MUSICSHELFトップ>特集・連載>フジファブリック インタビュー

Feel the Music vol.100

フジファブリックvs.音楽、15本勝負 - フジファブリック

■インタビュー/文:久保田泰平 ■コーディング:Astrograph 掲載日:2009.5.20

 4人の卓越したプレイヤビリティーから繰り出される襟足整ったサウンドと、熱くもあり温かくもある(そしてちょっとヒネくれてもいる)メロディーで、独特の世界観を築き上げてきたフジファブリック。1年4か月ぶりとなるニュー・アルバム『CHRONICLE』は、初の海外レコーディングを敢行したほか、ヴォーカル/ギターの志村正彦が全作詞作曲を手掛けるなど、より頼もしく挑戦的なポーズで彼らのネクスト・フェイズを聴かせてくれる作品と相成った。その背景には、ミュージシャンとしての覚悟、誠意などもろもろの意識があったようで……さっそく、志村正彦に話を訊いてみよう。

--ものすごく良いアルバムが出来上がったんじゃないかと思うんだけど。

 僕もそう思ってるんですけど、リスナーの方はどう聴いてくれるんだろうな?っていうのが正直なところですね。

--聴いててかつてないぐらいの熱気を感じさせてもらったので、気合いの入り方や出来上がりの満足感も違うんじゃない?

 そうですね。ファースト・アルバムは東京vs.自分、セカンド・アルバムは当時の音楽シーンvs.フジファブリックっていうテーマがあって。で、前作の『TEENAGER』は東京vs.東京が好きになった自分、なんでもない日常だけど前向きに生きていればいいことあるさっていうテーマがあったんですけど、そこで思い描いていた自分のイメージにその後の自分が届いてないように思えたんですね。だから、今回は音楽vs.自分みたいな、そのぐらいまで根詰めてやってましたね。それに、28歳になって、次のアルバムは今後の音楽人生を左右するアルバムになるであろうと思ったし、尊敬する奥田民生さんは29歳の時に『29』っていう素晴らしいアルバムを出していて、それを作るには28歳のうちに作らなきゃいけないと思って。だから、それを目指してやってました。まあ、28歳って考えますよね、今後の人生を。果たして音楽を続けていけるのか……とか。今回は、そのぐらいの意志を込めてアルバムを作って、全作詞作曲をして吐き出した感はありますね。

--意地悪な話、民生さんみたいにソロでっていう選択肢はなかったの?

 う~ん、アリなのかも知れないですけど、メンバーのプレイヤビリティーにはいつも感謝しているんで、僕の考えの中にはソロっていう選択肢はなかったですよね。まあ、今回はアレンジも僕が全部やってたんで、ある意味ソロっぽい作品だったりするんですけど。

--今回、ストックホルムでのレコーディング(先行シングル「Sugar!!」ほか1曲を除き)という、フジファブリックとしては新しい試みにチャレンジしてるよね。

フジファブリック フジファブリックに専属のドラマーがいないってことで、事務所の社長が、スウェーデンにいいドラマーがいて、プロデュースもエンジニアもできる人がいるって話を持ちかけてきて。だったら一石三鳥じゃないか!って。やっぱ、海外にはすごく好奇心ありましたからね。日本人が持っていないようなグルーヴを持ってる人がいっぱいいるんじゃないかっていう。その期待は大きかったですね。

--海外ミュージシャンとの作業は、言葉の問題とかたいへんなこともあったと思うんだけど?

 はい、これがまたたいへんで。現地のドラマーとは5日ぐらい……いや、実質2日ぐらいで素晴らしいテイクを録って、これでほぼ出来たぞ!って思ってたら、プロデューサーのメリーメーカーズが「納得できない」って。で、別のドラマーを呼んできて、そこからまたイチからやりはじめました。

--海外のミュージシャンは、日本のミュージシャン以上にドラムの音にシビアだっていう話は聞いたことあるなあ。

 厳しいですよね。ドラマー人口が多いからなんでしょうね。日本って、東京、大阪、京都にぐらいしか優秀なセッション・ドラマーがいないらしいんですよ。でも、洋楽の作品を聴く限り、海外にはいいドラマーがいっぱいいそうですよね。

--でまあ、録り直しになって。

 正直、テンションもちょっと下がっちゃったんですけど、新たに呼ばれたリカルドっていうドラマーがあまりにも素晴らしくって、こいつならもう一回やってやろうじゃないか!って。録り直しってなった時には、メリーメーカーズとのあいだに一瞬亀裂が生じましたけど(笑)、最終的には本当にいいものができてありがとう!みたいな感じで、シャンパンを開けて乾杯しました。

--初の海外レコーディングで得たものは多いんじゃない?

 日本で録音するのも効率的でいいんですけど、海外のほうがより音楽に集中できるし、ストックホルムっていう街は治安もよくてリラックスできたし、向こうの空気を吸って、向こうの人たちと出会って、音楽を聴いて、それに触発されて「ストックホルム」っていう曲が出来上がったりとか、そういう化学反応みたいなのも起きたから、海外でやってよかったですね。とくに、リカルドといっしょにセッションできたのは本当に素晴らしい経験だったから、いずれ僕らのツアーをいっしょに回ってほしいですよ。

--で、見事出来上がった『CHRONICLE』。最初にも言ったけど、かつてない熱気というか、“vs.音楽”っていうことで、音にも言葉にも、ファイティングポーズを構えているような力強い印象が感じられて。

 歌詞に関しては、一瞬後ろ向きなことを歌ってるようにもとれるんですけど、それって“前向きに行きたい”っていうことなんですね。音に関しても、今回はラウドなものを意識してみました。音楽に対して闘ってやるっていう意思表示は露骨に出せたと思いますね。

--振り返ってみて、作業はこれまで以上に苦しかった?

 そうですねえ、15曲も入ってるんで。産みの苦しみとかってネガティヴなことはあんまり言いたくないんですけど、やっぱり、音楽家を続けて行く限り、そういうものは続いていくものだと思います。

--今作を作ったことで、民生さんを追い続けられる自信もより強くなったんじゃない?

 そうですね。民生さんの所属していたユニコーンのあとを追うじゃないですけど、たとえば1曲目の「バウムクーヘン」とか、ユニコーンよりユニコーンらしいと思うんですよ(笑)。ユニコーンよりユニコーンらしいから、ますます負けてらんねえぜ!って思ってますけどね。事務所の先輩なんであんまり大口は叩けないですけど(笑)。でもまあ、今回、満足のいく曲ができなかったら音楽をやめてやる!っていうぐらいの意気込みで作ったんで、それだけのものは出来てますね。それと、今回のアルバムでいろいろ取材を受けてますけど、「イイ曲ですね」って言われるのがライターさんによってバラバラなんですよ。それがうれしかったですね。

--ちなみに僕は「バウムクーヘン」が好きだな。

 それは初めて言われましたね(笑)。

--あと、国内でレコーディングした曲だけど「同じ月」とか。

 それも初めて(笑)。これ、シングル・カットしようかと思った曲なんですよ。でもまあ、普通に考えて15曲って多いじゃないですか。それでも最後まで聴けるアルバムだって僕は信じてるんで、感想がバラバラなのはとてもいい傾向だと思いますね。