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Feel the Music vol.66

恋する気持ち、愛する心、いつもはじまりは“想い”から - 古内東子

古内東子

■インタビュー/文:篠原美江 ■撮影:小沢朋範 ■コーディング:Astrograph 掲載日:2008.10.15

 今年でデビュー15周年。発表された作品はそれなりの数を数えるが、いつ、どの時代のアルバムを手にとり、耳にしても、まったく〈懐かしい〉という感慨をおぼえない、それが古内東子の音楽だ。どんな世の中になろうとも、人間がいて、男と女がいる以上、限りなく生まれる恋と愛をキーワードに、あくまでもオリジナルな筆致でラヴソングを描き続けてきた彼女。そのレーベル移籍第一弾となるニュー・アルバムが発表された。普遍的だからこそ優しく、純粋だからこそ胸に痛い。芳醇な音楽で奏でられるその想いは、記号にも象徴にも陥ることなく、さらに普遍的な輝きを伴って、聴く者それぞれの物語となってゆく。

--今年はデビュー15周年でしたね。

 15年という響きには重みがありますけど、でもあっという間でした。今までの人生の中で、ひとつのことを15年も続けるってことがなかったので、こんな気持ちになるのは初めてですね。

古内東子--古内さんはデビュー当時からすごく大人びていたので、とても大学生には見えませんでしたが。

 よく、そう言われました。当時の写真の雰囲気と、詞の内容も含めてなんでしょうけど。でも会うと「あ、普通の大学生だね」って。当時は“大学生”とか“20歳”っていうのがキーワードになっていたので、ビックリされることも多かったんですけど、でも今、思えば、歌の内容にせよ、スタイルにせよ、そんなに前へ前へといかなくてもよかったのかなって。それこそ年上の方に、「癒されました」とか「教わりました」とおっしゃっていただくことに、私自身、違和感がなくなったのは、だいぶ後のことなんですよ。だから歳を重ねることによって、そういった垣根がなくなるのは、いいことだなって思いますよね。

--今のラヴソングに不可欠になった“等身大”という言葉を、古内さんはどう捉えていますか。

 そうですね。当時、大人になる前の揺らぎをテーマにした曲もあるにはあったんですけど、基本的には恋愛って普遍的なものですからね。私自身、未だに成長していない部分もあれば、逆にピュアになってる部分もあるでしょうし。時代に合わせたラヴソングを書いたことは、これまでにもまったくないですけど、そのときそのときで等身大でありつつも、15年の間にはだいぶ変化もしてきたと思います。

--古内さんはブラック・ミュージックに根ざした音楽を作られていますから、途中で今様のR&Bやクラブ・ミュージックにシフトする可能性もなきにしもあらずだったと思うんです。でもずっと“古内東子の音楽観”を貫いていらっしゃいますよね。

古内東子 ああ・・・そうですね。自分のできる範囲で、取り入れるところは取り入れてはいたんですけど、詞と曲を自分で作っているので、いろいろスパイスを加えても、基本的にはあまり変わらないというか。結局は、自分の中から出てくるものですからね。それが自分の強みだと思ってやってきてはいるんですけど。

--それは新作を聴いてもよくわかります。前作から本作までの3年の間に、他の方への楽曲提供はあっても、自分の作品を発表できないというストレスはなかったですか。

 提供した曲も含めて、常に楽曲を作っていた感じはあったので、焦る気持ちはそれほどなかったですね。ライヴもやっていたし、常に歌ってはいましたしね。今回は15周年、移籍第一弾という、とてもいい重なりで、よかったと思っています。

--テーマはいつも後から決められるそうですが。

 今回は先に「IN LOVE AGAIN」という曲があったんですね。その曲が、すごく今の心境、「もう一度、恋をしようではないか」という気持ちに合っていて。リリースが開いたことも含め、自分を取り巻くいろいろなことが、すべて「IN LOVE AGAIN」という曲に集約されるんじゃないかって、曲ができた後に思ったんです。それでアルバムタイトルにしようと最初に決めて、その後、どんどん曲を書いていったんですよ。

--「IN LOVE AGAIN」は、“さあ、もう一度、恋をしようよ”というテーマ以外にも、さまざまな捉え方ができる曲だと思います。

 そうですね。もう初恋にこだわる年齢でもなく、「もういいや、恋は・・・」っていうのも超えて、「でもやっぱり恋をしたいよね」っていう気持ちですよね。もう一度、恋に“堕ちる”っていう。それは仕事なのかもしれないし、今の恋人や、旦那様に、再び堕ちることなのかもしれないし。捉え方はそれぞれですけど。ただ、曲を聴く限り、私自身がどんどん大人になっている・・・わけではないような気がします(笑)

古内東子--(笑)。“大人の恋愛”って言葉にするのは簡単ですけど、実際のところどういうものだと思いますか。

 “大人の”っていう形容詞は、あまりいい意味では使われないですよね。だけど、自分が本当に大人になって、年下の友達もできてみると、特に女の子の友達なんかは、大人の自分とそんなに変わらないなって思ったんですよ。見た目とか喋り方とか、そういうものは多少違っても、恋愛で悩むポイントや、恋が始まるときの「どうしたらいいだろう」っていう気持ちは、年齢関係なく、パターンが一緒なんですよね。だから私も彼女たちに相談に乗ってもらったりするし、経験がモノをいうだけではなかったりする。それってすごく面白いなと思って。是非、若い方にもアルバムを聴いていただきたいですね。

--そうですね。でも今は、同じ世代同士のシンガーとリスナーだけでラヴソングを共有するという、見えない枠が存在してしまってると思うんです。そこに古内さんが肌で感じて音楽にしたこれらの曲を、どう投げかけたらいいと思いますか。

 これまでのように、入り口はいろいろでいいと思っているんですけど、でも私の曲を聴いて、ワッとアガる感じでもないでしょうしね。だから恋愛真っ最中のラヴラヴな時よりも、少し恋をお休みしている時、みんなで一緒にいることに疲れたときなんかに聴いてもらえたら、スッと入っていけるんじゃないかなと思います。全体的に聴くと大人っぽいのかもしれないですけど、歌詞の目線はあまり大人大人してないところもあると思うので。いろんな世代の子と話していると、振り返らざるを得ない部分もあるし、ハッとする部分もあるし、そこで受けた刺激は、意識せずとも歌詞に出ていると思いますしね。聴いていただければ、わかっていただけるんじゃないかと。

--なるほど。男と女の恋愛模様だけでは語れない部分、恋人ではない大切な人のことをテーマにした曲もありますしね。

 男女の恋愛に限らず、尽きることがないですからね、“想い”というものは。今は、いろいろな人生があって、ひとつのことをずっとやり続けるとか、ひとつの場所に居続けるってことって、なかなかない。人生の岐路がたくさんある気がするんですね。そういうときに迷っている人を見て書いたのが「歩幅」という曲だったりします。

--「歩幅」という曲にある“終わりがあるものに囲まれてる”っていうフレーズは、やはり今の古内さんでなければ書けなかったものではないですか。

古内東子 そうですね。大袈裟なようですが、命について考えたりすることも増えましたし。「儚いなあ」という気持ちは常日頃からあるんですけど、だからこそ日常が美しいというか、それがすでに奇跡なんだなって思いますね。恋愛に関しては成長していないとしても(笑)、今の私だから感じることなのかも知れないですね。

--レコーディングにはお馴染みのメンバーが参加されているんですね。

 森(俊之)さん、河野(伸)さんという二人のプロデューサーの方と、集中してガッツリ作りたいというのは、たっての希望ではありました。キャラクターは違っても、二人ともキーボーディストですし、私もピアノで作るので、こちらのアイデアを実現してもらいやすかったですね。1曲1曲に惚れ込む努力をしてくれる方たちですし、二人ともお付き合いが長いので、レコーディングは楽しく。

--この後、久々のホール・ツアーが控えていますね。

 東京はずっとやりたかった国際フォーラムで。フル・バンド編成なんですけど、河野さんがバンマスで、引き続きライヴも一緒にやってくださるんですよ。レコーディング・メンバーも参加してくれるので、楽しみですね。

古内東子 Private Music

--普段リスナーとしてどんな音楽の楽しみ方をしていますか?

 音楽を聴くシチュエーションは、クルマでの移動中、電車に乗るとき、後は家でヘッドフォンをして大音量で聴く・・・このほぼ3つですね。BGMとしてではなく、密閉された中で音楽を聴きたい派です。「これを聴く」と決めて集中して聴きますね。ただ、楽屋がシーンとしているのは嫌なので(笑)、新しい音楽を仕入れてきては、楽屋で流しています。自分ひとりでは聴かないんですけど、夏だったらハワイアンとか(笑)。