった時に感じた、みんなで盛り上がろうという歌詞を書いたりしていたので、そういう弾けるというかビビットな感じというか曲のイメージもそういうのが増えてきて、結構ハッキリした感じのものがすごくジャケットにも表れています。20代半ばになって、今までとは違う女性像の歌詞も書きたいと思い始めて、アルバム『PLAYGIRL』は12人の女の子を、それぞれ自分の中でキャラクターを組み立てて、その女の子に合った歌詞を書いたりするなど、今までの作品にはない女性の優しさだけではなく、たくましさや強さ、クールな部分なども歌詞の中に描いています。ビジュアル面などもちょっと遊びの要素も入れながらこの頃は作っていった気がしますね。

Part.3 シングル「眠れぬ夜に/PARTY TIME PARTY UP」~「MAGIC」アルバム『TRIP』、『THANX』

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Album

最近はまた変わってきましたね。ミュージカルを経験してバラードが唄いたいという自分も出てきたりしましたし、ジャケットも表情を撮影してから背景が決まるというパターンも出てきて、今の年齢や醸し出す表情で背景もこのように落ち着いた自然な感じになってきたのかなという気がしますね。

『ALL SINGLES BEST ~THANX 10th ANNIVERSARY~』

これまでの集大成という事ですので、ベスト盤はシンプルにいきたいという希望があって、今回初となるモノトーン調のデザインで仕上げました。何か色を付けるよりもこの目力(?)というか自分の存在をしっかりと伝えて、後は皆さんの様々な思い出を色に重ね合わせて聴いてもらえたら嬉しいですね。あとはやっぱりネイルにはこだわりがありますので、衣装に合わせてネイルのデザインも考えて撮影をしました。

デビューの頃から変わらないこだわりポイントとは?

いつも歌詞を書いてからジャケットのミーティングに入るんです。例えばみんなで歌詞を読んで「実はここの歌詞がすごくポイントやったんよ」とか「この歌詞を書くときの色って、実はこういう色やってんけど・・」といった色の雰囲気などをスタッフに伝えて、それをベースにスタッフがこの歌詞の内容や気持ちを汲み取って、イメージを広げてもらう事が多いんです。この方法はデビューの頃から今まで変わってないですね。やっぱり昔からチームとしてスタッフと一緒に作品を作っている部分が(この方法を続けていられる要因として)大きいですね。わたしは昔から歌詞を大切にしていて、そのことをスタッフもすごく大事に感じていてくれて、時にはどうしても制作の進行が遅れてしまう事もあったりするんですけど、スタッフのみんなは歌詞が上がるまで待っていてくれて、そこからしっかり作り上げているので、スタッフにも感謝していますし、そういうことをデビューから続けられているのは本当に幸せです。