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LONG HOT INTERVIEW COIL

■インタビュー/文:竹部吉晃 ■製作:Astrograph 掲載日:2012.11.30

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98年10月にシングル「天才ヴァガボンド」でデビューした岡本定義と佐藤洋介によるCOILがデビュー15周年を迎える。アニバーサリーイヤーに突入する今年、今までに出したカタログの中からシングルを集めた『マスターピース~COIL傑作集~』とメンバーそれぞれが選曲した2枚組CD『セカンド・ベスト~COIL佳作集~』が2ヶ月連続でリリースされた。抜群のメロディセンスと斬新なサウンドメイクが堪能出来る濃厚な編集アルバムとなっている。そんな彼らに15年の歴史を振り返ってもらうとともにこれからのCOILの展望を聞いた。今年のオーガスタキャンプでのCOILのステージからも伺えたように、確実に彼らを取り巻く状況は変わりつつある。今回のインタビューは来年リリースが予定されている傑作アルバム前夜の貴重な発言になるはずだ。

--この度、COILはデビュー15周年を迎えるということですが、デビューから追いかけている身としまして、なんとも重みのある数字です。確か最初の取材は某誌の企画で"COILと行く綱島散策"という企画だった記憶があります。

岡本:そうでしたっけ? あの頃はいろんな取材を綱島でやっていて、どれがどの取材だったのか、細かいことはあまり覚えていないんですよ。その頃の綱島ってまだ映画館はありました?

--まだあったと思います。タイミングとしてはちょうど『ROPELAND MUSIC』が出る前くらいでした。


『ROPELAND MUSIC』('99)

岡本:そうか。それはかなり初期ですよね。

--ラジウム温泉に行ってから鶴見川まで歩いて『ROPELAND MUSIC』に収録されている「仮免マン」のモチーフになった自動車教習所を紹介してもらって、その後に川辺で写真撮影しました。

岡本:それが当時の取材の定番コース。今の綱島はすっかり様変わりしてしまったんだけど、当時はまだ映画館や古本屋、中古CD屋とかがあって、いい感じの街だったんです。

--今回の『マスターピース~COIL傑作集~』に入っているブックレットの回顧録を読んでいて、思わず当時のことを思い出してしまいました。そういえば、このブックレットの中に、最初の頃は分かってない人から取材を受けるのは苦痛だったと書いてあって、実はそれは自分じゃなかったのか、と思いドキッとしてしまいました(笑)。

佐藤:そこから入りますか(笑)。

岡本:当時はいろんな取材を受けていましたから、たまに「何で音楽と関係のない質問をするのかな?」という場面がよくあったんです。今思えば仕方のないことなんだけど、当時は大人げなく態度に出してしまったことが多々ありました(笑)。

--そういうときは佐藤さんがフォローしたり?

佐藤:僕も寡黙でした(笑)。

--このブックレットにはそういう細かいことまでが書かれていて、面白い読み物になっていますね。文字数も多く充実しています。

岡本:ベストアルバムを出すのは2回目なので、音をよくして、ボーナストラックを入れたところで、前のアルバムと同じ曲ばかりだとファンの人には面白みがないかな、と思って、だったら読み物の部分を充実させて、買った人の満足度を上げようと考えた企画なんです。以前、シングルのカップリングベスト『ALL ERASE OK?』を出したときに分厚いブックレットを付けたことがあったんだけど、あれはパラパラ漫画こそあれ、ほとんどメモだったので、今回はちゃんとした読み物を付けたかったんです。


『ALL ERASE OK?』('01)

--すべて語りつくしているんじゃないかというくらい、細かくCOILの歴史を語られていますね。

岡本:そんなこともないです。文字数の都合や大人の事情でカットされているところもあるし(笑)。それにあれはシングルリリース順に追っているだけですからね。分かりやすい部分はつなげやすいけど、目に見えるところだけがCOILの音楽のすべてではないですから。実はシングルになり損ねた曲のこの部分に本当のこだわりがあったといった話はたくさんあるんです。

--でも、今回改めて当時のことを話していて、いろいろなことを思い出したんじゃないですか。

岡本:ブックレット用の取材で過去を振り返ったことよりも、改めて曲を聴き返して思い出したことのほうが多いですね。今回のベストに入っている曲は録った機材やテープがバラバラで、その音源を洋介がロープランドでマスタリングしたんです。それをこうやってまとめて聴き返してみると、「この曲、頑張ったな」とか「苦労したな」とか、そういうことを思い出しました。同時に「次、どうしようかな」ということを考えるきっかけになった。

--『マスターピース~』はアルバムとしての曲の並びが最高ですね。まるで15年後にこうやって並べられることを計算していたかと思うくらい。作品のつながりとCOILの成長や変化が手に取るようにわかります。

岡本:実はそうだったんです! と言いたいけど全然そんなことはなかった(笑)。

佐藤:大まか自分たちの意思が反映したシングルをリリースしていたので、アルバムを出した次のシングルはこれで、というような流れを考えてリリースしていたことは確かです。前のシングルの受けがよかったから次もそれを踏襲したものを出そうという考えはあまりなかった。だから、リリース順のままいい曲順になっているんだと思います。

岡本:最初の頃は自分たちの好き勝手にやらせてもらっていましたからね。デビューシングルの「天才ヴァガボンド」からのシングル3枚はポップセンスをもったコミカルなイメージの曲で、アルバム『ROPELAND MUSIC』を出したあとの「BIRDS」からはエッジの効いたギターサウンドでシリアス路線の曲がシングルになった。だけどヒットには至らず……。そのあとの「裸のランチ」からテコ入れがあって、外部スタッフが入ってきて売れ線路線の曲になっていくんです。それでもダメで、「最初の虹」に関しては自分たちの意思ではないところでシングルが選ばれた。大まかな流れと言えばそんな感じです。


『最初の虹』('02)

--ブックレットにもかなりリアルに書かれていますが、テイチク時代はかなり波乱万丈な年月だったんですね。精神的にも大変だったことが、あれを読んでよく分かりました。

岡本:それでもまだ表に出ていないところはたくさんあります。例えばアマチュアのときから作ってきた曲なり音源がたくさんあって、まだ発表されていないものがあるんです。COILのデビュー曲は「天才ヴァガボンド」だけど、本当は別の曲が用意されていたとか。

--その話、ブックレットに書いてありました。「ボンテージ・スーパーカー」という曲でデビューする予定だったんですよね。

岡本:そうなんです。僕と洋介は「ボンデージ・スーパーカー」で行こうと思って、レコード会社のスタッフも気に入ってくれていたんだけど、森川社長に「ちょっと……」と言われて、別の曲で行くことになった。それで作った曲が「天才ヴァガボンド」。だから「ボンデージ・スーパーカー」はいまだにリリースされていないんです。二人で一生懸命作ったものなので、いずれ世の中に出したいと思っているんですけどね。「ボンデージ・スーパーカー」はリリースされていないということは、COILの歴史にもなっていない。僕らの歴史観と受け取る側の歴史観に大きな違いがあるんです。

--すべてがいい思い出になるにはもう少し時間が必要だと?

岡本:そうですね。そういった裏側を含めたうえで、思い出というならそうだけど、表面上を見ただけだとそれは違うんじゃないかって。しかも、いろんな話が今につながっているので、思い出として話すことはまだ難しいですね。今回のベストの13曲目に入っている「キリギリス」という曲はデビューする前に4トラで録った音源なんですね。それを考えてみたらすごいことだなって。あのとき自分たちがやってきたことは無駄ではなく、今につながっていたんだって思いました。

佐藤:結果的に自分たちがやってきたことなので認めていますが、思い出というよりは積み重ねだと思っていますね。

--その「ボンデージ・スーパーカー」という曲聴いてみたいです。

岡本:いつか出したいけど、どうやって出そうかな。確か、当時レコーディングしたよね?

佐藤:ドラムを入れて途中までやったテイクがあったね。

--「ボンデージ・スーパーカー」はどんな曲調なんですか。

岡本:90年代のグランジを意識したポップな曲で、分かりやすく言うと、ブラーとかに近いかな。

--気になりますね。

佐藤:実は今回、10月リリースの『マスターピース~』と11月リリースの『セカンド・ベスト~COIL佳作集~』の2枚のCDを買うと、デビュー当時の幻のプロモーション盤をプレゼントすることになっていて、その中に「ボンデージ・スーパーカー」のデモが入っているんです(笑)。ブックレットの中であれだけ「ボンデージ・スーパーカー」の話をしているのに、その曲が聴けないのはないんじゃないか、ということになりまして……(笑)。デビュー前に業界向けに配った音源の中に入っていた初期のデモバージョンが聴けます。

--それは楽しみ。もし「ボンデージ・スーパーカー」がデビュー曲だったらCOILの歴史は変わっていたんですかね。

岡本:変わっていたでしょうね。着ぐるみを着ることもなかった(笑)。

--「天才ヴァガボンド」のCDの裏ジャケで着ていましたね(笑)。


『天才ヴァガボンド』('98)

岡本:ビートルズの『マジカル・ミステリーツアー』をパロったのに、「ウサギとカメですか?」って言われて……。

--それにしても「天才ヴァガボンド」は名曲ですよね。この曲を最初に聴いたときは本当に驚きました。メロディはいいし、サウンドはカッコいいし。最初のギターのリフとサウンドで心を持っていかれました。それについては今回のブックレットで佐藤さんが触れていますね。

佐藤:あのイントロはとても印象的なフレーズなのでコーラスが混ざったほうがいいのかディレイをかけたほうがいいのか、いろいろ模索しました。僕がイントロのフレーズ以上に重要視したのは、イントロのギターが鳴ってから一斉に演奏が始まる瞬間なんです。特徴的なのはバンドサウンドが入る前にフライング気味にベースが先に入ってくるところ。ベースの入り方があの曲の肝です。当時のグランジのロックバンドはだいたいそういう入り方をしていました。ゴムを思い切り伸ばしておいていいタイミングを見て手を放すみたいな感覚。それはスイッチング操作ではできないんです。だから難しくて。あそこには本当にこだわりました。

岡本:あのベースは僕が弾いているんだけどすごく大変でした。洋介に「ドラムとギターよりも先に入ってくれ」と言われて一生懸命弾きましたね。でも確かに後で音を聴いてみると音が圧縮されたあとに勢いをつけて外に出ていく感じがあって、「なるほどね」と思った。「追放と楽園」や「海とゼリー」でも同じように録音しました。

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