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「okuda tamio FANTASTIC TOUR 08」の初日は埼玉県三郷市の三郷市文化会館だ。「三郷市」と聞いて思い浮かぶのは高速道路の「三郷ジャンクション」と「三郷団地」である。「ジャンクション」と「団地」…とにかく人が集まりそうな土地だ。勝手に「初日」にふさわしい土地であると感じた。
三郷市文化会館は、昭和59年開館、まさに「三郷団地」の中に位置しており、いかにも「文化」な「会館」といった落ち着いた威容を誇っていた。ライブが行なわれる大ホールも、赤い座席がいかにも「文化」な「会館」といった格式を感じさせる空間だ。マネージャーの細田さんによると「歴史あるホールなので、音があたたかい響きをする」とのこと。民生さんの音質へのこだわりは相当なもので、前日にここでゲネプロ(*本番さながらのリハーサルのこと)も行なわれていることから考えるに、「三郷初日」の理由は「音のチェック」にあるようだ。「ジャンクション」と「団地」があるからという理由では絶対にない。三郷市文化会館、おそるべしである。
僕は17時集合予定だったが、京葉線と武蔵野線の接続を間違えて30分遅刻し、17時半に小屋入り(*会場のことを小屋と呼ぶ)。細田さん、ディレクターの山岸さん、事務所社長の原田さんとご挨拶、その後軽くスタッフ打ち合わせをする。そして見事、本番の時間までやることがなくなってしまった。ライブに携わるスタッフは誰もが忙しい。ツアー初日、開演までの1時間、忙しくないわけがない。こういうときは「うろうろ」するしかない。「うろうろのプロ」に徹するしかないのだ。「うろうろ」することで何か見えてくるはずである。今回の企画は「うろうろ」によって、これまで誰も見えてこなかったものが見えてくるのではという淡い期待もある。幸運なことにツアーパスを頂いたので思う存分「うろうろ」することができる。楽屋からステージ横を通り、ロビーに入り客席をのぞく、そして一瞬外に出る。再びロビーから客席に入り、ステージ横を通って楽屋に帰る。これを何度も繰り返す。実に様々なことがわかってくる。
「今回のツアーグッズもかわいくて素晴らしい」
「民生さんたち出演者の楽屋は照明が暗い」
「ツアー用スタッフジャンパーではなく、スタッフドカジャンである」
「ケータリングのあたたかい飲み物はコーヒーとティーパック用のお湯」
「他の展示室では押し花の準備でご婦人方が忙しそう」…などだ。
そんな「うろうろ」にも終わりは来る。開演である。開演したら「うろうろ」するわけにはいかない。今度は会場で「じっと聴く」しかない。「うろうろ」と「じっとする」はまったくモードが違う。「うろうろグセ」が染み付くと、ライブ中も「うろうろ」したくなる。しかしここは「うろうろのプロ」でもあり「じっと聴くのプロ」でもある。すぐさま頭を切り換え、さっきまでの「うろうろ」の成果を踏まえつつ、衝動を抑えながら「じっと聴く」。

ライブはニューアルバムの楽曲をメインに、これまでの名曲を織り交ぜながら、聴き応えのある盤石な構成。CDで聴いたときも曲の隅々まで「これぞ奥田民生」とも言うべき、「優しくて激しくて耳から頭を経由して全身に与える衝動」が漲っていたが、実際の演奏を前にすると耳だけでなく、目や口や鼻、毛穴からまでも音が注入されるような感覚に襲われる。
「大きな音」を表現にまで昇華させるのは、かなりの技術を要するものである。単なる「大きな音」はただの騒音だ。それはやろうと思えば誰でもできる。いつまでたっても終わることのない日本の典型的な風景のひとつである工事の騒音は表現ではない。「大きな音」が脳内のみならず身体中を駆け巡り、気持ちよくなる。身体が自然に動く、頭が何かを感じ考え始める。それは表現だ。観客ひとりひとりの身体が「奥田民生の音」で満たされていき、ライブが進むにつれ、それは溢れつづけ、三郷市文化会館の大ホール自体が「奥田民生の音」で満たされていく。こんな同時体験をしないで終わる人生なんてつまらない。
しかし、僕は「じっと聴く」のプロでもある。いくら気持ちよくても飛んだり跳ねたり踊ったりしてはいけない。これはひとつの修行だ。我を忘れては、こういう文章が書けなくなるのだ。「じっと聴く」ことで、飛んだり跳ねたり踊ったりしたい衝動が体内で爆発し、さらにその衝動は鋭くなり、人目にはわからない程度に全身を揺らし震わせる。まるで自分の身体が車になったようだ。どこか遠くまで走って行きたくなる。車好きの民生さんの音はガソリンだ。注入された僕は車と化す。そして車のように書くのだ。自動筆記ならぬ自動車筆記だ。「じっと聴く」僕は、民生さんのMCに耳を澄ます。
「この会場に、ミサティはどのくらいいるのでしょうか…手を挙げて?」ミサティとは三郷市民のことであろう。結果、三郷市民は二階席に多いことがわかった。そして民生さんはこう言った。
「次にここでやるときは、会場を三郷団地の人だけでいっぱいにしたい。」
奥田民生の三郷での野望がここで明らかになった。ちなみに三郷団地の人口は約2万人。三郷文化会館大ホールの収容人数は約1千人。三郷団地の人々が全員押し寄せたら、チケットは約20倍の倍率となる。大変な事態だ。
こうして初日が終わった。「音があたたかい響きをする三郷市文化会館」が「奥田民生」を呼び、そんな「民生の音」に人が集まる。なんて素敵な関係だろう。この一夜限定で言わせてもらうなら、「三郷ジャンクション」ならぬ「民生ジャンクション」だ。ついでに言うなら「民生団地」だ。僕は民生さんはじめスタッフの皆さんにご挨拶をし、三郷市文化会館を後にした。駅までの道中、「三郷公演における素敵さ」についてさらに考えた。「素敵さ」を解くヒントは「ロック」にあると思った。「ロック」という言葉はよく知られているし、よく使われる。今日の民生さんのライブは「ロック」だろう。「大きな音」が会場を一体化させ、様々な感情を喚起し、ひとりひとりに何かを気づかせる。では果たして「ロック」とは何だろう…いつのまにか駅前につき、僕の目に煌煌と輝く看板が飛び込んできた。
「三郷ロック」だ。やはり三郷に「ロック」はあった。それも駅前に。しかも24時間だ。これは民生さんがもたらした「素敵さ」なのか。いや、それは絶対に違う。
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![]() --奥田民生さんのLIVEの魅力を一言で言うと?
たぶん毎日行っても毎日何かがあるみたいな期待感。セットも演奏も。そういうのがすごくあるんです。(ひでみ・30代・東京都在住)
力の抜け加減とその反対にギターを持った時のカッコよさのギャップに憧れます。(じゅん・30代・千葉県在住) --今後奥田民生さんに期待する事は?
アルバムが完成した時に試聴会を開いてもらったんですけど、これからもそういう面白い企画をやって欲しいです。(みなこ・31歳 東京都在住)
私たちも歳を取って行くんですけど、民生さんには年齢を感じさせないような若々しくてパワフルで私たちが予想のつかない事をこれからもやってほしいです。(ちえ・30代・埼玉県在住) このままのやる気のない感じで頑張って欲しいです(笑)。(かおり・30代・横浜市在住) |
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